【参加レポート】国際カンファレンスで見た海外の企業年金の注目トピック

当社IICパートナーズは、国際的なネットワークであるアベリカグローバル(Abelica Global)のメンバーファームとして活動しています。2025年11月にメンバーファームが一同に会するカンファレンスがポルトガルで開催され、当社代表の中村が参加しました。本コラムでは、カンファレンスの雰囲気やセッションの内容を、参加レポートの形式で中村がご紹介します。ぜひ、コラムを通じて、カンファレンスの雰囲気を味わってください。
アベリカグローバルの詳細についてはこちら
⇒ 国際ネットワーク(IICパートナーズコーポレートサイト)
1.アベリカ年次カンファレンスの概要
当社が参加しているアベリカグローバル(Abelica Global)は、企業年金や福利厚生、保険、投資に関する独立系のコンサルティング会社が集まる国際ネットワークです。
世界各地で毎年4~5日間開催される年次大会に、メンバーファームの代表やコンサルタントが集い、様々なプレゼン、ディスカッション、交流が行われます。前回2024年11月のイタリア(ベニス)に続き、今回2025年11月はポルトガル(リスボン)で開催されました。

2.カンファレンスの雰囲気
アベリカのファームのメンバーは皆、オープンでポジティブ、そして誠実です。異なる意見もチャレンジングな意見も温かく肯定的に受け入れ、前向きに統合していく・・・・それが自然に行われる雰囲気があります。『昨今、実現することが難しくなっている世界平和がここにある』という感じです。
前回のカンファレンスで、私は、少々チャレンジングなプレゼンをしたのですが、その時も肯定的に受け入れていただき、非常にたくさんの方から称賛の声をいただきました。
ちなみに私のプレゼンの内容は、過去の失敗から誠実性の重要性を学び、誠実性が素晴らしいお客様と人材を引き寄せ、さらにAI時代にも誠実性が成功のカギになるという内容でした。

3.カンファレンスセッションの内容
カンファレンスでは、毎回、退職給付・保険・投資・AI・人材マネジメント等、多種多様なセッションが開催されます。今回の主なセッションの内容を簡単にご紹介します。・コンサルに関するコラボレーション事例報告
今回はアメリカとメキシコのファームのコラボ、カナダとメキシコのコラボに関する成功事例を中心に報告されました。
なお、2023年のインド(デリー)でのカンファレンスでは、当社もアメリカのファームとのコラボについてプレゼンしました。
・ハイブリッド年金プランに関する報告
アメリカ市場におけるDBとDCの間のちょうど良い領域に関するプレゼンが行われました。(興味深い内容なので後述します)
・ESG投資に関する報告
カナダにおける気候変動規制、DCにおける持続可能な投資、ALMにおける持続可能性と気候変動との関係、オランダにおける年金加入者のESG選好のポジティブインパクトなどの報告がありました。
・AIコラボレーションに関する報告
アクチュアリアルコンサルティングにおけるAI活用、AIエージェントの可能性、AIによるビジネス機会創出、AIによるメンバーファーム間の価値提供についてのプレゼンやディスカッションが行われました。
・国際アクチュアリー協会の活動とマクロトレンドによる機会
国際アクチュアリー協会(IAA)の活動方針やミッション・ビジョン・バリューの説明に加え、AI・気候変動・人口動態・リスクの資本への転換といった4つのマクロトレンドがコンサルティング事業にもたらす機会についてのプレゼンが行われました。(こちらも興味深い内容なので後述します)
・アベリカのブランディングとAIショーケース
アベリカのWEBサイトの全面リニューアルの方針説明や、カナダのファームにおいて開発したAIソリューションを紹介するプレゼンが行われました。
・グローバルリサーチ
アメリカのDCにおける最適なライフサイクルファンド設計に関する、米国保険数理人協会(SOA)との共同研究結果のプレゼンがありました。本研究では、リスク回避度、人的資本と株式リターンの正の相関関係、恒久的なショックの規模がライフサイクルファンドのポートフォリオ配分に及ぼす影響などについて解説がありました。
・人材開発と採用
優秀な人材の採用と定着について報告があり、その後、各ファームのリモートワーカーの経験談や世代間の価値観の違いについてディスカッションが行われました。コンサルタントとして最も重要なソフトスキルが、コミュニケーション力であるとの結論が出て、当社のスタンスと同じであることを確認できた次第です。
・コラボレーションとソフトウェア活用
メンバーファームのうち、当社を含めた16社が参加したソフトウェア利用状況調査結果の報告があり、各メンバーファームが関心のあるソフトウェアに関する情報を共有し、さらに協働する際にも活用することについてディスカッションがありました。
4.特に注目したセッション
ハイブリッド年金プランに関する報告
アメリカのファーム(オクトーバースリー)から、アメリカ市場におけるDBとDCの間の最適な領域、ハイブリッド年金プランに関するプレゼンが行われました。
アメリカというと、DC先進国であり、DCによる資産形成が成功しているイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし、富裕層や中流層を除くと実態としては必ずしもうまくいっていないようです。
結果としてDCだけではうまく機能しない、しかし、企業としては運用リスクを負担したくない・・・そこで提案した市場実績連動型キャッシュバランスプラン(CB)が、お客様から好評を得て広がってきているという内容でした。その他の普及理由として、市場実績連動型CBであれば、会社が主体的に運用を行うので投資リテラシーの乏しい従業員にとって負担や抵抗感が小さいこと、さらに、終身年金化も可能で長寿リスクに対応できるというメリットもあるということでした。
日本の場合、この市場実績連動型CBも採用可能ですが、これに似たものとして、リスク分担型年金制度があります。ただ、リスク分担型年金制度の場合、DB(金利連動型CBを含む)からの制度移行の手続きやガバナンス構築等のハードルが高く、かつ、会社負担である掛金拠出額も大きくなるので、日本でも市場実績連動型CBを改めて検討しても良いかもしれません。
国際アクチュアリー協会の活動とマクロトレンドによる機会
国際コンサルティングアクチュアリー協会の会長から、国際アクチュアリー協会(IAA)の活動方針やミッション・ビジョン・バリューの説明に加え、AI・気候変動・人口動態・リスクの資本への転換といった4つのマクロトレンドがコンサルティング事業にもたらす機会についてのプレゼンが行われました。
この中で国際アクチュアリー協会は、以下①~⑤のバリュー(価値観)を遵守するとしています。
② 多様性と包摂性(diversity and inclusion)
③ 説明責任(accountability)
④ 透明性(transparency)
⑤ 客観性(objectivity)
トップに「①誠実性(integrity)」が掲げられており、これを大事にしているアベリカグローバルにとっても、当社にとっても、大変心強く感じた次第です。
なお、「②多様性と包摂性(diversity and inclusion)」は2021年に追加されました。
これは特にアベリカグローバルのような多様なメンバーファームのネットワークには追い風です。なぜなら、世界的な視野(Global Vision)を持ちつつ、各国の多様な制度・法令・会計基準・労働慣行・人材等に関する知恵(Local Wisdom)を包摂・統合して、お客様にベストな提案をするという、アベリカグローバルのスタンス(Global Vision,Local Wisdom)と整合するからです。
一般的に、外資系のグローバルファームは、本国のコンサルスキームを本国以外の子会社でも適用するよう指導するという話、それが本国以外の子会社にフィットしないことがあるという話を聞きます。すべての外資系グローバルファームがそうだとは思いませんが、仮にそのようなデメリットがあるとすれば、アベリカグローバルのスタンス(Global Vision,Local Wisdom)に価値を感じて頂けるでしょう。
5.グローバルなつながりで、お客様の課題を解決する
日本企業の親会社として、海外子会社の退職金・企業年金に関する制度の内容、法規制、会計基準等について把握・理解し、マネジメントすることは簡単ではなく、苦労されているという話を伺います。
そのようなお悩みがあれば、ぜひ、当社にご相談ください。各国をカバーするアベリカのメンバーファームをご紹介することもできますし、必要に応じて弊社がアレンジすることも可能です。
一例として、当社はアベリカグローバルのメンバーファームと連携して、下記の対応が可能です。
- 海外の制度・法規制・会計基準等の情報についての調査レポートの作成
- 外資系企業の日本法人に対して、海外の親会社への説明やレポート作成、海外連結決算用の開示対応などのサポート
- 上述の「ハイブリッド年金プランに関する報告」にあった市場実績連動型CBのような海外の年金制度に関する勉強会の実施
当社は、皆様の退職給付に関する課題の解決を、国内のみならず、グローバルに、アベリカの世界的な知見を活かし、サポートいたします。お気軽にご相談いただければ幸いです。
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この記事を書いた人 代表取締役社長 公認会計士 中村 淳一郎 |
1996年早大商学部卒。 (現)有限責任監査法人トーマツを経て現職。 コンサルティング・監査・経理・人事の実務経験に基づいた「本質をつく解説」と「体系的に整理した資料」に定評。 都銀向け退職給付会計講座など講演実績250回超。「週刊経営財務」、「月刊企業年金」、「CFO FORUM」等で執筆。 |
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