退職給付債務計算の委託先を見直しやすいタイミング

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退職給付債務計算の委託先を見直しやすいタイミング

公開日:2020年11月30日

 

「退職給付会計業務を改善したい!」と考えているのであれば、退職給付債務計算の委託先を変更することも選択肢の一つです。しかし、委託先は頻繁に変更するものではないので、企業の担当者が見直したいと思っていても、きっかけが見つからないのではないでしょうか。

本コラムでは、委託先を見直しやすいタイミングについてご紹介します。紹介するタイミングで他の委託先を探してみると、これまで感じていた退職給付会計業務の課題を解決できるかもしれません。

見直しの必要性は理解されづらい

 

退職給付債務計算に関わらず、企業において委託先を見直す場合、その必要性を社内で理解してもらう必要があります。退職給付債務計算の場合、企業の担当者がサービス内容に何らかの不満を感じていたり、退職給付会計業務に課題を感じていたりしても、計算結果を入手できている以上、委託先を見直す必要性を理解してもらうのは難しいかもしれません。しかし、これからご紹介するタイミングであれば、委託の内容や料金の変更を伴うため、見直しを社内で提案しやすくなります。

 

 

見直しやすいタイミング

 

それでは具体的にどのようなタイミングがあるか、紹介していきます。

1.退職金制度の変更

委託先を見直すきっかけとして比較的多いのが退職金制度の変更です。「現在の委託先に制度変更計算の見積もりをお願いしたが、想定していたよりも高かった」というように料金がきっかけで委託先を見直すことが多いようです。

退職金の水準が変わるような制度変更を行うときには、「過去勤務費用」というものを計上する必要があり、旧制度と新制度の両方の退職給付債務の計算が必要となります。追加計算の料金は、従来の料金に新制度分として丸まる1回分の料金が加算になったり、それよりも少し割り引いた料金が加算されたり、委託先によって違いがあります。

なお、このタイミングでの委託先の変更は、旧制度の計算を現在の委託先に依頼し、新制度の計算は新しい委託先に依頼することが一般的です。この場合、委託先の変更による退職給付債務の差異(※)は過去勤務費用に含まれることになります。
※退職給付債務の計算結果は委託先が変わると、同じデータを使用したとしても退職給付債務に2~3%程度の差異が発生します。これは計算システムが各社で異なることが主な要因です。

制度変更の場合、企業の担当者には会計上の影響に関する社内外の説明が求められるので、質問への回答が早く、説明が分かりやすい委託先を選ぶのがおすすめです。

 

2.確定給付企業年金の終了

確定給付企業年金を終了し、会社から支払う退職金だけ退職給付債務の計算が必要な場合です。こちらも退職金制度の変更の1つの形ですが、委託先という観点で見直しやすい事情があるのでご紹介します。

確定給付企業年金を実施している場合、年金制度の受託機関が管理している加入者データ等を用いて、退職給付債務計算を実施することができるので、受託機関に委託した後に、委託先を見直そうと考えることは少ないようです。

しかし、確定給付企業年金から確定拠出年金に移行するなどして、確定給付企業年金を終了した場合、引き続き同じ受託機関に退職給付債務計算を委託するとしても従業員データを提供する必要が生じます。この点では、委託先を変更しても手間は大きく変わらないため、委託先を変更しやすくなるわけです。金融機関以外のコンサルティング会社やシンクタンクにはそれぞれサービスに特徴がありますので、活用すればこれまでの退職給付会計業務の課題の解消につながるかもしれません。

 

3.M&A

企業が買収するあるいは買収される場合も、見直しの良いタイミングとなります。グループ企業の委託先を1つにまとめると、計算方針の統一や企業再編の対応など、グループでの退職給付会計のマネジメントが可能になるというメリットがあります。委託先もグループ各社の状況を踏まえて、企業の連結担当者からの質問に回答したり、改善を提案したりするなど、サポートできる範囲が広がります。

しかし、グループ企業でも委託先が統一されていないことも多いのが実情です。経緯は様々ですが、グループ企業の一員になる前の委託先を引き続き利用しているケースが多いようです。また、年金制度がある会社は受託機関に委託しているが、年金制度がない会社は小回りの利くコンサルティング会社に委託していることも多いようです。

グループ企業で委託先を統一すると、各社それぞれが個別契約で委託するよりも割安な料金が提示されるケースもありますので、委託先がバラバラである場合には、委託先各社にグループとして委託する場合のサービスを提案してもらって、比較してみるといいかもしれません。

 

4.IFRSの任意適用

IFRSを適用する場合、日本基準での計算方針にもよりますが、日本基準の数値をそのまま使用できるケースが多いです。一方、開示に用いる数値として感応度分析や再測定の内訳(数理計算上の差異の分析)、アセットシーリングといった諸数値の計算を追加で依頼することが必要になります。

また、日本基準では従業員が300名未満であれば、簡便的な計算方法(簡便法)を適用することが認められますが、IFRSでは従業員の人数に関係なく原則的な計算方法(原則法)の適用が求められます。そのため簡便法を適用しているグループ子会社があったとしても、原則法での計算を依頼することになるかもしれません。委託先によっては、従業員数の少ない子会社の計算を新たに引き受けるのが難しいという場合もあるようです。その場合には、委託先をグループ内で統一できない可能性が高くなりますが、少なくとも新たに原則法の計算が必要になった子会社の委託先は一つにまとめ、サービスの品質を確認しつつ、将来的に親会社を含めて一つの委託先に集約することが望ましいといえます。

おわりに

退職給付債務計算は専門家に委託するというサービスの性質上、サービスを受ける側は計算結果を入手することにのみ価値を見出しがちですが、計算結果を入手することは企業の退職給付会計業務の一部であり、計算結果の説明を含め、委託先から得られるサポートも重要になります。委託先に何らかの不満を感じていて、見直しのきっかけが見つからないと思っている企業の担当者は、ご紹介したタイミングで委託先の見直しを社内で提案してみてはいかがでしょうか。

 

※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。

辻イメージ この記事を書いた人

日本アクチュアリー会準会員 / 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
辻󠄀  傑司

世論調査の専門機関にて実査の管理・監査業務に従事した後、2009年IICパートナーズに入社。
退職給付会計基準の改正を始めとして、原則法移行やIFRS導入等、企業の財務諸表に大きな影響を与える会計処理を多数経験。退職給付債務計算の開始当初からサポートしているクライアントも多い。年間約80社の退職給付債務計算に携わっている。

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