IFRS導入に伴う退職給付債務(DBO)計算の原則法移行について

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IFRS導入に伴う退職給付債務(DBO)計算の原則法移行について

IFRSを導入する企業が徐々に増えているようです。本コラムでは、退職給付会計で簡便法を適用している企業が、IFRS導入時に検討すべき点について考えてみます。

 

 

IFRSにおいてDBO計算を行うか?

日本基準では従業員数が300名以上の場合にDBO計算が求められる一方(原則法)、300名未満の場合には自己都合要支給額等をDBOとして使用することが認められています(簡便法)。

IFRSにおいて退職給付の会計ルールを定めたIAS第19号(従業員給付)には、簡便計算等によりDBO計算の近似値を求めることができるとの規定はありますが、簡便法のようなまったく異なる基準によるDBOの算出についての規定はありません。

よって原則的にはDBO計算が必要であるものの、日本基準で簡便法を適用している会社すべてについて、DBO計算を行うべきかどうかが問題となります。

DBOの簡便計算については、その方法について具体的に明示されていないため、簡便計算の可否はDBO計算の近似値となりうるかどうかや金額の重要性等を基に判断することになると考えられます。判断の材料として、まずはDBO計算を実施して簡便法との差異を把握し、DBO計算をすべきか、それとも簡便法に基づくDBOが使用可能か、事前に監査法人に確認しておく必要があります。

なお、IFRS第1号(初度適用)に基づき財務諸表を作成する場合、適用前年度の期首(IFRS移行日)及び期末、適用年度の期末(IFRS報告日)といった3時点のDBOが必要となります。DBO計算を行う場合には、計算コストを抑えるため3時点の内の1時点または2時点の計算を実施し、残りの時点のDBOを補正計算(ロール・フォワード又はロール・バック)により得ることも容認されております。

このため各時点の計算結果をどのように求めるかについても検討が必要です。

 

3.日本基準(個別)において原則法に移行するか?

IFRSを連結財務諸表において任意適用したとしても、個別財務諸表には日本基準が適用されています。よって、連結財務諸表でDBO計算を行ったとしても、個別財務諸表において簡便法を継続することは可能です。

一方、日本基準は2014年4月から適用されている改正により、IFRSと同じ計算前提によるDBO計算を採用することが可能になりました。計算前提を揃えれば、連結も個別も会計処理上で異なる債務を使用する必要がなくなったわけです。

但し、会計処理方法についてはIFRSと日本基準(個別)で差異が残っているので注意が必要です。例えば、数理計算上の差異はIFRSではその他の包括利益を通じて負債に計上され、その後も純利益に計上されることはありません。

一方、日本基準(個別)では発生年度または翌年度以降に一括や平均残存勤務期間以内の一定年数で分割して、純利益及び負債に計上していくことになります。

日本基準(個別)において原則法移行を行う場合には、移行のタイミングや移行時の会計処理方法及び未認識項目の会計処理方法等についても検討が必要になってきます。


※当コラムには、執筆した弊社コンサルタントの個人的見解も含まれております。あらかじめご了承ください。

 

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