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数理計算上の差異の費用処理方法と留意点

退職給付会計で原則法を適用した会社の担当者にとって、最初に迎える年度末の最大の難所が「数理計算上の差異」です。
本コラムでは、数理計算上の差異の費用処理方法の選択と留意点について見ていきたいと思います。(数理計算上の差異の概要については、数理計算上の差異の内容と償却方法をご覧ください。) 解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 辻 傑司
著者プロフィール
掲載日:2015年8月17日

解説

費用処理方法の選択

定額法と定率法

数理計算上の差異の費用処理方法には、「定額法」と「定率法」があります。均等に按分して費用処理するという分かりやすさから、定額法を用いている会社が多いようです。それぞれのメリットやデメリットとしては、以下が挙げられます。

費用処理年数

費用処理年数については、次の3通りがあります。

  1. 発生年度に全額を費用処理する方法
  2. 平均残存勤務期間とする方法
  3. 平均残存勤務期間以内の一定の年数とする方法

一定の年数で安定的に費用処理することができる 3. の方法を採用されている会社が多いようです。この際、一定の年数は平均残存勤務期間よりも多少余裕を持って短く設定することで、平均残存勤務期間の短縮によって費用処理年数が短縮してしまうことを避けられます。

費用処理の開始時期

費用処理は「当期」または「翌期」から行う必要があります。

当期から費用処理を行う場合、当期末に発生した数理計算上の差異が当期の退職給付費用に影響するため、退職給付費用が期末にならないと確定しません。そのため、多くの会社では「翌期」から費用処理を開始しています。

費用処理方法の変更

費用処理方法の変更は「会計方針の変更」にあたるケースと、「会計上の見積りの変更」にあたるケースがあります。「会計方針の変更」では遡及適用が必要になるため、注意が必要です。

平均残存勤務期間が短縮し、従来の費用処理年数を下回ることになった場合には、基本的に当期の費用から費用処理年数を短縮することになります。

費用処理に係る留意点

費用処理年数に「発生年度に全額を費用処理する方法(1)」を採用している場合、期末に発生する数理計算上の差異が当期の損益に直接影響します。また、費用処理年数に「平均残存勤務期間以内の一定の年数(3)」を用いる場合であっても、平均残存勤務期間が短縮して、当期の費用処理額が変動する可能性があります。特に退職率の再計算を行う年度では注意が必要です。

期末を迎える前に退職給付債務や平均残存勤務期間を一度計算し、数理計算上の差異の発生額や費用処理額の見込みを把握しておくことは有効です。この場合、計算コストの軽減と決算数値の早期把握の観点から、事前に入手した計算結果を補正して決算に使用することも考えられます。

また、定額法を採用している場合、数理計算上の差異の発生額が大きい年度の費用処理が終了した直後年度は、退職給付費用が大きく変動することになるため注意が必要です。例えば、退職給付債務が減少する方向で数理計算上の差異が発生すると、費用処理により退職給付費用は減少します。しかし、この発生年度の数理計算上の差異の費用処理が終了すると、費用の軽減効果がなくなり退職給付費用は増加します。そのため事前に費用処理のスケジュールを把握しておくことが重要です。


掲載日:2015年8月17日

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