上場申請を予定している企業は早めに退職給付会計の適用の確認をしよう

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上場申請を予定している企業は早めに退職給付会計の適用の確認をしよう

公開日:2021年1月29日

 

「上場申請の準備をしていて、過年度の退職給付引当金の遡及修正が必要だと監査法人から指摘された。退職給付債務の計算委託先を探している」といったお問合せをいただくことがあります。

本コラムでは、退職給付会計の専門家の立場から、上場申請をすることが決まった際にご確認いただきたいポイントを解説します。

上場する前に知っておくこと


上場申請にあたり、証券取引所から審査のため様々な書類の提出が求められます。提出する書類や内容は各証券会社のウェブサイトで確認することができます。その中でも「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」は中核をなす重要な書類です。投資家への企業情報の開示を目的とした書類であり、記載する直前2期間(監査対象期間)の財務諸表等については、監査法人の監査報告書(監査証明)が必要です。監査対象期間に入る前から監査法人等とアドバイザリー契約を締結して、課題の洗い出しを行い、対応していくことになりますが、これまで会計監査を受けてない企業の場合、採用していた会計処理と上場企業向けの会計ルール(会計基準)との違いから、退職給付会計が論点となることがあります。

 

遡及修正が必要なケースとは?


退職給付会計が論点となるのは、退職金制度として退職一時金制度と確定給付企業年金制度(以下まとめて、確定給付制度)を実施している場合です。退職給付会計の目的は、P/Lに計上する退職給付費用の計算と、B/Sに計上する退職給付引当金の計算を行い、企業の財務諸表に適切に表示することです。確定給付制度の場合、これらの計算方法として、簡便法と原則法というものがあります。確定給付制度の対象となる従業員が300名を超えるまでは簡便法を用いることが認められていますが、300名を超えると原則として数理計算による方法(原則法)を適用する必要があります。

しかし、非上場企業において、300名を超えていて本来は原則法で計算すべきであるのに、簡便法で計上している企業や、そもそも退職給付引当金を簡便法でも計上していない企業も珍しくありません。税務上は退職給付引当金を計上しても損金に算入されないこともあり、法人税法をベースとした会計処理を行っている企業にこのような例が見られるようです。そういった状況で上場申請に向けて会計監査を受けるにあたって、本来の計算方法で計上をするべきとの指摘が入り、遡及修正が必要になるケースがあります。

 

見直しイメージ

 

早めに確認しておくことをおすすめします


退職給付債務計算を外部の計算機関に委託する場合、結果が分かるまでに少なくとも1か月はかかります。遡及での修正となれば、複数時点における計算が必要になるため、計算機関の作業の他、企業でのデータ作成の準備でさらに時間を要します。上場申請を予定している企業のご担当者は、自社で退職給付引当金が計上されているか、どう計算されているか確認し、早めに監査法人や計算機関に相談をしましょう。

また、上場時に従業員が300名を超えていなくても、今後の事業・人員の拡大を予定されているのであれば、原則法の適用を見据えて退職給付債務がどのくらいになるのか一度試算することをおすすめします。

 

その他に必要なこと


上場申請の過程では、監査法人や証券会社から社内規程の整備がされているかといった点もチェックされます。上場企業の場合、多くの株主が存在し、法令を遵守しながら会社の業務を行っていくことが求められるため、社内規程は時代の変化、企業の変化に合わせて改正していかなければなりません。退職金規程も内容と運用状況に相違がないか確認し、相違がある場合には改正することで上場申請前に内部管理体制を整備しましょう。

 

おわりに

退職給付会計は専門用語が多く、会計処理も複雑で敷居が高い分野です。限られた期間で上場申請をスムーズに進めるために、計算を外部の計算機関へ委託する場合は監査法人への説明や会計処理のアドバイスなどサポートが充実している計算委託先を選ぶことをおすすめします。

 

※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。

この記事を書いた人
佐々木 杏珠
事業推進部

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