退職給付債務とは

退職給付会計を理解する上で重要かつ複雑な項目である退職給付債務について説明します。
退職給付債務のイメージを理解し、簡単な算定プロセスを通して理解を深めましょう。

お役立ち【3分】動画

はじめての退職給付債務計算

「そもそも退職給付債務計算って何?」という疑問を持った方が、3分で概要をマスターできる動画です。

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退職給付会計では、将来支払う退職金をいつ・どのように費用や負債として認識するかを整理するために、いくつかの用語を使い分けています。

中でも重要なのが、次の3つです。

退職給付債務 将来支払う退職給付の、当期末における会計上の支払義務
勤務費用 当期の勤続に応じて増加した退職給付債務
利息費用 時間の経過に応じて増加した退職給付債務

ここで注意しなければいけないのは、退職給付債務はあくまで会計上の支払義務であり、実際に従業員がある時点で退職した場合に、支払わなければいけない金額とは異なるということです。

まずは、退職給付債務のイメージを押さえましょう。

退職給付債務イメージ
(ある従業員のある予想退職時点の例)

退職給付債務の算定式

大まかには次の2つのステップで考えることができます。

① 過去の勤務期間分に相当する金額の算定

退職給付債務は、従業員等の将来の退職時点を予測しながらも、必ずその計算過程において、将来の退職時点における全勤務期間分ではなく、当期末などにおける過去の勤務期間分に相当する金額を取り出して計算しています。

将来の退職時点の予測は一時点だけはなく、複数の時点を見込むので、その退職確率を考慮した予想退職時の過去勤務期間分の退職給付見込額のように表現されます。

② 割引率による現在価値の算定

先ほどの過去勤務期間分の退職給付見込額は、将来の退職時点の金額から、一部を取り出した金額です。よって、金額としての価値は、あくまで将来の退職時点のままです。

これを現時点で用意することを考えた場合、その全額を用意する必要はありません。なぜなら利息が発生すると考えることができるからです。そのため、過去勤務期間分の退職給付見込額に対して、その利息に相当する利率(割引率)で割り引くということを行います。

あくまでこれは会計上の利息であり、キャッシュが動くわけではありません。また、債務に対する利息のため、毎年、企業が費用として負担することになります。

図は、ある従業員のある一つの予想退職時点だけを表したものですが、実際の計算では、定年年齢までの1年ごとの予想退職時点分だけこの図があり、それが全従業員分あるので、膨大なパターンの計算を行うことになります(そのため専用のソフトが必要になります)。

会計基準等では、この流れをまとめて、

退職時の退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額(=過去勤務期間分の退職給付見込額)を退職時から期末現在まで割り引いた現在価値

のように表現されます。

最初に説明したように、勤務費用と利息費用は下記のものでした。

勤務費用:当期の勤続に応じて増加した退職給付債務

利息費用:時間の経過に応じて増加した退職給付債務

なお、利息費用については、期首の退職給付債務に割引率を乗じるという形で比較的簡単に算出できます。

退職給付債務は入社時点では0で、翌期の勤務費用と利息費用により徐々に増えていきます。これが毎年繰り返されるので、当期末における退職給付債務は過去勤務期間における勤務費用および利息費用の累積という関係にあります。

但し、実際の退職給付債務には、勤務費用や利息費用以外に、計算前提による予測と実績の乖離等による退職給付債務のブレの累積も含まれています。

退職給付債務 = 勤務費用と利息費用の累積

退職給付債務=勤務費用と利息費用の累積
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先ほど、退職給付債務は「過去の勤務期間分に相当する金額を取り出して計算している」と説明しました。

では、どのようにして過去の勤務期間分を取り出しているのでしょうか?

この方法のことを期間帰属方法といい、これには期間定額基準給付算定式基準という2つの方法があります。

期間定額基準とは、勤続年数の割合で、将来予想される退職給付の内、期末までの過去勤務期間分を取り出す方法です。

会計基準では以下のように定義されています。

退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法

この方法では、次のステップ1と2で過去勤務期間分を算定します。
そして、ステップ3で割引計算を行うことで退職給付債務となります。

【ステップ】

  1. 退職率や予想昇給率、支払条件等を織り込んだ将来の退職給付を予測
  2. 当期末までの勤続年数の比率を乗じる
  3. 割引率を使って、期末まで割引計算

退職給付債務の算定プロセス(期間定額基準)

退職給付債務の算定プロセス(期間定額基準)

給付算定式基準とは、退職給付制度に定めている給付算定式に基づいて、将来予想される退職給付の内、期末までの過去勤務期間分を取り出す方法です。

会計基準では以下のように定義されています。

退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法

この方法では、次のようにステップ1で最初に当期末の金額を見積ります。
そして、ステップ2と3で将来の変動要因を反映し、割引計算を行うことで退職給付債務となります。

【ステップ】

  1. 会社都合退職等の給付算定式に従って、当期末の退職給付の金額を見積もる
  2. 退職率、予想昇給率、支払条件等で将来の変動要因を反映する
  3. 割引率を使って、期末まで割引計算

なお、この給付算定式基準による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければなりません。

退職給付債務の算定プロセス(給付算定式基準)

退職給付債務の算定プロセス(給付算定式基準)

監修日:2026年7月8日

遠藤イメージ
監修者
日本アクチュアリー会正会員・年金数理人
千葉大学大学院自然科学研究科修了。明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険相互会社)に入社。
適格退職年金および確定給付企業年金の年金数理計算等に携わる。
その後、株式会社IICパートナーズにコンサルタントとして参画。

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