デュレーションの変動要因とは
<退職給付債務のデュレーション>の変動要因について<ざっくり>と考えてみます。
デュレーションアプローチを採用している場合、 <退職給付債務のデュレーション>は、割引率設定のための期間として用いられることもあり、非常に重要な指標かと思います。 どのようなことが要因で変動するのか?? 当コラムで考察してみます。
デュレーションは、
(1) 平均の支払期間を表す
(2) 金利感応度を表す
という性質を持ちます。
特に<退職給付債務のデュレーション>についていえば、
(1) 退職給付債務のキャッシュフローの平均の支払期間を表す ← ポイント
(2) 退職給付債務の割引率に対する感応度を表す
となります。
上で挙げた
ポイント=退職給付債務のキャッシュフローの平均の支払期間を表す
により、<退職給付債務のデュレーション>の変動要因を考えてみます。
個人データ
退職給付債務もデュレーションも個人データを基に算定されるので、これによる影響は当然あります。
例えば<ざっくり>したところで、
前回計算時と比較して、平均年齢や平均勤続年数が上昇(低下)、退職給付債務のキャッシュフローの平均の支払期間が短くなる(長くなる) → <退職給付債務のデュレーション>が短くなる(長くなる)と考えられます。
ただし個人データについては、人員構成や給付設計など複雑な要因がからむため(かつ一つ一つについて細かく要因分析するのは困難なため)、一概に「こうだ」と結論づけることは難しいところです。
計算基礎
各計算基礎も退職給付債務やデュレーションの算定結果に影響します。 やはり、人員構成や給付設計、期間帰属方法もからんでくるため一概には言えないところですが、特に影響を及ぼすポイントについて紹介します。
A.割引率
詳しい説明は省きますが、<退職給付債務のデュレーション>として広く用いられているマコーレー・デュレーションは、計算過程で、割引率による現価計算を行なっています。このため、退職給付債務同様、
割引率が上昇(低下) → <退職給付債務のデュレーション>が短くなる(長くなる) という関係にあります。
B.退職率
退職率が<退職給付債務のデュレーション>に及ぼす影響は大きいです。退職率は3~5年に一度見直す実務が多いと思いますが、見直し前後でデュレーションが大きく変動することがあります。
見直しにより、退職率が上昇(低下)、 退職給付債務のキャッシュフローの平均の支払期間が短くなる(長くなる) → <退職給付債務のデュレーション>が短くなる(長くなる)
死亡率にも同じ関係が言えますが、死亡率はもともと率自体がかなり小さいこともあり、見直し時に<退職給付債務のデュレーション>に与える影響は軽微です(但し、終身年金の場合は多少影響あり)。
C.一時金選択率
一時金選択率が<退職給付債務のデュレーション>に及ぼす影響は大きいです。
見直しにより、一時金選択率が上昇(低下) 、つまり、年金選択率が低下(上昇)、 退職給付債務のキャッシュフローの平均の支払期間が短くなる(長くなる) → <退職給付債務のデュレーション>が短くなる(長くなる)
特に支給期間が長い年金給付(20年確定年金や終身年金など)であれば、一時金選択率(年金選択率)の変動がデュレーションに与える影響はより大きくなります。
以上、<ざっくり>な考察で大変恐縮ですが、計算基礎についていえば、やはり、退職率・一時金選択率を見直した時に<退職給付債務のデュレーション>が大きく変動することがあります。ご留意ください。
※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。
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