年金資産とは

退職給付B/Sにおける資産科目である年金資産ついて説明します。 年金資産には、一定の要件をみたした退職給付信託も含まれます。ここでは、年金資産となる要件について学んでいきましょう。

「年金資産」とは、特定の退職給付制度のために、その制度について会社と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積立てられた、以下のすべてをみたす特定の資産のことをいいます。

  1. 退職給付以外に使用できないこと
  2. 事業主および事業主の債権者から法的に分離されていること
  3. 積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出し等が禁止されていること
  4. 資産を事業主の資産と交換できないこと

確定給付企業年金制度等の企業年金制度において保有する資産は年金資産に該当します。
ただし、年金資産として適格な資産とは、退職給付の支払に充当できる資産であるため、企業年金制度における業務経理に係る資産は年金資産には含まれません。また、企業年金制度において計上されている未収掛金は、事業主が未払掛金を計上した場合、その金額を限度として年金資産に含めます。
なお、企業年金制度における剰余金に相当する資産は、事業主に返還されるまでは年金資産に含まれます。

「退職給付信託」とは、「退職給付に充てることを目的とした信託」のことをいいます。退職給付信託を用いる場合、退職給付に充てるために積み立てる資産は、下記のすべての要件をみたしているとき年金資産に該当します。

  1. 当該信託が退職給付に充てられるものであることが退職金規程等により確認できること
  2. 当該信託は信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
  3. 当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還および事業主による受益者に対する詐害的な行為が禁止されていること
  4. 信託財産の管理・運用・処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと

なお、退職給付信託は、退職一時金制度および企業年金制度における退職給付債務の積立不足額を積み立てるために設定するものであるため、資産の信託への拠出時に、退職給付信託財産およびその他の年金資産の時価の合計額が対応する退職給付債務を超える場合には、当該退職給付信託財産は退職給付会計上の年金資産として認められません。

年金資産の額は、期末における時価により計算します。時価とは、公正な評価額をいい、資産取引に関して十分な知識と情報を有する売り手と買い手が自発的に相対取引するときの価格によって資産を評価した額をいいます。
なお、確定給付企業年金制度等の企業年金制度における数理的評価額は、時価には該当しません。

会社の保有資産を退職給付信託に拠出することにより退職給付会計上の年金資産とする場合の会計処理は次のようになります。

会社本体が保有していた有価証券(時価100、簿価80)を退職給付信託として設定した場合、年金資産が時価相当分つまり100増加します。年金資産が100増加すれば、「退職給付債務-年金資産-未認識項目」で算定される退職給付引当金は100減少します。退職給付引当金は、貸方(右側)の科目ですので、退職給付引当金を減少させるという意味で、「(借方)退職給付引当金 100」となります。

一方、退職給付信託の設定を行うことは、実質的に会社が保有していた有価証券を外部へ拠出あるいは売却することを意味しますので、会社本体が保有していた有価証券(簿価80)を会社の外部へ売却するという意味で、「(貸方)有価証券 80」となります。
また、時価100と簿価80の差額20は、当該有価証券を外部へ売却したことによる売却損益的なものという意味で、「(貸方)信託設定益 20」となります。

(借方)退職給付引当金
【年金資産の増加】
100
(貸方)有価証券
(貸方)退職給付信託設定損益
80
20

退職給付信託の信託財産が会社へ返還される場合の会計処理は次のようになります。

年金資産として扱われている有価証券100を会社本体へ戻す場合、年金資産は100減少します。年金資産が100減少すれば、「退職給付債務-年金資産-未認識項目」で算定される退職給付引当金は100増加します。退職給付引当金は、貸方(右側)の科目ですので、退職給付引当金を増加させるという意味で、「(貸方)退職給付引当金 100」となります。 一方、有価証券100を会社へ戻すことにより、会社本体が持っている有価証券が100増加しますので、有価証券という資産、すなわち借方(左側)の科目を増加させるという意味で、「(借方)有価証券 100」となります。

(借方)有価証券
100
(貸方)退職給付引当金
【年金資産の減少】
100

なお、返還前の年金資産に占める返還額の割合が重要な場合には、返還時点における年金資産に係る未認識数理計算上の差異のうち、当該返還額に対応する金額については、当該差異の重要性が乏しい場合を除き、返還時に損益として認識する必要があります。返還された信託財産に個別に対応する未認識数理計算上の差異が明らかであれば、当該対応額を損益に計上し、返還された信託財産額に個別に対応する未認識数理計算上の差異を特定することが困難であれば、返還時の年金資産の比率等により合理的に按分した金額を損益に計上します。

返還前の年金資産に占める返還額の割合が重要な場合、下記の仕訳が追加されます。

(借方)退職給付引当金
【未確認項目(貸方残高)の減少】
✕✕
(貸方)退職給付費用
✕✕

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