退職給付会計ワークシートを活用しよう

ここでは退職給付会計のワークシートについて説明します。
退職給付B/Sの各項目(退職給付債務、年金資産、退職給付引当金など)および退職給付P/Lの各項目(勤務費用、利息費用など)をひとまとめに把握できる退職給付会計ワークシートについて理解を深めましょう。

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「退職給付会計ワークシート」を作成することで、退職給付に係る各項目の関係性が整理され、退職給付会計の会計処理を行なうために必要なすべての数値が把握できます。

   A  B  C D=A+B+C E=F-D F
退職給付B/S上の項目 期首実績
X1/4/1 
退職給付費用  年金掛金/
給付支払額 
期末予定
X2/3/31
数理計算上の差異 期末実績X2/3/31
退職給付債務  (750) S (100)
l (15)
P1 20 
P2 30 
(815) (185) (1,000)
年金資産  400  R 10  C 100 
P2 (30)
480   20   500 
未積立退職給付債務
③=①+②
(350)     (335)   (500)
未認識過去勤務費用  50  A1 (10)   40    40 
未認識数理計算上の差異  100  A2 (15)   85  165  250 
前払年金費用(退職給付引当金)
⑥=(①+②)+(④+⑤)
(200) (130) 120  (210) (210)
 
略語の説明

  S 勤務費用
  R   期待運用収益
   l   利息費用


A1 過去勤務費用当期償却額
A2 数理計算上の差異当期償却額
  C   年金制度からの支払額掛金拠出額 


P1 退職一時金制度からの支払額
P2 年金制度からの支払額

退職給付会計ワークシートは、縦方向に見た場合は各時点の状態や計上額(ストックベース)を表し、横方向に見た場合は各項目の推移(フローベース)を表していると考えることができます。

各項目の推移については、ワークシートの左から「A列~D列」と「D列~F列」の2段階に分けて考えます。

【A列~D列】
退職給付B/Sの期首実績(A列)
+退職給付費用の欄(B列)…退職給付引当金の増加要因
±年金掛金/給付金支払(C列)…退職給付引当金の減少要因
=退職給付B/Sの期末予定(D列)

【D列~F列】
退職給付B/Sの期末実績(F列)…期末のDBO等の実績を入力
-退職給付B/Sの期末予定(D列)
=数理計算上の差異当期発生額(E列)

 

そして、このA~Fの各列を縦集計した最下段の数値が、「退職給付引当金」の構成要素となっているのです。

退職給付会計ワークシートにおけるカッコは、マイナス、すなわち「退職給付B/S上の負債項目(例:DBO)の残高」および「その増加額」、そして「退職給付B/S上の資産項目(例:年金資産)の減少額」を意味しています。

反対に、カッコがない場合は、プラス、すなわち「退職給付B/S上の資産項目(例:年金資産)の残高」および「その増加額」、そして「退職給付B/S上の負債項目(例:DBO)の減少額」を意味しています。

退職給付債務の期首から期末への推移

   A  B  C D=A+B+C E=F-D F
退職給付B/S上の項目 期首実績
X1/4/1 
退職給付費用  年金掛金/
給付支払額 
期末予定
X2/3/31
数理計算上の差異 期末実績X2/3/31
退職給付債務  (750) S (100)
l (15)
P1 20 
P2 30 
(815) (185) (1,000)
年金資産             
未積立退職給付債務
③=①+②
           
未認識過去勤務費用             
未認識数理計算上の差異             
前払年金費用(退職給付引当金)
⑥=(①+②)+(④+⑤)
           

A列:退職給付債務は「退職給付B/S上の負債項目」ですので、期首実績残高750にはカッコが付いています。

B列:「退職給付費用の欄(B列)」において、勤務費用100と利息費用15を計上するということは、「勤務費用と利息費用の累積=退職給付債務」という関係を前提とすると、退職給付債務という負債項目が増加したことを意味しますので、それぞれカッコ付きの100と15を入力します。

C列:「年金掛金/給付金支払額(C列)」において、退職一時金制度からの支払額20、年金制度からの支払額30の分だけ、退職給付債務という負債項目が減少したとみなしますので、それぞれカッコなしの20と30を入力します。

D列:A列の期首残高にB列とC列の金額を加減することにより、負債項目である退職給付債務の期末予定残高という意味でカッコ付きの金額815(=750+100+15-20-30)が算定されます。

E列:F列に入力された期末実績の退職給付債務の金額1000とD列にて算定した期末予定の退職給付債務の金額815との差額として、当期末に退職給付債務から発生した数理計算上の差異185が算定されます。

年金資産の期首から期末への推移

   A  B  C D=A+B+C E=F-D F
退職給付B/S上の項目 期首実績
X1/4/1 
退職給付費用  年金掛金/
給付支払額 
期末予定
X2/3/31
数理計算上の差異 期末実績X2/3/31
退職給付債務  (750) S (100)
l (15)
P1 20 
P2 30 
(815) (185) (1,000)
年金資産  400  R 10  C 100 
P2 (30)
480   20   500 
未積立退職給付債務
③=①+②
           
未認識過去勤務費用             
未認識数理計算上の差異             
前払年金費用(退職給付引当金)
⑥=(①+②)+(④+⑤)
           

A列:年金資産は「退職給付B/S上の資産項目」ですので、期首実績残高400にはカッコが付いていません。

B列:「退職給付費用の欄(B列)」において、期待運用収益10を計上するということは、年金資産という資産項目が10増加したとみなすことを意味しますのでカッコなしの金額10を入力します。

C列:「年金掛金/給付金支払額(C列)」において、掛金拠出額100の分だけ年金資産という資産項目が増加しますので、カッコなし100を入力します。また、年金制度からの支払額30の分だけ年金資産という資産項目が減少しますので、カッコ付きの30を入力します。

D列:A列の期首残高にB列とC列の金額を加減することにより、資産項目である年金資産の期末予定残高という意味でカッコなしの金額480(=400+10+100-30)が算定されます。

E列:F列に入力された期末実績の年金資産の金額500とD列にて算定した期末予定の年金資産の金額480との差額として、当期末に年金資産から発生した数理計算上の差異20が算定されます。

未認識項目(例:数理計算上の差異)の期首から期末への推移

   A  B  C D=A+B+C E=F-D F
退職給付B/S上の項目 期首実績
X1/4/1 
退職給付費用  年金掛金/
給付支払額 
期末予定
X2/3/31
数理計算上の差異 期末実績X2/3/31
退職給付債務  (750) S (100)
l (15)
P1 20 
P2 30 
(815) (185) (1,000)
年金資産  400  R 10  C 100 
P2 (30)
480   20   500 
未積立退職給付債務
③=①+②
(350)     (335)   (500)
未認識過去勤務費用  50  A1 (10)   40    40 
未認識数理計算上の差異  100  A2 (15)   85  165  250 
前払年金費用(退職給付引当金)
⑥=(①+②)+(④+⑤)
           

A列:2つの未認識項目のうち、未認識数理計算上の差異の期首実績残高は、この例では、年金資産と同じく借方残高(=損失方向の残高)となっています。つまり「退職給付B/S上の資産項目」となっていますので、期首実績残高100にはカッコが付いていません。

B列:「退職給付費用の欄(B列)」において、数理計算上の差異の当期償却額15を計上しています。資産項目を償却する、つまり資産項目を減少させるという意味でカッコ付きの金額15を入力します。

C列:「年金掛金/給付金支払」というキャッシュアウト項目は通常、未認識項目の残高に影響しないので、何も入力しません。

D列:A列の期首残高にB列の金額を加減することにより、年金資産と同じく借方残高(=損失方向の残高)すなわち資産項目の期末予定残高という意味でカッコなしの金額85(=100-15)が算定されます。

E列:退職給付債務に関する数理計算上の差異当期発生額185(損失方向)と年金資産に関する数理計算上の差異当期発生額20(利益方向)を合算した金額165(損失方向)が数理計算上の差異当期発生額となります。この数理計算上の差異当期発生額165(損失方向)を未認識数理計算上の差異残高に加算する必要がありますので、未認識数理計算上の差異残高の行に165(損失方向)を転記します。

F列:D列における期末予定残高85(借方残高=損失方向)にE列における未認識数理計算上の差異当期発生額165(損失方向)を加算することによりF列における期末実績残高250(借方残高=損失方向)が算定されます。ここでは最終的に年金資産と同じく借方残高となっていますので、「退職給付B/S上の資産項目」としてカッコなしの金額250となっています。

なお、その他の未認識項目(過去勤務費用)についても、E列における数理計算上の差異当期発生額の処理が不要であることを除き、基本的に上記と同じ処理となります。

退職給付引当金の期首から期末への推移

   A  B  C D=A+B+C E=F-D F
退職給付B/S上の項目 期首実績
X1/4/1 
退職給付費用  年金掛金/
給付支払額 
期末予定
X2/3/31
数理計算上の差異 期末実績X2/3/31
退職給付債務  (750) S (100)
l (15)
P1 20 
P2 30 
(815) (185) (1,000)
年金資産  400  R 10  C 100 
P2 (30)
480   20   500 
未積立退職給付債務
③=①+②
(350)     (335)   (500)
未認識過去勤務費用  50  A1 (10)   40    40 
未認識数理計算上の差異  100  A2 (15)   85  165  250 
前払年金費用(退職給付引当金)
⑥=(①+②)+(④+⑤)
(200) (130) 120  (210) (210)

退職給付会計ワークシートのゴールである「退職給付引当金」の行の数値は、A列~F列を縦に集計することにより算定され、これがそのままB/S退職給付引当金を表すことになります。

A列:退職給付引当金の期首実績残高200は、負債項目という意味でカッコ付きの金額となっています。

B列:退職給付引当金の増加要因である当期の退職給付費用130が、負債項目である退職給付引当金の増加額という意味でカッコ付きの金額として算定されます。

C列:退職給付引当金の減少要因である退職一時金制度からの支払額20と掛金拠出額100の合計額120が、負債項目である退職給付引当金の減少額という意味でカッコなしの金額として算定されます。

D列:A列の期首残高にB列とC列の金額を加減することにより、負債項目である退職給付引当金の期末予定残高という意味でカッコ付きの金額210(=200+130-120)が算定されます。

E列:「数理計算上の差異の欄(E列)」は、退職給付債務に関する数理計算上の差異当期発生額185(損失方向)と年金資産に関する数理計算上の差異当期発生額20(利益方向)を合算した金額165(損失方向)を全額、未認識数理計算上の差異の行に転記しますので、退職給付引当金の行の数値は必ずゼロになります。

F列:「数理計算上の差異の欄(E列)」が必ずゼロになりますので、D列における退職給付引当金の金額がそのままF列の金額となります。
このF列の金額が、カッコ付きではなくカッコなしの金額となった場合には、退職給付引当金ではなく前払年金費用として会社本体のB/Sに資産計上されることになります。

なお、F列の縦集計は、ストックベースの退職給付引当金算定式(当期末の退職給付引当金210=退職給付債務1000-年金資産500-未認識項目290)を表しており、一方、退職給付引当金の行は、フローベースの退職給付引当金算定式(当期末の退職給付引当金210=当期首の退職給付引当金200+退職給付費用130-掛金拠出額100-退職一時金制度からの支払額20)を表しています。

 
【監修】株式会社IICパートナーズ

アクチュアリー・年金数理人や公認会計士が在籍する退職給付会計のプロフェッショナル集団。
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