【コンサルタントを直撃!第2弾】遠藤友和に聞いた!最近の退職給付会計業務サポートとは?

お客様の多くが期末決算、第一四半期の業務を終えられ、上期決算や次年度予算策定の時期までの情報収集、業務知識のインプットを進められる時期だと思います(夏休みも兼ねてちょっとひと休みといった経理部門の方も多いかもしれませんね)。
さて、本稿は昨年からサービス提供を開始しております退職給付会計アドバイザリーサービス「退職給付会計テンプレ3-SET」に関連し、弊社コンサルタントへお客様のサポートについてインタビューを行う第2弾ということで、遠藤にインタビューを行いました。(インタビュアー:大森祥弘)
遠藤さんがどんな仕事をしているか教えてください。
退職給付債務計算や会計処理報告書の作成など、退職給付会計全般に関してコンサルタントとしてお客様のサポートをしております。その他、社内の計算体制の改善プロジェクトのマネージャーとして、計算担当者にヒアリングを実施して課題を認識し、より良くする方策を練っています。
遠藤さんは私がIICパートナーズに入社する前からバリバリ、コンサルタントとして活躍されていますし、以前、ランチをご一緒した際には「大森さんは100社に営業して気付いたってウェビナーをこの前やったけど、私は100社位今期、計算結果に署名しているよ」といった笑い話がありましたね。 まさに“ベテラン”の1人ですね。 |
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これまでにお客様のサポートで苦労したことはありますか?
複雑な制度変更があった際の会計処理は、お客様が苦労されるだろうなと感じています。いわゆる大手の信託銀行や生命保険会社だと、会計処理のサポートツールは一応あるけれど、制度変更などの場合は特別な処理をしなければならず、対応できないというケースが結構あると思います。
IICの場合は制度変更でも、会計処理のサポートやレポーティングの作成まで対応するので、お客様に感謝して頂くことが多いです。最近だと確定拠出年金(DC)移行と給付の増額を同時に行い、会計上の終了処理と過去勤務費用の発生が同時に起こる事例がありました。
私自身はこのような場合の対応も複数経験していますが、お客様は制度変更自体が非常にレアで特別なイベントなので、戸惑いがあったようですね。サポートした際にはお客様から「すごく助かりました!」というお言葉をいただきました。
たしかに、一般の書店にあるような退職給付会計の書籍ではDC移行による制度終了の会計処理や制度変更する際に過去勤務費用をどうやって会計処理するかは、個々の出来事が起こった場合の参考の考え方と例は載っていますが、二つまとめて起こると個別性が強くなるのでお客様だけでは対応が難しそうですね。 | ![]() |
定年延長や派遣社員用の退職金制度を導入する動きが多くなってきている
遠藤さんの視点で、最近お客様からよく聞かれるなと感じていることはありますか?
最近では、定年延長や派遣社員用の退職金制度を導入する動きが多くなってきていると思います。あとは、監査対応が年々厳しくなってきている印象を受けています。
定年延長の場合だと、退職一時金に加え、確定給付企業年金(DB)を導入している場合には、DBの勤続年数の通算といった論点のご相談をいただくことが多いです。
勤続年数の通算の例だと、勤続年数を算出する始点は入社日ですが、終点をいつまでとするかというところですね。

定年を65歳に延長しても、勤続年数のカウントを60歳までの期間として退職金を計算した後、DBを65歳まで繰り下げできるようにしておく場合もあるし、新定年の65歳まで勤続年数をカウントする場合もあります。 このあたりが退職給付債務計算に影響して、お客様のデータ作成作業にも関連してくるので、よくご相談いただきますね。
派遣社員の退職金制度への導入に伴う退職給付債務計算についても教えてください。
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正社員の退職給付債務計算と違い、派遣社員特有といいますか、計算基礎率をどう設定し合理的に評価したら良いかといったことを通常の退職給付債務計算よりも考える必要があるように見受けています。計算方法などを考える苦労が多いかと思いますが…。 |
そうですね。派遣社員の退職給付債務計算の場合は、計算基礎が特殊です。普段だと最終年齢は定年年齢60歳として当たり前のように設定していますが、派遣社員の場合は本当に60歳でいいのか?と悩んだり、退職率の形状が正社員と全然違う形状になった時に、どうしようかと悩みますね。
そうやって、悩むことで新しい発見があったりします。より良い退職給付債務の評価を行うために、退職率や計算基礎など、そもそも何がいいのだろう?みたいなところをコンサルタント同士で話し合うことは多いです。
IICは比較的柔軟に、評価方法を考えていると思っています。例えば、割引率のイールドカーブ直接アプローチは、他社では嫌がるところもあるけどIICは普通にどんどんやっていきますしね(笑)。
監査対応についてはいかがでしょうか?
監査法人からお客様への質問が、以前は数個でしたが、今は十数個あるような状況です。それに対してはお客様とIICで分担しながら回答を作るのですが、年々対応が難しくなってきているように感じます。定型のよくある質問もありますが、個別で深い質問もあって回答に苦慮することもあります。
弊社のお客様ですと、自然と業務を進めるうえで体制整備はある程度できてしまうのですが、他社から弊社に切り替えて頂く際の初回業務(乗り換え先の初回計算、会計処理も報告)ではお客様の手順・要領といった業務フロー、会計処理ツール(お客様のExcel)が結構ボロボロなケースも見受けられますよね。 | ![]() |
これまで乗り換えの初回計算対応において、改善できた点や苦労された点を教えてください。

会計の未認識数理計算上の差異や、未認識の過去勤務費用まわりが大変でした。例えば、償却年数が今10年だったはずなのに過去のものは違う償却年数だったりとか、謎のコメントがある未認識の金額があったりとか、ワークシートの算式が間違っていたなどは本当によくあります。
どういう経緯でそういう処理をしているのかを詳しくヒアリングしますが、担当者が変わってしまっていて、事情を知っている方がいらっしゃらないとなると、整理するのに時間がかかるので大変ですね。事情や手順も文書化もされてないことが多いです。
そのあたりをIICに任せていただくと、過去の事情も綺麗に整理して償却年数や残高がパッと分かるようにご報告するので、お客様側の担当者が変わっても引継ぎが楽になると思います。
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新規にお問い合わせ頂いたお客様にも退職給付債務の計算前提を伺うのですが、自社が採用している期間帰属方法や割引率の設定方法をすぐに答えられるお客様はまずいません。 また、遠藤さんが話に出された「未認識数理計算上の差異の償却年数について、平均残存勤務時間が短くなったら償却年数を見直さなければいけない」話をほとんどの企業が知りません。お客様から計算委託先に依頼するにあたって、委託元であるお客様が整えておくべき情報っていうのがほとんどのケースで整えられていないですね。 |
今後、より強化していきたいサポートや、挑戦したいことがあれば教えてください。
私はIICに転職する時に、退職給付のコンサルタントとしてこれ一本で飯を食っていく気持ちで転職して来ました。それに向けて、アクチュアリー正会員、年金数理人といった資格も取って頑張って来たので、退職給付制度や退職給付会計に関して、専門家としてよりプロフェッショナルというものを追い求めていきたいですね。
あっ、でも年金数理人っていうと「すごく堅くて偉い」、みたいなイメージを持っている人が結構多いような気がしているので、なるべく堅苦しくない、どこにでもいる隣のおじさんぐらいの、親しみやすい年金数理人として皆さんにサービス提供できればと思っております。
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株式会社IICパートナーズ 数理コンサルティング第2部 日本アクチュアリー会正会員・年金数理人 遠藤 友和 |
千葉⼤学大学院自然科学研究科修了。 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険相互会社)に入社。適格退職年金および確定給付企業年金の年金数理計算等に携わる。その後、株式会社IICパートナーズにコンサルタントとして参画。 |