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退職給付会計の実務とは-2-退職給付会計業務の全体像

前回は、退職給付の実務を理解する前段階として、「退職給付会計とは何か?」という事をテーマに、退職給付会計のターゲットとゴールを紹介しました。

今回は第二回目として、退職給付会計の実務の全体像をざっくりと説明したいと思います。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 八丁 宏志
著者プロフィール
掲載日:2016年3月9日

解説

さて、前回のコラムで「退職給付会計は退職給付債務の計算に関する業務が全体の8割を占めており、退職給付債務の計算実務がわかってしまえば、ほぼ退職給付会計の実務を理解できたと言っても過言ではない」と紹介しましたので、今回はそれがホントか確かめていきたいと思います。

一連の流れを理解する為に、次の退職給付会計業務を5つのステップに分けて、みていきます。

Step1.計算基礎に関する方針確認
Step2.人事データの作成
Step3.退職給付債務の計算
Step4.会計処理
Step5.監査対応

これは私が内部統制の設計をお手伝いする時は「退職給付債務の計算」の中に「人事データの作成」をおいていますが、担当者の実務として最も負荷がかかり且つ退職給付債務の正確性やスケジュールを左右する重要なプロセスですので、ここでは独立して扱う事にします。

意外と少ないステップ

こうしてステップを分けてみると、退職給付会計の実務は意外と少なく、何となく“簡単”に見えてきます。各ステップの詳細は追って解説していきますので、今回は概要程度にみていきます。

Step1.計算基礎に関する方針確認

このステップでは、退職給付債務の計算における計算前提や、昇給率・退職率といった計算基礎率を決定します。

退職給付債務は簡単に言ってしまうと、「将来支払う退職金はいくらになるか?」、「いつ退職するか?」、「現時点の労働の対価としていくらか?」、「現在の価値に換算するといくらになるか?」といった予測計算をしていますので、一定の計算前提や基礎率を設定する必要があります。いわば計算の基礎として予め決める必要があるので、このステップから業務がスタートします。

Step2.人事データの作成

このステップでは、退職給付債務の計算元となる従業員、年金受給権者、退職者といった人事データを作成します。

計算に必要な人事データは、基本的に退職金の算定基礎となるデータとなります。例えば、年齢を計算する生年月日、勤続年数を計算する入社年月日の他に、算定基礎額としての基本給や各種ポイント等です。確定給付企業年金や厚生年金基金といった企業年金を実施しており、年金を受給されている人がいれば、年金額や受給開始日等のデータもそろえる必要があります。なお、退職者は退職率の計算で使われる他、データチェックでも使われます。

Step3.退職給付債務の計算

このステップでは、計算前提と人事データを用いて実際に退職給付債務を計算します。

退職給付債務の計算は、専門機関に委託する方法と、ソフトを使用して自社で計算する方法の2通りあります。計算を委託する場合は、特筆する事はないので、計算前提と人事データを期日までに専門機関に提出する事を心がけて下さい。自社で計算する場合は、担当者が計算前提や人事データをソフトに入力する必要があるので、事前にソフトの操作を復習します。また、両者に言える事ですが、計算された退職給付債務は必ず検証して下さい。

Step4.会計処理

このステップでは、退職給付債務や年金資産等を集計し退職給付引当金・退職給付費用を計算します。

ここまで進めばゴールは目前です。まずは、引当金、費用の計算に必要な諸数値を集計します。退職給付債務、勤務費用、利息費用は先ほどのステップ迄に計算されているので、その他、年金資産残高や給付支払額、掛金支払額等を各所から集計していきます。後は、会計のワークシートに集計してきた数値を入力することで、簡単に退職給付引当金・退職給付費用が計算されます。

Step5.監査対応

このステップでは、監査法人(会計監査)に退職給付引当金、退職給付費用が正しく計算できている事を説明します。

勿論、ここまでのステップで、退職給付引当金、退職給付費用の検証を済ませておりますので、計算・検証した事実を丁寧に説明して下さい。専門用語が多く、説明に苦慮する事もあるかと思いますが、その場合は委託した専門機関や、ソフトの提供元を巻き込んで対応するようにしましょう。


さて、何となく退職給付会計業務の全体像はみえてきましたか?

次回は各ステップを深掘りし、実務上のポイント等をあげながら解説していきます。


掲載日:2016年3月9日

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