JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか?-2-

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JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか?-2-

JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか-1-では、退職給付債務計算の自社計算結果の専門家による検証は必要か、自社計算の課題や検証について大森が説明しました。後編では予告通り、太田を加えて、大森との対談形式で退職給付債務計算の流れについて具体的にお話したいと思います。

大森

というところで、そろそろ太田も交えて具体的な話に入りましょう。

じゃあ、太田さんよろしくお願いします。インタビューするにも話がよりマニアックになってきますので、私がインタビューしつつされつつという形で進めましょう。
太田 はい、お願いします。
大森 計算ソフトの操作はどこのソフトを使っていても手順は大体同じですから、作業の流れに沿って進めましょう。
太田 計算ソフトを使用しているかどうかにかかわらず、まず大事なのが、計算に用いるデータを正しく準備して頂く必要があるという点です。実際に弊社に委託頂いているJA等の計算を行う際には、概ね2~3回程度、データの合理性、整合性について確認をしていますね。
大森 私としてはJA等になるべく手間をかけさせたくないので、苦しい部分もありますが、計算に使用するデータについて太田さんはどう考えますか?
太田

計算に用いるデータが正しくないと計算結果も正しいと認められるものにはなりませんので、正確なデータの作成は最低限必要と考えています。特に計算ソフトを使用する場合は、外部の専門家(年金数理人)がデータの確認を一切行わないため、JA等内部できちんと確認を行う体制を整える必要があると思います。

なお、JA等に限らず、弊社に委託頂いている民間企業の計算においても、同じ位データの確認、修正をお願いしており、正確なデータを作成するというのは、一見簡単なように思いますが、きちんと作成できていないケースが意外と多いです。
太田

正確なデータを作成した後は計算に用いる基礎率を作成します。 基礎率といっても、割引率、死亡率といったソフトの販売元から提供されるものをそのまま使用するものの他、人事データをもとにJA等の実態に応じて作成する予想昇給率や退職率があります。

予想昇給率に関しては、算定対象、昇給のカーブ、給与体系変更時の取扱いなどに留意が必要です。

3-1.算定対象

太田

例えば、職種によって給与の体系や水準が異なる場合には、職種ごとに算定した方が合理的と考えられるので、「どの職員にどの昇給率を使用することが合理的か」という視点で予想昇給率を算定することが必要です。

JA等においても、総合職と一般職といったように職種が分かれていたりしますが、計算ソフトの最初の設定に引っ張られてしまい、全員を対象に一本の昇給率を算定しているケースも結構あるかと思います。また、ポイント制の退職金制度では、職種によって付与されるポイントが異なるケースも多いので、その場合も職種ごとに算定した方が合理的ですね。
大森

総合職と一般職で適用される退職給与規程が別といった場合は、職種別に予想昇給率を算定しているJA等もありますね。

また、県内1JAをはじめとする職員数が多いJA等は、自己改革への取り組みとして人事制度改訂を行い、共済事業や信用事業といった事業ごとに職種を設定し、採用を行うといったことも検討しているかもしれませんが、予想昇給率を算定する上での考え方が変わる可能性もあり注意が必要です。

*社会医療法人等の場合は病院運営という事業の性質もあり、適用される退職金規程が同一であっても、医師、看護師、コメディカル(医療従事者)、事務職等、母集団を分けて予想昇給率を算定することもよくあります。

3-2.昇給のカーブ

太田 JA等に入職してから定年退職するまでの給与(ポイント)が直線的に伸びていかない場合には、どのようなカーブで予想昇給率を算定すればよいかについても検討が必要です。
大森 昇給カーブが直線的に伸びていかない場合というと例えば、退職給与規程にもとづき退職金が55歳以降は増加しないといった場合(頭打ちと呼ばれる)等でしょうか?
太田

そうですね、ただし、退職給与規程だけに限らず、給与規程をみると給与の頭打ちがあったり、また特定の年齢を境に昇給の傾向が変わるケースもあったりします。社会医療法人(病院等)では、特定の年齢を境に昇給額が変わるケースは比較的多いですね。

例えば、55歳以上で昇給額が半分になるといったケースでは、予想昇給率にそういった事情も反映させた上で、直線で算定している場合は55歳以降の昇給額(傾き)を半分にするとか、そもそも昇給額の傾向を踏まえて、二次曲線や三次曲線のカーブにするといった考慮が必要です。


また、成果主義の一部導入などで、年齢が上がっても、比例して給与が上がるというわけではないケースもあり、予想昇給率をどのように算定するかに関しては、悩ましいケースもけっこうあります。昇給カーブについては、比較的、直線で算定しているケースが多いと思いますが、直線よりも二次曲線や三次曲線の方がより実態に合っているケースも多いので、現行の予想昇給率が自組合の実態に合っているかどうかについては、一度確認してみるのが良いと思います。

大森 経験則として、昇給カーブの見込みを変更すると退職給付債務はどれくらい変わるものですか?
太田

給付算定式によるところが大きいですが、例えば最終給与比例制の退職金制度の場合は、定年時の給与がどうなるかっていうのが重要なので、金額的には変動することが多いですね。例えば、以下の図のように、昇給のカーブを直線から三次曲線に変更するだけで、退職給付債務が5%前後変動するっていうのは十分あり得ます。

なお、ポイント制の場合は予想昇給率による影響は小さくなってきますので、最終給与比例制の場合は特に要注意って感じですね。

〈直線で補正した場合の予想昇給率〉
直線で補正した場合の予想昇給率
〈3次曲線を用いて補正を行った場合の予想昇給率〉
3次曲線を用いて補正を行った場合の予想昇給率
大森 最終給与比例制の場合は、定年時の最終給与が退職給付債務の計算に直結しますから、見込が変わると退職給付債務にも影響が出ることが割とあるんですね。ポイント制の退職金制度の場合は勤続中に毎年付与されるポイントの累積が退職金として支給されますし、給付算定式も違いますからそれに基づいて変わってくるのかなってところですが、予想昇給率だけで5%前後変わってくるって結構大きいですね。
太田

そうですね。計算ソフトではボタンを押すだけで予想昇給率が算定されますが、退職給付債務に大きな影響を与える可能性があるので、計算ソフトで算出した予想昇給率が妥当なのかどうかについては、きちんと確認しておく必要があると思います。

3-3.給与体系変更時

太田 給与体系を変更する際には、計算に用いる予想昇給率(算定対象や昇給のカーブ等)が合理的かどうか、再度判断する必要がありますね。
大森

給与体系の変更は、給与テーブルやポイントテーブルの変更の他、ポイント制の退職金制度を導入する際に影響してくると思います。JA等の退職金制度はある程度、同一県内のJA等であれば似ているのですが、給与比例制のJA等とポイント制のJA等とが混在している県もあります。今後、自己改革への取り組みとして人事制度の改訂を予定されている場合は、改定後の予想昇給率が適切なものか判断が必要となる点に留意が必要でしょう。

退職率に関しては、算定対象、退職事由の取扱い、異常退職時の取扱いなどに留意が必要です。

4-1.算定対象

太田

基本的には、予想昇給率と同じ考え方となります。

大森 より実態に合った退職率を作成するということになると、例えば1JAだと共済部門と管理部門の退職率って同じように算定して良いのか気になっていたんですよ。職員数が多ければ多い程、総合事業として様々な事業に携わっている職員がいるのに、全部等しく算定しても良いのかなと。
太田

就業規則が別に定められており、退職傾向も異なるという場合には、職種別に退職率を分けて算定しているケースもそれなりにありますね。一方で大森さんが今言ったように、例えば現場に近い職員と管理部門の職員とで退職率を分けるのかというのも、実務上の論点としてはあるのですが、そこの判断はなかなか難しいところですね。

大森 あくまで就業規則が分かれていたり、職種が分かれているといったことが確認できれば、退職率も実際の職種ごとに作成しようということですかね。
太田

そうですね。実際には部門間での異動もあり得るし、あとは人数規模も大事ですね。例えば、それぞれの部門で人数が500人ずつくらいいて、部門別に合理的に退職率を算定できるのであれば、分けて算定するっていう考えもあると思うけど、実態として現場の人数が多くて管理部門は少数といったケースでは、管理部門だけでは退職率を合理的に算定できないと思いますね。

4-2退職事由

太田

計算ソフトでは通常、自己都合退職だけを考慮して退職率を算定して、それ以外の会社都合退職(勧奨退職、選択定年等)については、計算上発生を見込んでいません。つまり、定年退職、死亡退職、自己都合退職だけを見込んで退職給付債務を計算しているケースがほとんどです。
ただし、会社都合による退職が定期的に発生して、今後もその発生が合理的に見込めるのであれば、会社都合による退職を考慮した上で退職率を算定し、退職給付債務を計算した方が良いと思います。

大森 計算ソフトによる計算結果を確認してみると、自己都合退職だけをベースに退職率を算定しているというケースも多いですね。
太田

JA等の場合は、選択定年制を実施しているケースが多いので、その場合は検討が必要ですね。通常、選択定年による退職は一定程度実績があり、また定年や自己都合退職の場合とは給付額の算定方法が異なる(特別な加算金があるケースが多い)ため、自己都合退職とは分けて退職率を算定する方が合理的かと思います。

〈自己都合退職の退職率〉
自己都合退職の退職率
〈選択定年の退職率〉
選択定年の退職率
大森 そもそも、選択定年以外の会社都合退職がなかったら、選択定年による退職を自己都合退職に含めて退職率を算定することもあるんですか?
太田

選択定年と自己都合退職において、同じ退職金が支給されるような制度の場合(選択定年による特別な加算金がなく、また自己都合により退職金が減額されないような制度の場合)、または一定年齢以上の自己都合退職が全員選択定年となっているようなケースでは、両者を合算して算定することもあります。
なお、テクニカルな話ですが、選択定年に関しては、退職の実績がそれなりにある場合には、算定した退職率を補正せず、実績(粗製退職率)をそのまま退職率として使用するケースが多いですね。

4-3.異常退職

太田

事業所や工場の閉鎖、早期退職制度の募集、その他の一時的な会社都合(勧奨退職や選択定年)等の異常な退職が発生した場合には、退職率を算定するにあたっては、異常な年度を除外するか、もしくは異常な退職者を除外するなどの検討が必要です。
例えば選択定年に関しては、数年前までは制度を実施していたが、現在は制度を廃止したというケースでは、過去の選択定年による退職者を除外して算定することが考えられます。

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