退職給付債務は、期末時点における退職給付の実績だけではなく、将来の昇給や、自己都合による減額、将来の貨幣価値を現在の貨幣価値に割り引くなど、確率・統計を用いた見積りにより計算されています。
そのため、退職給付債務の計算においては、常に合理的と考えられる計算基礎の設定が必要不可欠であり、利用者の信頼が損なわれぬよう細心の注意が必要です。
ここでは、退職給付債務計算の概要から、割引率に代表される計算基礎の設定方法まで、一連の流れを解説していますので、計算業務の参考としてお役立てください。

退職給付債務計算の概要
退職給付債務とは、退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算するものとされていますが、具体的にはどのような計算で求めているのでしょうか。 ここでは、その具体的な計算式を、例を交えて解説していきます。
割引率とは
割引率とは、退職給付債務の計算で使用される計算基礎の1つです。
日本の会計基準では、従業員の平均残存勤務期間に近似した年数の債券利回りを実務上使用することができましたが、2012年の会計基準の改正により、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映した割引率を使用することとなり、「複数の割引率」もしくは「単一の加重平均割引率」のいずれかを選択し、適用することになりました。
また、割引率の変動は退職給付債務に与える影響が大きいので、しっかりと設定方法等を学んでおきましょう。
退職率・死亡率と予想昇給率
退職率・死亡率と予想昇給率は退職給付債務の計算で使用される計算基礎です。
計算基礎は、各企業が確定することになりますが、これらの計算基礎については、一般的に退職給付債務計算の計算機関から提案されたものを使用することが多いと思われます。その提案が適切なものかどうか判断できるよう、しっかり学んで計算基礎を確定できるようにしましょう。
予想再評価率と一時金選択率
予想再評価率は、キャッシュ・バランス・プランを採用している企業について、一時金選択率は、確定給付企業年金制度等の企業年金制度を実施している企業について、退職給付債務の計算で使用される計算基礎です。
計算基礎の確定にあたっては、退職率や予想昇給率等のように退職給付債務計算の計算機関から提案されるわけではなく、各企業が設定方法を決めた上で確定することになると思いますので、その設定方法や留意点を学んでいきましょう。
期間帰属方法とは
期間帰属方法とは、退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額を算定する方法のことです。
「期間定額基準」か「給付算定式基準」のいずれかを選択する必要があり、いったん採用した方法は、原則として、継続して適用されなければならないため、各基準の内容、留意点をしっかり理解し ましょう。