一般社団法人全国労働金庫協会様

ろうきんでは、2002年度からIICパートナーズに 退職給付債務の計算を依頼しています。アクチュアリーから 直接アドバイスを受けられるので、退職金制度や 会計基準の変更にも、安心して取り組むことができました
左/一般社団法人全国労働金庫協会 経営企画部 次長 小船 千里 氏
右/一般社団法人全国労働金庫協会 経営企画部 調査役 奈良 環 氏
目次
協同組織の福祉金融機関として運営されている全国13の労働金庫および3つの中央機関・団体(以下、ろうきん)では、一般社団法人全国労働金庫協会(以下、労金協会)を窓口として、2002年度よりIICパートナーズの退職給付債務計算(以下、PBO計算)を利用しています。その経緯と利用状況について、労金協会の小船氏と奈良氏に詳しく伺いました。

法人情報 | 一般社団法人全国労働金庫協会 http://all.rokin.or.jp/ |
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事業内容 | 労働金庫の組織、事業及び経営の指導、労働金庫の役職員の養成及び教育、労働金庫相互の連絡及び調整等 |
所在地 | 東京都千代田区神田駿河台2丁目5番15号 |
人員数 | 88人(2012年7月1日現在) |
1951年、全国の労働金庫の中央機関として、労働金庫の健全な発達を図り、勤労大衆の福祉を増進することを目的に設立。 労働金庫業界全体の政策・課題について、調査・研究・方針化し、提案・調整ならびに指導・連絡などを行っている。 |
IICパートナーズのPBO計算サービスを2002年度より継続して利用
PBO計算サービスの利用状況を教えてください。
ろうきんでは、2002年度より毎年継続してPBO計算をIICパートナーズ(以下、IICP)に依頼しています。
各労働金庫・団体はPBOを計算し、それぞれが契約している監査法人の会計監査を受けていますが、全国のろうきんは統一の退職一時金制度を持ち、統一の年金基金制度に加盟していることから、PBO計算については労金協会が窓口として対応しています。
10年間継続してIICPにPBOの計算を依頼しているということですが、他社のサービスなどを利用しようと考えたことはありましたか。
いくつか提案を受けることもありますが、計算業務の委託先を変えようと思ったことはありません。IICPには私どもの複雑な退職給付制度を理解してもらっていますし、単に計算するだけでなく、サポートも充実していますので、安心して業務を任せることができています。
継続利用の理由と検討の経緯
専門家からの情報提供と戦略的なアドバイスにより、会計基準や様々な制度変更に安心して取り組める
「サポートが充実している」とは、具体的にどういった所でしょうか。
私どもの要望や疑問点に対して「それは対応できない」といった説明や言い訳をされたことはありません。また、専門家だからといって相談しにくいわけではなく、判断に迷うことや不安に思うことがあったときに相談すると真摯に対応してもらえます。
計算結果についても、単に結果の数字を示すだけでなく、専門家としての立場から、私どもが納得するまで直接説明してもらえます。
また、会計基準や制度の変更がある場合には、私どもの状況を理解したうえで、戦略的なアドバイスをもらえるので、安心して取り組むことができます。

専門家によるサポートのメリットは大きいのでしょうか。
退職給付会計に関する、専門家であるアクチュアリーからのアドバイスや情報提供は、経営的な判断を正しく行うために必須のものと考えています。
特に2003年7月に行った代行返上(将来分)がそうでした。私どもでも退職給付会計がスタートした2000年頃から、経営リスクという観点で代行返上を意識していました。しかし、具体的な金額の影響がわからず、会計処理に関する情報収集とあわせて、どのように進めるかが課題となっていました。
そこで、2003年3月の決算のデータをもとにIICPに計算を依頼したところ、迅速に数字や影響を把握でき、スムーズに内部検討を進めることができました。また、代行返上時に発生する差額に関する会計処理では各労働金庫・団体によって対応が分かれましたが、労働金庫・団体ごとの会計処理に合わせてしっかりとフォローしていただき、とても助かりました。
その他にも企業年金基金、退職一時金の制度変更に伴う対応や、各労働金庫・団体の監査人との意見調整や数理計算の専門的説明、退職給付会計基準の改正に伴う対応など10年以上のお付き合いの中では様々な課題に直面してきましたが、その都度適切にサポートしていただきました。
単にPBO計算をするだけではなく、私どもの立場に立って、関連する問題や課題に一緒に取り組んでもらえるので、IICPのサポートを受けるメリットは大きいと考えています。
他の委託先でのPBO計算で抱えていた課題を解決したいと考えた
IICPのPBO計算サービスを検討した経緯を教えてください。
ろうきんでは2000年度から退職給付会計基準を適用しました。当初はPBO計算をIICPではなく、他の委託先に依頼していましたが、次のような課題がありました。
他の委託先での計算における主な課題
- 質問事項の対応に時間がかかり、有効な回答が得られないケースもある
- 基礎率や職員情報も前年度の計数等を利用した転がし計算
- 計算委託の範囲は退職給付債務と勤務費用のみのため、数理差異の償却分を含めた退職給付費用は自ら計算する必要があり、会計処理のための負担が大きい
- 年金数理人の署名入りの報告書が各労働金庫・団体別には作成されない
こうした課題についてIICPに相談したところ、PBO計算サービスの提案を受け、検討することとなりました。
採用の理由と結果
専門家による説明やアドバイスの適切さと、関連業務の効率化や担当者の負担軽減が図れると判断
IICPのPBO計算サービスを採用した理由を教えてください。
以下の点から、IICPに依頼することで退職給付会計業務に関する課題を解決できるのではないかと考えました。
専門家が直接対応し、適切な説明やアドバイスが受けられる
IICPは説明やアドバイスも適切で、当初から専門家集団という印象を持ちました。営業担当者を経由せずアクチュアリーの資格を持った専門家に直接質問し、サポートしてもらえることは大きな魅力でした。

決算日基準で計算するため、転がし計算が必要ない
スピーディーに決算日基準のデータで計算した結果を出してもらえ、転がし計算が不要となるということでした。したがって、より精緻な計算結果を受け取ることができるとともに、関連業務の効率化も図れると考えました。
会計処理、監査対応の負担軽減
そのまま会計処理に使える数字を報告書の形で受け取ることができ、退職給付費用の計算のために数字を加工したり計算したりする作業負荷が大幅に軽減できそうでした。また、アクチュアリーの署名がある報告書に退職給付費用とその内訳が表示されていれば、自分たちで数字を加工、計算する場合より、監査対応を安心してスムーズに進められるのではないかと考えました。
各労働金庫・団体別、合計16の計算報告書の作成への柔軟な対応
各労働金庫・団体はそれぞれ個別に監査を受けるため、各労働金庫・団体ごと、合計16の計算報告書を準備する必要があります。IICPは各労働金庫・団体別に報告書を作成するという私どものニーズに対しても柔軟に対応していただけるとのことでしたので、その点にも魅力を感じました。
業務の効率化、負担軽減を実現でき、期待以上の効果
実際にPBO計算を利用した結果を教えてください。
ろうきんの決算は3月末ですので、1年の中でも最も退職給付債務の計算が集中する忙しい時期、しかも計16の計算報告書を作成しなければならないので大変だと思うのですが、毎年タイトなスケジュールにもかかわらずよく対応していただいており、報告内容も正確でわかりやすいので効率的に業務を進めることができています。
また基礎率なども直近の数値を利用することができるようになったことから、転がし計算時の補正作業等に苦慮することもなくなりましたし、個人別の計算結果や、会計処理にそのまま利用できる数字を記載した報告書により、業務全体の負担軽減も図ることができました。
専門家がバックについているという安心感をもって業務を進められますし、期待していた以上の効果が得られていると感じています。
サービスの評価と今後の期待
改正会計基準への対応をはじめ、専門家ならではのスピーディーな情報提供や適切なアドバイスを引続き期待
改正会計基準への対応状況を教えてください。
改正会計基準は、ろうきんにとっては自己資本比率規制とも関わるため、影響度の大きな変更となります。IICPがキャッチアップしていた情報と退職給付IFRS支援サービス「SIP」による計算結果をもとに説明会を開いてもらい、単体財務諸表への影響など、早い時期から金額面も含めて戦略的に判断できました。
将来的に財務的な不確定要素は少しでも減らしておきたいため、IICPのサポートを受けながら、前倒しで適用する方向で検討を進めています。検討に際して必要な監査法人との調整も、アクチュアリーの緊密なバックアップによりスムーズに進められるので助かっています。
IICPへの期待があればお聞かせください。
担当アクチュアリーの瀧さんとは10年来のお付き合いになりますが、本当に感謝しています。いつも直接やり取りをさせていただき、質問への丁寧な回答、退職給付会計に関するスピーディーな情報提供、私どもが見落とし・見逃してしまった問題点や確認事項に対しての適切なアドバイスをいただいております。
同じアクチュアリーの方に継続して担当していただくことで、私どもの情報をしっかり把握していただいていることを前提にできますので、スムーズに業務を進められるというメリットもあります。
退職給付会計は、内容の専門性もさることながら、財務諸表に与える影響額を感覚的に見積もることの困難さ・危うさというものを感じる分野です。また、退職給付会計で「どのように対応することが最もよいのだろう」という問題にぶつかったとき、会計担当者だけでは合理的な解決にたどり着くことがなかなか難しいケースも多くあります。
今回の改正基準対応でも、合理的な影響額の計算と高い見識を持ったアクチュアリーのアドバイスは、対応方針の決定だけではなく、その判断についての説明責任を果たすうえで必須のものでした。
今後もIICPには、正確な計算サービスの提供はもちろんのこと、これまでと変わらない高レベルの専門性を実感できるサポートを期待しています。
※取材日時:2013年2月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。
※取材制作:カスタマワイズ