サイト内検索

年金資産運用プロセスのPlanフェーズ:「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」について

今回のコラムでは、年金資産運用プロセスのPlanフェーズの「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」について解説致します。
※このコラムは、規約型確定給付企業年金(以下、規約型DB)の年金資産運用責任者および担当者様向けです。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 村上 慶
            著者プロフィール
掲載日:2018年2月15日

写真:村上慶

解説

今回のコラムでは、年金資産運用プロセスのPlanフェーズの「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」について解説致します。

 年金資産運用プロセス(PDCA)
対応する
DBガイドラインの
条項
 フェーズ タスク 
Plan 運用基本方針の策定
政策アセットミックス(政策的資産構成割合)の策定
資産毎の運用内容・運用期間構成の策定
3(4)
3(4)

3(2)
Do
運用受託機関の選任
運用ガイドラインの提示
3(5)①
3(5)②
Check 運用資産全体の状況確認
個別運用商品の状況確認

3(5)②,3(5)③
Action 時価資産構成比と基本資産配分の乖離の調整
運用内容・運用期間構成の見直し
政策アセットミックス見直し
3(5)③

資産運用に関する学術研究・通説等では「政策アセットミックスが、運用の成果の8~9割を決定する」と言われておりますが、企業年金における資産運用の現状を見ますと、「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」それに続くDoフェーズの「運用受託機関の選任」および「運用のガイドラインの提示」が十分でない事例が見受けられ、内部統制の目的の一つである「年金資産の保全」が脅かされかねない状況にあります。

従って、年金資産運用プロセスの「Plan」フェーズでは、「政策アセットミックスの策定」を済ませた段階で一仕事が終わったとするのではなく、「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」まで、やり終えて一仕事が終わるという意識を持つ必要があります(実際には上記のように「運用ガイドラインの提示」まで気を抜けないのですが)。

それでは、「資産毎の運用内容・運用機関構成の策定」について順に解説をしてまいります。

「運用内容・運用機関構成の策定」で検討すべき事項は、下記の通りです。

(1)年金資産運用の資産配分比率の決定を運用機関に任せるか、否か。
(2)各資産の運用対象を各資産の標準的ベンチマークを目標とする運用対象とするか、否か。
(3)各資産の運用対象を、ベンチマークを目標とする運用対象とした場合、運用手法(スタイル)をアクティブ運用(注1)またはパッシブ運用(注2)のいずれにするか。
(4)各資産の運用対象を、ベンチマーク以外を目標とする運用対象とした場合、どういった運用手法を運用機関に委託するか。

(注1) ベンチマークに連動する運用成果を目標とする運用手法のこと。
(注2)ベンチマークを上回るリターン(超過収益)を獲得することを目標とする運用手法のこと。

それでは、上記検討事項について考えて行きたいと思います。

(1)年金資産運用の資産配分比率の決定を運用機関に任せるか、否か

年金資産の配分比率決定の責任は、本来DBを運営する事業主に属するものです。
また、資産配分比率の決定を運用機関に一任したからと言って、学術研究上および経験上、それにともなう効果(リターンの向上ないしはリスクの低減)が得られると、必ずしも言えないというのが実情です。

従って、資産配分比率の決定は、運用機関に相応の期待が持てる以外は、運用機関に任せないとする方が妥当と思われます。

(2)各資産の運用対象を各資産の標準的ベンチマークを目標とする運用対象とするか、否か

政策アセットミックスは、標準的ベンチマークのリスク・リターンに基づき構築されたものであることから、各資産の運用対象は、各資産の標準的ベンチマークを目標とする運用対象とするのが一般的です。

標準的ベンチマーク以外を運用目標とするファンドで、追加のリターンを得たい、ないしはリスクを抑制したいということであれば、政策アセットミックス策定段階で、ベンチマークの採用を検討するのが妥当と思われます。

そのような見直しを行わないのであれば、各資産の運用対象は、各資産の標準的ベンチマークを目標とする運用対象とするのが妥当と思われます。

(3)各資産の運用対象を、ベンチマークを目標とする運用対象とした場合、運用手法(スタイル)をアクティブ運用(注)またはパッシブ運用(注)のいずれにするか

アクティブ運用については、運用機関の運用能力と手数料水準を検討し、パッシブ運用を上回る効果が得られると思われる場合に採用するのが合理的な判断です。

実際には、国内の企業年金が投資可能なファンドにおいて内外株式で長期にわたってアクティブ運用能力を発揮できた運用機関がほとんど無いというのが実情です。
従って、運用スタイルに関しては、パッシブ中心の運用スタイルとするのが、妥当と思われます。

(4)各資産の運用対象を、ベンチマーク以外を目標とする運用対象とした場合、どういった運用手法を運用機関に委託するか

伝統的四資産のベンチマーク以外を目標とする運用対象としてはオルタナティブ投資があります。 オルタナティブ投資も、①運用対象が伝統的四資産に属さないオルタナティブ投資(プライベート・エクイティ投資、インフラ投資、不動産関連投資、商品投資、保険投資等)、と、②運用手法が伝統的手法に属さないオルタナティブ投資(例、ヘッジ・ファンド等)に2分されます。

オルタナティブ投資には、仕組が複雑なものが多く、取り上げに当たっては、慎重な評価作業が必要です。投資の専門家がいない、専門家を手当のできない企業年金においては、オルタナティブ投資の採用は適合性の観点から積極的には勧められません(運用機関の評価だけでは、受託者責任の観点から十分では無いので、自前での評価が不可欠ですが、それには相応のコストを要します)。

上記の作業を落とし込んだワークシートの例を以下にお示しします。

政策アセットミックス ベンチマーク 運用内容・運用機関構成
資産区分 構成
比率
運用スタイル 運用手法 資産内構成比率





国内
債券
40% 標準 パッシブ インデックス連動型 60%
アクティブ 金利予測型 20%
アクティブ 事業債重視型 20%
国内
株式
12%
標準 パッシブ インデックス連動型 60%
アクティブ バリュー型 20%
最小分散 パッシブ インデックス連動型 20%
外国
債券
8%
標準 アクティブ 金利予測型 80%
ヘッジ付 パッシブ インデックス連動型 20%
外国
株式
12%
標準 アクティブ インデックス連動型 60%
アクティブ グロース型 20%
最小分散 パッシブ インデックス連動型 20%
一般勘定 16% 保証利率   100%
オルタナティブ
投資
10% 短期金利 プライベート・エクイティ 20%
不動産関連投資 40%
ヘッジファンド 40%
短期資金 2% 短期金利   100%
合計 100%  

掲載日:2018年2月15日

Facebook
Google+