定年延長に関する法改正等の動向
目次
- 1 :高年齢者雇用安定法
- 2 :公務員の定年延長の動向
- 3 :公的年金との関係
現在の定年年齢は60歳が主流ですが、昨今では「定年延長を実施した」という声を聞く機会が増えてきました。政府も70歳まで働き続けることができる環境整備に関して検討を開始しており、令和の時代には、65歳定年が主流になってくるのではないでしょうか。
今回は、定年延長に関する法改正等の動向について説明します。
1.高年齢者雇用安定法
高年齢者の雇用の確保に関する法律として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)があります。
高年齢者雇用安定法では、60歳未満の定年制を禁止している他、65歳までの安定した雇用を確保するために、定年年齢を65歳未満としている企業に対して、以下のいずれかの措置の実施を義務付けています。
<高年齢者雇用確保措置> |
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A) 定年年齢を65歳以上まで引き上げる B) 希望者全員に対して、65歳までの継続雇用制度を導入する C) 定年の定めを廃止する |
現行法では、希望者全員を65歳まで雇用するよう義務付けていますが、政府は70歳までの就業機会を確保するための法改正を検討しています。
2019年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)の中で、70歳までの就業機会の確保に向けて、以下のような高齢者雇用安定法の改正案の骨格が示されています。
<70歳までの就業機会の確保>
法制整備の第1段階として、2020年の通常国会において、上記A~Gの選択肢を明示した上で、70歳までの就業機会確保の努力規定とする法案提出を目指すこととされています。
その後、第1段階の実態の進捗を踏まえ、第2段階として、義務化のための法改正を検討することとされています。人生100年時代を迎え、今後は高齢者の活躍の場が今まで以上に広がっていくのではないでしょうか。
2.公務員の定年延長の動向
国家公務員の定年年齢は、国家公務員法において、原則として「60歳」と定められています(例外として、医師など一部の職種では61歳~65歳と定められています)。
少子高齢化が急速に進展しているため、意欲と能力のある高齢者が活躍できる場を作るということは、民間企業だけではなく、社会全体の重要な課題と位置付けられており、公務員においても定年の引上げの必要性が高まっています。
国家公務員の定年の引上げをめぐっては、過去から長らく検討が行われてきました。最近では2018年8月に、人事院から「定年を段階的に65歳に引き上げることが必要である」とする意見の申出が行われています。
当初は、2019年の通常国会での法案提出が予定されていましたが、「公務員優遇」との批判が出かねないリスクもあり、今回の法案提出は見送られました。ただし、国家公務員の定年延長は避けて通れないと考えられますので、今後の動向に注目していきたいと思います。
なお、地方公務員の定年年齢は、地方公務員法において、国家公務員の定年を基準として条例で定めるものとされていますので、仮に国家公務員の定年が65歳に引き上げられた場合には、地方公務員も同様に定年が引き上げられるものと考えられます。
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3.公的年金との関係
公的年金の支給開始年齢は、原則65歳となっています(昭和16年(女性は昭和21年)4月2日以後に生まれた方は、60歳から65歳になるまでの間、生年月日に応じて、支給開始年齢が引き上げられています)。
ただし、60歳から繰上げて受給することや、70歳まで繰下げて受給することも可能であり、年金の受給開始時期については、各自が60歳から70歳までの間で選択できるようになっています。
今回、70歳までの就業機会の確保が検討されていますが、原則65歳からとなっている年金支給開始年齢の引き上げは行わないこととされています。一方で、選択可能な受給開始時期については、70歳以降も選択できるよう、範囲の拡大が検討されています。
また、現在は年金を受け取りながら働いている場合、年金と給与の合計額が一定の水準を超えると、年金の一部または全部が支給停止される「在職老齢年金」という仕組みがあります。在職老齢年金については、高齢者の就労意欲を阻害しているという批判があるため、将来的な制度の廃止も展望しつつ、社会保障審議会での議論を経て、速やかに制度の見直しを行うこととされています。
なお、2019年8月に、2019(令和元)年の財政検証結果が公表されました。今回の財政検証結果を踏まえ、今後の年金制度改正についての議論が本格的にスタートしますので、こちらの動向にも注目していく必要があるでしょう。
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