企業年金制度を持つことの意味-1- 企業年金(確定給付企業年金、確定拠出年金等)の特徴

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企業年金制度を持つことの意味-1- 企業年金(確定給付企業年金、確定拠出年金等)の特徴

ここ数年の企業年金をとりまく外部環境の変化、とりわけ厚生年金基金制度の実質廃止や高齢期の雇用環境の変化によって、企業年金制度の再構築を検討している企業は増加しつつあるように思います。

企業年金部会においても、昨年来、今後の企業年金制度の在り方について議論されてきた結果、今後の見直しの方向性や今後の検討課題について整理されたところです。(これまでの議論については下記で整理されています。)

厚生労働省Webサイト:社会保障審議会企業年金部会における議論の整理


 

今回のコラムでは、企業にとっての企業年金制度を持つことの意味について改めて整理してみたいと思います。

企業年金制度(確定給付企業年金制度(以下、DB)、確定拠出年金制度(以下、DC)等)の特徴を下記(1)~(6)に挙げてみました。

 

(1) 運用収益分の収益が加算されること

企業年金制度は拠出した掛金に対して運用収益を加算したものが給付額として支払われることとなります。そのため、運用収益を想定しない場合よりも、掛金を低く抑えることができます。

DBの場合はあらかじめ給付額を決定し、それに対して運用収益の見込み(予定利率)を決めた上で掛金を決定します。

DCの場合もあらかじめ想定される給付額を決定し、それに対して運用収益の見込み(想定利率)を決めた上で掛金を決定するのが一般的な方法です。

また、一時金ではなく年金として受給する場合は、年金支給期間分についても一定の利息が加算された年金額を受給することができます。

(2) 運用リスクを負う必要があること

企業年金制度では上記(1)で述べた運用収益が得られるかわりに、運用リスクを負う必要があります。

DBの場合は実際の運用収益が予定利率を上回った場合は掛金を引き下げ、下回った場合は掛金を引き上げることになり、掛金を拠出する企業側がリスクを負うことになります。

DCは、従業員個人が運用した実際の運用収益が想定利率を上回った場合はあらかじめ想定していた給付額を上回り、下回った場合はその逆となり、従業員側がリスクを負うことになります。

なお、中退共は利率が1.0%と低めに設定されている代わりに、企業も従業員も運用リスクを負わない仕組みとなっています。

 

(3) キャッシュフロー、損金算入額が平準化されること

これは事業主側から見た特徴になりますが、企業年金制度では掛金として事前に拠出を行うため、これによりキャッシュフローの支出額が平準化され安定化されるという特徴があります。

退職一時金制度では従業員の退職時に一括してキャッシュによる支払いが発生し、たとえば定年退職者が多い年度にはキャッシュの流出が集中するということが起こります。 企業年金制度ではDBでもDCでも事前に平準化してキャッシュの拠出を行っておくため、キャッシュフローの支出額が安定するという特徴があります。

また、税制上の観点では、退職一時金制度の場合は給付の支払時に給付支払額が損金算入される一方で、企業年金制度は掛金拠出時に掛金拠出額が損金算入されるため、企業年金制度は退職一時金制度に比べると早めの損金算入が可能になるとともに、損金算入額自体もキャッシュフローと同様に安定するという特徴もあります。

 

(4) 受給権が確保されること

退職一時金制度の場合は、企業の内部資金を給付の原資としますので、企業が倒産した場合には過去の勤務に相当する退職金の支払いが得られなくなるリスクが大きくなります。

一方、企業年金制度(DB、DC)や中退共の場合には、企業の外部に退職金の原資を積み立てることとなりますので、企業が倒産した際にも基本的には給付額(受給権)は保証されます。

個人別に資産が管理されているDCは過去分の個人別の資産は完全に保全されますが、DBの場合は、給付減額の可能性があり、また、企業倒産時に年金資産が不足していた場合は分配されるべき金額(最低積立基準額)が保証されない可能性があります。

 

(5) 公的年金を補完し老後の所得を補うこと

DC制度は中途退職時の引出しが厳しく制限されているため、老後の所得を保障する意味合いが強い制度と言えます。

DB制度はDC制度と違い、中途退職時の支給についての制限は厳格ではないないため、中途退職時に一時金での給付を受けた場合は、老後の所得保障としての意味合いはやや薄れますが、勤続20年以上の場合に老齢期における年金受給の選択肢が与えられるなど、一定の老後の所得を保障する機能が備わっている制度と言えます。

 

(6) 相応の手数料、事務運営コストが発生すること

DBの場合は制度管理手数料、運用報酬、DCの場合は運営管理手数料など相応の手数料が発生します。

また、特にDCの場合は投資教育の実施等の企業における事務負担もコストとしてかかることとなります。

 

以上、企業年金制度の特徴を改めて整理してみましたが、一般的には(1)、(3)、(4)、(5)はメリット、(2)、(6)はデメリットと言えるのはないでしょうか。

企業年金制度を新たに導入したり、再構築する際には上記のメリット/デメリットを整理し、自社にとって本当に望ましい制度かどうかを検討した上で、導入制度を決定するのが望ましいと思われます。

 

次回は、各企業年金制度/退職金制度間のメリット/デメリットを幾つかの観点で整理してみたいと思います。

 

※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。

 

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