JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか?-1-

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JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか?-1-

農業協同組合や農業協同組合連合会(以下、JA等)は、2019年9月末以降に迎える事業年度末から公認会計士監査が導入されます。※負債が200億円以上のJA等を指します。

弊社ではJA向け退職給付債務計算サービス「ふるさとDBO」によりJA等に特化したサービスを提供していますが、お問い合わせ頂くJA等から下記のようなご質問をいただくことがあります。

なぜ、退職給付債務計算用のソフトを利用して計算した退職給付債務を、あらためて専門家に検証させる必要があるのか?

ソフトの使い方は十分理解できているのに、専門家に退職給付債務の計算を委託する必要性があるのか?

そこで、株式会社IICパートナーズにおいて、JA等の対応に特化した部門であるJA退職給付監査対策室の大森と太田へインタビューを行いました。

今回は「自社計算結果の専門家による検証は必要か?」というテーマですが、まず、どういう話か簡単に教えてください。

退職給付会計における“退職給付債務”に関する話です。決算で退職給付引当金を計上するためには退職給付債務を計算する必要があるのですが、一定規模以上のJA等ですと、この退職給付債務の値が公認会計士監査では課題になります。
*退職給付会計の仕組みについてはJA用にアレンジして、経済法令研究会から出版されている「JA金融法務2018年12月号」に寄稿しています。詳しい内容は「JA金融法務2018年12月号.pdf」をダウンロードしてご覧ください。

一定規模以上のJA等であれば、原則法という計算方法で退職給付債務を計算しなければなりません。かなりの数のJA等は、シンクタンク等から計算ソフトを購入して担当部署で退職給付債務の計算を行っています。この計算ソフトによってJA等内部で退職給付債務の計算を行うことを“自社計算”といいます。

自社計算はJA等内部で計算でき、利便性はあるのですが、それなりに課題があります。 その課題にどう対応したら良いかという話です。

では、その自社計算にはどんな課題があるのでしょうか。

JA等における自社計算体制の課題は以下の3つです。

1.計算ソフトによる計算結果は公認会計士監査をクリアできうるものか
2.監査法人へ退職給付会計の考え方に沿って計算結果を説明できるか
3.担当役員や監事が計算結果をJA等の決算に計上できると承認できるか

今日は私と同じくJAグループ出身の太田(年金数理人)にも有識者としての見解を話してもらおうと思っています。
2や3は内部統制に関する話ですので別の機会に話すとして、上記の「 1.計算ソフトによる計算結果は公認会計士監査をクリアできうるものか」を中心に話したいと思います。 「自社計算ソフトによる計算結果は公認会計士監査をクリアできるものか検証が必要」という話は、関係各所から話を聞いたことがあるJA等の担当者の方も多いと思いますので。
大森

誤解しているJA等も多いのですが、計算ソフトはあくまで“計算のツール”であって、計算結果が正しいということを保証されているものではありません。これは特定の販売元に限った話ではなくて、弊社も計算ソフトをサービスとして用意していますが、同じことが言えます。

計算ソフトのマニュアル等を確認頂くと、「数値の妥当性はお客様で判断してください」といった記載があると思います。つまり、計算ソフトから出力される結果が正しいということを、JA等は監査法人に説明できなければいけません。

しかし、退職給付債務の計算は、計算の考え方の理解、基礎率の算定、複雑な数理計算といくつもハードルがあります。現実的には担当部署で抱えきれる話ではないので、外部の専門家(年金数理人)に検証を依頼し、公認会計士監査に向けて今の体制で正しい計算が行われているかどうかについて、コンサルティングを受けて確認しておくことが望ましいと考えます。

外部の専門家による検証は、公認会計士監査にあたり、絶対に必要なのですか。

会計基準には、公認会計士監査にあたり、年金数理人の検証を受けなければいけないといった記述はなく、義務ではありません。絶対に自組合の計算結果は正しく、公認会計士監査でも会計監査人に十分に説明ができる場合は、年金数理人の検証ありきで考えなくとも良いと思います。ですので、「公認会計士監査を受けるから計算ソフトは使えない」という考えは間違いです。
民間企業や社会医療法人等の公認会計士監査では、会計監査人の判断で計算ソフトによる計算が監査法人に了承されることもそれなりにあります。また、これまでの全中監査では、多くのJA等が計算ソフトで計算した退職給付債務を決算に使用しているはずです。

ただ、2019年1月に農林水産省から発出された『公認会計士監査の着眼点とそれへの対応について』では、重要な勘定科目に関する監査の着眼点と対応とし、退職給付引当金に関して想定される監査手続きとして以下の5点が書かれています。

・JA等が採用した基礎率の妥当性を検討
・JA等が担当部署で計算ソフトにより退職給付債務を計算している場合は再計算を実施
・退職給付債務、年金資産について残高確認を実施
・退職給付債務の計算に用いたデータの正確性を検討
・期首から期末までの推移を検討し、適切に会計処理が行われていることを検討

1点目、2点目に関する質問や照会に独力で対応しきれる自信があるJA等は、今までどおり計算ソフトで対応されても良いかと思います。ただ、対応に時間を要すると監査時間が増加し、結果的に監査費用の増加につながってくると思います。

弊社では、このJA等特有の課題に対応する退職給付債務計算サービス「ふるさとDBO」を利用して頂いて、公認会計士監査の前にJA等が独力で監査法人からの質問や照会に対応できるか、現在の計算体制で公認会計士監査をクリアできそうかについて、事前に確認して頂くことをお勧めしています。

というところで、そろそろ太田も交えて具体的な話に入りたいところですが、そちらは次回「JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきか-2-」をご確認ください。
太田さんよろしくお願いします。インタビューするにも話がよりマニアックになってきますので、私がインタビューしつつされつつという形で進めていきます。おたのしみに。

 

> JAは退職給付債務の専門家による検証を受けるべきかシリーズをもっと見る

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