退職給付とは一定の期間にわたり労働を提供したことなどの事由に基づいて退職以後に支給される給付の事をいい、この退職給付の支払いをより確実にするために定められた仕組みや決まりごとを退職給付制度といいます。
日本には退職一時金制度をはじめ、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度など、目的や用途、給付の支払方法によって様々な退職給付制度が存在します。
退職給付会計について学ぶ前に、それぞれの退職給付制度の特徴や根拠法、給付体系の種類などを体系的に学んでおきましょう。

退職給付制度の種類
日本の退職給付制度は、様々な特徴を持った制度があります。 退職時に支給されるものと高齢期に支給されるもの(支給時期)、一時金で支給されるものと年金で支給されるもの(支給方法)、会社から支給されるものと会社以外の金融機関や別団体から支給されるものなど(支給主体)、採用するにあたって検討する項目が数多くあります。
給付の内容は採用する制度によって制約を受けます。退職一時金制度は設計の自由度が高く、退職金規程の内容は企業によって多種多様です。一方、企業年金制度は法令により採用可能な方法がいくつか定められており、共済制度は掛金の口数に応じて、共済ごとに定めているテーブルに応じた退職金が支払われます。
企業年金制度としては、主に確定給付企業年金制度と確定拠出年金制度の2つがあります。老後の所得保障という観点では、日本の年金制度は3階建てと表現されますが、企業年金制度はこの3階部分に相当し、少子高齢化の中で公的年金制度を補完する役割を担っています。2017年には確定給付企業年金制度において「リスク分担型企業年金」が導入されるなど、今後も様々な法改正がこの2つの制度を軸に検討・施行されていくことでしょう。
ここでは、給付の仕組み、運営方法、掛金、税制などの違いを中心に説明します。
給付体系の種類
退職給付の給付体系は、確定給付型と確定拠出型に分けられます。勤続期間や給与などに基づいてあらかじめ給付の算定式が定められているのが「確定給付型」で、毎期拠出した掛金とその運用収益から事後的に給付額が定まるのが「確定拠出型」です。いずれにおいても、定額や給与、ポイントなどの企業が定めた要素を用いて、給付や掛金の算出が行なわれます。
確定給付型と確定拠出型には、企業側あるいは従業員側から見てそれぞれ長所と短所がありますが、両方の特徴を併せ持つことで短所をカバーすることを狙った通称「ハイブリッド型」と呼ばれる制度も存在します。
給付体系の分類は退職給付会計での取り扱いを決める上で重要な論点となります。基本的に、確定給付型は退職給付債務の評価が必要となり、確定拠出型は退職給付債務の評価が不要です。ハイブリッド型は制度の特性に応じて「確定給付型」「確定拠出型」のいずれかに分類され、会計処理されることになります。例えば、ハイブリッド型の一つであるリスク分担型企業年金については、会計処理や開示を定めた実務上の取扱いが公表されており、これに基づいて分類することになります。
ここでは、確定給付型についてはその給付の算定式を、確定拠出型についてはその拠出される掛金の算定式について説明します。
確定給付企業年金制度の仕組み
確定給付企業年金制度は、確定拠出年金制度とともに2大企業年金制度の1つです。 確定拠出年金制度に比べ複雑でわかりにくいと言われがちですが、それは確定給付型つまり退職時や高齢期に達したときの給付を約束している制度であることから、長期的な考えに基づいた掛金設定や財政運営をして受給権の保護を図っているためです。
掛金の設定や責任準備金の算出においては、アクチュアリーや年金数理人といった確率・統計の専門家が関与しています。年金制度が加入者や受給権者に対して、持続的に約束した給付を提供できるように、将来の長期にわたるキャッシュフローを適切に予測する必要があるからです。高度な手法が年金制度を支えているという一方で、企業から見ると、専門用語が多く、全体像をイメージしづらいという面があるかもしれません。
企業は定期的に掛金を生命保険会社や信託銀行といった受託機関に拠出しますが、その資産は企業の帳簿上の資産とは切り離され、年金資産として別に管理されることになります。積み立てるべき水準に年金資産が満たなければ、掛金の見直しや追加拠出が法令上求められるため、企業は掛金の拠出だけではなく、年金資産の運用についても気を配り、受託機関からの報告を受けて、適切な判断や指示を行う必要があります。
ここでは、確定給付企業年金制度の基本的な仕組みである加入者、給付、掛金、財政運営等について説明します。
おすすめダウンロード資料はこちら

退職給付制度に関するよくある質問
Q
退職給付制度にはどのようなものがありますか?
A
代表的な制度として、退職一時金制度、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度が挙げられます。その他に、中小企業が加入できる中小企業退職金共済制度や、退職時ではなく、給与に上乗せして支払う前払い退職金制度などがあります。
Q
退職給付の額はどのように決まりますか?
A
勤続期間や給与などに基づいてあらかじめ給付の算定式が定められている制度と、毎期拠出した掛金とその運用収益から事後的に給付額が定まる制度があります。前者は「確定給付型」、後者は「確定拠出型」と呼ばれます。