大量退職の会計処理と退職給付債務(DBO)計算の実務等

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大量退職の会計処理と退職給付債務(DBO)計算の実務等

公開日:2016年5月11日

(1)日本基準

日本基準では、大量退職に関して企業会計基準適用指針第1号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」第8項において、以下のように規定されています。

8. 「大量退職」とは、工場の閉鎖や営業の停止等により、従業員が予定より早期に退職する場合であって、退職給付制度を構成する相当数の従業員が一時に退職した結果、相当程度の退職給付債務が減少する場合をいう。このような大量退職における退職給付の支払等を伴う減少部分の会計処理については、退職給付制度の一部終了に準ずる(第11項(8)、第25 項参照)。

通常の退職の場合は、退職者に係る退職給付債務(DBO)と給付支払額との差額は数理計算上の差異として損益の遅延認識が可能ですが、通常の退職率をはるかに超える大量退職があった場合には、退職給付制度の終了に準じて、大量退職部分のDBOの消滅(以下のAとBの合計)を一時の損益(特別損益)として認識する必要があります。

A.消滅するDBO(大量退職前のDBO-大量退職後のDBO)と給付支払額との差額
B.未認識過去勤務費用、未認識数理計算上の差異の未処理額のうち、消滅部分に対応する金額(消滅時点におけるDBOの比率等により算定)

なお、大量退職に該当するかどうかの判断基準としては、「DBOが30%程度減少するかどうか」(適用指針第1号第25項参照)が1つの目安になります。ただし、「30%」というのは絶対的な基準ではなく、企業の実態に応じて判断すべきものとされていますので、事前に会計士に確認しておくのが良いと思われます。

 

(2)IFRS

IFRSでは、日本基準のように大量退職に関する直接の規定はありませんが、IAS第19号において、以下の規定があります。

102 過去勤務費用は、制度改訂又は縮小により生じた確定給付制度債務の現在価値の変動である。

105 縮小は、企業が制度の対象となる従業員数を大幅に削減する場合に発生する。縮小は、工場の閉鎖、事業の廃止、又は制度の終了若しくは停止などの独立した事象から生じることがある。

109 清算損益とは、以下の差額である。
(a) 清算される確定給付制度債務の現在価値(清算日現在で算定)
(b) 清算価格(移転される制度資産、及び清算に関連して企業が直接行うすべての支払を含む)

111 清算は、確定給付制度の下で支給する給付の一部又はすべてについて、すべての追加的な法的債務又は推定的債務を解消する取引を企業が行う時に発生する。(以下省略)

IFRSでは、上記のとおり「縮小」「清算」という概念があり、大量退職により従業員数が大幅に削減される場合には「縮小」、当該退職者に対して給付の一部又は全てを一時金で支払う場合には「清算」が発生します(退職一時金制度の場合は、通常は縮小と清算の両方が発生するものと思われます。また企業年金制度の場合は、全額年金受給した方に対しては縮小のみが発生し、それ以外の方に対しては縮小と清算の両方が発生するものと思われます)。縮小が発生した場合は以下のAの金額、縮小と清算の両方が発生した場合は以下のBの金額を一時の損益(純損益)として認識する必要があります。

A.DBOの変動額(縮小前のDBO-縮小後のDBO)
B.清算されるDBO(縮小前のDBO-縮小後のDBO)と給付支払額との差額

なお、IFRSでは従業員数の大幅な削減に関して縮小に該当するかどうかの具体的な判断基準が示されていませんので、従業員数の削減が重要であるかどうかを踏まえながら、企業の実態に応じて判断します(日本基準の場合と同様、事前に会計士に確認しておくのが良いと思われます)。

 

(1)計算基礎(割引率、退職率、予想昇給率等)

消滅するDBOは、大量退職前の計算基礎に基づいて計算したDBOと、大量退職後の計算基礎に基づいて計算したDBOの差額として算定します。

大量退職前の計算基礎は、IFRSでは当該時点の仮定を用いることが求められていますが、日本基準では明確な定めがありません。日本基準における計算基礎については、前期末のDBO計算に用いた計算基礎を使用するという考え方もありますが、大量退職によるDBOの変動額を把握するという観点からは、当該時点において見直すのが合理的ではないかと思います。ただし、退職率や予想昇給率については、実際には前期末のDBO計算に用いた率を使用するケースも多いようです。

大量退職後の計算基礎は、日本基準及びIFRSどちらも、当該時点において大量退職者を除いて再算定する必要があります(日本基準の割引率は重要性基準を勘案)。ただし、大量退職があった場合、通常当該退職者は退職率の算定には反映させない(自己都合退職には含めない)ため、実務上退職率は見直さないケースが多いです。

 

(2)期中に大量退職があった場合のDBO計算等

期中に大量退職があった場合、消滅するDBOを算定するためにDBO計算が必要になりますが、実務上は以下の3通りの計算方法が考えられます。

a.大量退職時点において数理計算する
b.期首又は期末時点において数理計算する
c.期首時点のDBO及び当期の勤務費用・利息費用を用いて転がし計算する

a.の方法が原則ではありますが、期中で数理計算を行う場合は通常は計算費用が追加で発生すること、及び大量退職が一時点で生じるとは限らないことから、実務上はc.の方法が比較的多く用いられています。

なお、期中に大量退職があった場合、当該大量退職後の期間に係る退職給付費用(勤務費用、利息費用等)は、通常は大量退職者を除いて算定し直します。上記c.の方法でDBO計算を行った場合であれば、例えば大量退職後の期間に係る勤務費用は、当該退職者に係る勤務費用を控除して算定します。

 

(3)平均残存勤務期間が短縮又は延長された場合

日本基準で数理計算上の差異の費用処理年数として、「(a)平均残存勤務期間とする方法」又は「(b)平均残存勤務期間以内の一定の年数とする方法」を採用している場合、大量退職により平均残存勤務期間が短縮又は延長され、従来の費用処理年数を下回る又は上回ることとなったときは、費用処理年数を短縮又は延長する必要があります((b)の方法は短縮のみ)。

 

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