定年延長の実態とは

目次
- 1 :高年齢者の雇用状況
- 2 :就労条件総合調査
- 3 :定年延長実施企業調査
最近は定年延長を実施する企業が少しずつ増えてきましたが、実際にどれくらいの企業が定年延長を実施しているかご存じでしょうか。
今回は、国から公表されている調査結果を基に、定年延長の実態について紹介します。
1.高年齢者の雇用状況
『高年齢者の雇用状況』は、高年齢者雇用確保措置の実施状況を把握するために、厚生労働省から毎年公表されている調査結果です。直近の平成30年の調査結果に基づく高年齢者雇用確保措置の内訳は図表1のとおりであり、「継続雇用制度の導入」を実施している企業が最も多いですが、「定年の引上げ」(定年延長)を実施している企業も2割弱いることが分かります。
なお、企業規模別で見ると、大企業より中小企業の方が定年延長を実施している割合が高くなっています。
【図表1】雇用確保措置の内訳

また、過去の調査結果を基に、「定年の引上げ」または「定年制の廃止」を実施した企業割合の推移を集計したのが図表2です。これを見ると、「定年の引上げ」を実施した企業は、少しずつではありますが増加傾向にあることが分かります。
なお、「定年制の廃止」を実施した企業割合はほとんど変わっていないため、定年制は維持しつつ、定年年齢の引上げにより65歳までの雇用を確保する企業が増えてきたと考えられます。
【図表2】定年の引上げ企業等の推移

2.就労条件総合調査
『就労条件総合調査』は、民間企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的に、厚生労働省が毎年実施している調査です。定年制に関しては、直近では平成29年に調査が行われており、定年年齢の状況は図表3のとおりです。
定年年齢としては、60歳もしくは65歳としている企業がほとんどであり、61歳~64歳としている企業はごくわずか(3%程度)となっています。
なお、企業規模が小さい方が、定年年齢が高くなっており(定年延長を実施しており)、『高年齢者の雇用状況』と同様の結果となっています。
【図表3】定年年齢別企業割合

また、定年年齢を65歳以上としている企業割合を産業別に集計した結果が図表4です。「宿泊業、飲食サービス業」が29.8%で最も高く、それ以外でも「サービス業(他に分類されないもの)」「医療、福祉」「運輸業、郵便業」「建設業」において20%を超えています。
いわゆる人手不足といわれている業種を中心に、定年延長が実施されていると考えられます。
【図表4】産業別の定年65歳以上企業割合

3.定年延長実施企業調査
『定年延長実施企業調査』は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が定年延長等を行った企業を対象に行ったアンケート調査です(発行日:2019年7月31日 改訂版)。「定年延長した企業はどんな企業か」、「定年延長を行って良かったことは何か」、「何が課題だったか」、「今後の課題はあるか」など、幅広い調査が実施されています。今回は、これらの調査結果の中から3点紹介します。
1つ目は、65歳時点の賃金水準についてです。59歳時点の賃金水準(基本給・賞与)を10割とした場合の65歳時点の賃金水準は図表5のとおりであり、「10割以上」(59歳時点と同水準以上)としている企業が全体の6割弱を占めています。
なお、企業規模別で見ると、規模の大きい企業の方が、59歳時点と比べて賃金水準は低くなっている傾向があります。
【図表5】65歳時点の賃金水準

2つ目は、定年を延長した理由です。図表6のとおり、半数以上の企業が「高齢社員に働いてもらうことにより、人手を確保するため」、「60歳を超えても元気に働けるから」、「優秀な高齢社員に引き続き働いてもらいたいと考えたから」を定年延長の理由として挙げています。
つまり、「人材の確保」、「元気に働ける」、「優秀な社員の引きとめ」が定年を延長した三大理由と考えられます。
【図表6】定年を延長した理由 (複数回答)

3つ目は、定年延長にあたっての課題です。図表7のとおり、「高齢社員の賃金の設定」、「組織の若返り」、「社員の健康管理支援」、「高齢社員に長く働く気持ちになってもらうこと」を課題として挙げる企業が多くなっています。
なお、図表には載せていませんが、企業規模が大きくなるにつれて、退職金や賃金原資の捻出を課題として挙げる企業が多くなっています。
【図表7】定年延長にあたっての課題 (複数回答)

あわせて読みたい記事はこちら
関連サービスはこちら
![]() |
定年延長や人件費の増加は特定のお客様の課題というわけではなく、あらゆるお客様に共通の課題となっています。 |
---|
※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。