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年金資産運用プロセスのDoフェーズの「運用受託機関の選任」および「運用ガイドラインの提示」について

今回のコラムでは、年金資産運用プロセスのDoフェーズの「運用受託機関の選任」および「運用ガイドラインの提示」について解説致します。
※このコラムは、規約型確定給付企業年金(以下、規約型DB)の年金資産運用責任者および担当者様向けです。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 村上 慶
            著者プロフィール
掲載日:2018年2月22日

写真:村上慶

解説

前回のコラムでは、年金資産運用プロセスのPlanフェーズの「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」について解説致しましたが、今回のコラムでは、年金資産運用プロセスのDoフェーズの「運用受託機関の選任」および「運用ガイドラインの提示」について解説致します。

 年金資産運用プロセス(PDCA)
対応する
DBガイドラインの
条項
 フェーズ タスク 
Plan 運用基本方針の策定
政策アセットミックス(政策的資産構成割合)の策定
資産毎の運用内容・運用期間構成の策定
3(4)
3(4)

3(2)
Do
運用受託機関の選任
運用ガイドラインの提示

3(5)①
3(5)②
Check 運用資産全体の状況確認
個別運用商品の状況確認

3(5)②,3(5)③
Action 時価資産構成比と基本資産配分の乖離の調整
運用内容・運用期間構成の見直し
政策アセットミックス見直し
3(5)③

それでは、「運用受託機関の選任」のプロセスについて順に解説をしてまいります。

1.運用機関の選任

運用機関の選任は、前回のコラムでご紹介した「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」で決定された下記ワークシートの内容に対して、実際に運用を委託する機関の選任を行うことです(下記ワークシートの黄色いセルの部分)。

政策アセットミックス ベンチマーク 運用内容・運用機関構成  
資産区分 構成
比率
運用スタイル 運用手法 資産内
構成比率
 運用機関





国内
債券
40% 標準 パッシブ インデックス連動型 60% ○○信託 
アクティブ 金利予測型 20% △△信託
アクティブ 事業債重視型 20% □□信託
国内
株式
12%
標準 パッシブ インデックス連動型 60% ○○信託
アクティブ バリュー型 20% △△信託
最小分散 パッシブ インデックス連動型 20% ○○信託
外国
債券
8%
標準 アクティブ 金利予測型 80% △△信託
ヘッジ付 パッシブ インデックス連動型 20% ○○信託
外国
株式
12%
標準 アクティブ インデックス連動型 60% ○○信託
アクティブ グロース型 20% A投資顧問
最小分散 パッシブ インデックス連動型 20% ○○信託
一般勘定 16% 保証利率   100% ○○生保
オルタナティブ
投資
10% 短期金利 プライベート・エクイティ 20% B投資顧問
不動産関連投資 40% C投資顧問
ヘッジファンド 40% D投資顧問
短期資金 2% 短期金利   100%  
合計 100%    

2.運用機関

法令で、年金資産運用を受託できる運用機関は、信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社に限定されております。

規約型DBで採用可能な運用機関及び資産運用形態は、下記の通りです。

運用
機関
契約形態 運用形態 特徴


信託
銀行
年金信託 ・単独運用(注1)と合同運用
 (注2)の両方が可能
➢運用指針(ガイドライン)
 の提示が可能
・運用実績がそのままファンド
 に帰属する実績配当
➢相場環境によって収益が変動
B
生命
保険
会社
一般勘定  ・他の保険資産と合わせて
 合同運用
➢運用指針の提示は不可能
・毎年度決定される配当基準に
 よって配当
➢一定の利回り保証あり
A
第一特約
(総合口)
・一般勘定から分離された企業
 年金専用の一本の合同運用口
➢一般勘定からの振替は企業
 年金が決定
➢運用指針の提示が可能
➢資産配分割合の指定は不可能
・運用実績がそのままファンドに
 帰属する実績配当
➢利回り保証は無い
➢相場環境によって収益が変動
A
第一特約
(資産別)
・一般勘定から分離された企業
 年金専用の一本の合同運用口
➢一般勘定からの振替は企業年金
 が決定
➢運用指針の提示が可能
➢資産配分割合の指定は可能
同上 C
第二特約 ・個別企業年金ごとの単独運用
➢運用指針の提示が可能
同上 C,D
投資
顧問
会社
投資一任 ・単独運用と合同運用の両方が
 可能
➢運用指針の提示が可能
➢年金資産の管理のため信託
 銀行と特定信託契約を締結
 する必要がある
・運用実績がそのままファンドに
 帰属する実績配当
​➢相場環境によって収益が変動
C,D

(注1)当該事業主等のみの資産によって、有価証券等の購入・売却が行われる直接投資方法
(注2)複数の事業主等の資産を合同で運用する投資方法
(注3)適合性は下記の通り分類

分類 内容
A 年金資産規模、運用体制にかかわらず採用可
B 一定以上の年金資産規模(5億円以上)必要
C 一定以上の年金資産規模(個別ファンドで0.5億円~10億円以上)必要
D 高度な運用体制が必要

3.運用機関の選任プロセス

上記の運用機関から運用機関の選任にあたっては、4つのP(Polciy、People、Process、Performance )を評価して選任するのが標準的な作業です。

DBガイドラインに定められた運用機関の選任プロセスでの留意事項を、4つのPに沿って整理すると下記の通りとなります。

項目 内容
Policy 投資方針
内容の明瞭性、合理性、一貫性
People 組織及び人材
意思決定の流れや責任の所在の明確性
十分な専門性・経験を有する人材の配置
人材の定着度と運用の継続性・再現性の確保
Process 運用プロセス
投資方針との整合性
運用の再現性
リターンの追求方法の合理性・有効性
リスク管理指標の合理性・有効性
Performance 定量評価については、時価による収益率及びリスクを基準とし、資産種類ごとに適切な市場ベンチマークを設定すること、他の同様の運用を行う運用受託機関の収益率およびリスクとの相対比較を行うこと等、一般的に適正と認められる合理的な基準により行うものとする。
その他 ① 事務処理体制
  売買、決済等の事務処理の効率性及び正確性
  運用実績の報告の迅速性、正確性、透明性
② リスク管理体制
  実効性及び適切性など
③ コンプライアンス
  法令や運用ガイドライン順守体制の整備状況
  過去における法令違反の有無
  事故発生時における対応体制
  監査の状況(内部監査、外部監査)

ここで留意しなければならないのは、十分な体制を構築していないDBの場合、過去のパフォーマンスのみを評価し、それも十分な検証をせず(シミュレーションを実績と誤認、リスクを評価しない等)に運用機関を選任してしまうことが多々ありますが、それではDB法が求めている受託者責任を全うしていないのみならず、不適切な運用機関を選任してしまうことにつながりかねないということです。

また、こういった選任の際には、チェックシートのようなツールを用いて文書に落とし込み、その決裁過程(稟議、委員会の決議)の事跡(稟議書、委員会の議事録)も残す必要があることにも留意が必要です。

なお、2018年4月から改正されるDBガイドラインにおいては、運用機関選任の概要を、加入者に周知することになることも留意が必要です。

4.運用ガイドラインの提示

運用機関が選任されたなら、各運用機関に運用ガイドラインを提示します。

DBガイドラインに定められた運用ガイドラインに示す事項は下記の通りです。

 ① 資産構成に関する事項、運用手法(運用スタイル)に関する事項
 ② 運用業務に関する報告の内容及び方法に関する事項
 ③ 運用受託機関の評価に関する事項
 ④ 運用業務に関し遵守すべき事項
 ⑤ その他運用業務に関し必要な事項

運用ガイドラインの提示において留意すべことは、運用の基本方針と合致した内容とすること、その他決定事項を漏れなく示し、運用機関に勝手な裁量を持たせる余地を無くすことです。

実際には、運用ガイドラインの起案は運用機関が行い、それを企業年金が提示する形が一般的ですが、通常、企業年金においては、運用機関が起案した運用ガイドラインの内容をチェックしていないものと思われますが、その際には、上記のように運用機関に勝手な裁量を持たせてしまうことにつながりかねませんので、注意が必要です。


掲載日:2018年2月22日

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