企業年金とESG投資

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企業年金とESG投資

 

ESG投資とは
投資する企業や事業の評価をする際に、環境、社会そしてガバナンスというESG要素を考慮する投資のことをいいます。※1

※1:環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもの。


今日の投資の分野では、利益や財務状況などの財務的要素だけでなく、非財務的要素である環境、社会への配慮、ガバナンスの重視などのESG要素を考慮し評価することが求められるようになっています。また、企業に対してもESG要素を重視した経営が求められています。

最近は、企業年金の皆さんに運用機関からのESG商品の売込みが活発化しており、当社へもESG投資に企業年金としてどう取り組むべきかというご質問をいただくようになっています。
ESG投資について、いろいろな観点からの議論が可能ですが、本コラムでは、企業年金のESG投資を取り巻く法令やルールについて整理をしたいと思います。

 

おわりに

グローバルに経済・社会のサスティナブルな発展が求められる中で、金融の果たすべき役割への期待が高まっています。資産運用の分野でもESG要素を考慮した投資が主流となりつつあります。企業年金も60兆円を超える資金を運用する機関投資家として、その役割の一端を担うことが期待されています。

他方で、ESG投資自体の意義は理解しつつも、ESG要素の考慮が収益につながるのかという疑問は、資産運用の現場において依然大きな課題であり続けています。残念ながら、ESG要素の考慮がリスク・リターンの改善につながるという実証研究はなされていないのが実情です。また、ESG投資商品が急増、乱立する一方で、金融商品のグリーン・ウオッシュも問題※9となるなど、個別の運用商品の選択は必ずしも容易ではありません。

さらに、これまで「脱石炭」はESG投資のメインストリームでしたが、ウクライナ危機はエネルギーをはじめとする安全保障上の問いを我々に投げかけています。このように、ESG投資には、個々の投資主体が判断するには手に余る課題も少なくありません。

加えて、ESG投資は理念先行で、現実的な課題が置き去りになりがちな傾向も否定できません。他方で、個々の投資商品の適否は、資産運用の現場にその判断が委ねられており、投資判断の際の現場の負荷は決して小さくありません。

企業年金の皆さんには、ESG投資を取り巻く状況や様々な課題を理解したうえで、現在、投資している運用商品にどのようにESG要素が考慮されているかのモニタリングを行うことが重要であると思います。さらに、運用機関とのコミュニケーションを通じて、ESG商品の年金ポートフォリオへの影響についての検証、ESG投資への取組み方針の検討を進めていくことが期待されているのではないかと思います。

こうした、ESG投資をはじめとする、企業年金の資産運用の様々な課題について、IICPの年金コンサルティング部門がお役に立てればと存じます。企業年金の皆様から忌憚なくご相談いただけましたら幸いです。


※9:環境に配慮しているように偽装する行為をいい、各国で金融商品のグリーン・ウオッシュを排除する規制の検討が進められている。

 

 

※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。

矢部イメージ この記事を書いた人

取締役
公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)

矢部 信

1977年に一橋大学社会学部を卒業。
日本債券信用銀行に入行、法人営業などのほか、債券運用を中心に銀行の証券業務に長期に亘り携わることができました。その後、1999年から東京海上アセットマネジメント投信に転職、企業年金・公的年金のクライアントサービスなどの業務に従事し、2014年から厚生労働省年金局企業年金・個人年金課で企業年金資産運用専門官として勤務しました。
2019年4月より公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構特任研究員、同年6月から株式会社IICパートナーズ顧問、2020年9月からIICパートナーズ取締役を務めております。

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