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退職金・企業年金は死に金!?なくてもいいと言う前に知っておくべき現実とは。(2016春)

少子高齢化に伴い、会社員の老後資金の大きな柱のひとつとして重要性を高めつつある退職金・企業年金。

しかし企業側からすると、「制度がないと不満に思われるから、そこそこの制度は持っておかないと」というような立ち位置のものになっている場合も、残念ながら少なくないのではないでしょうか。

自社の制度の目的が曖昧であったり、従業員が制度についてあまり知らなかったり、その割にコストはかかっていたり……。「できれば制度をなくしたい」「コストをできるだけ縮小したい」という考えの経営者、企業も少なくないかもしれません。

実際、厚生労働省が発表している「就労条件総合調査」の平成20年と平成25年のデータを比べると退職金・企業年金制度の設置率、給付額とも減少傾向にあるとされています。

でも、ちょっと待ってください。本当に、なくしてしまってもいいのでしょうか。簡単に縮小してしまっていいのでしょうか。受け取る側の立場にいる会社員のみなさんがどう考えているか、そのまえにちょっと、のぞいてみてはいかがでしょうか。

調査概要

■調査地域:全国

■調査対象:会社員(正社員・20代~50代)

■調査期間:2016年1月

■有効回答数:1000サンプル

退職金・企業年金に求められている役割とは?

退職金・企業年金の用途と老後の生活との関係とは?

用途のイメージはさまざま。ただし、「老後の必要資金」というのは外せない。

退職金・企業年金の用途として想定されるものとして、他の選択肢に圧倒的大差をつけて1位となったのが、「老後の必要資金」。

他の選択肢については想定しないケースも多いのか、意見が分かれるところなのか、おおよそ1割~2割程度に分散するなか8割を超え、「退職金(企業年金)=老後」というイメージが強いことが改めて証明される形となりました。

このなかで特に注目したいのが、「老後の必要資金」が8割を超える一方、「老後のボーナス」を選んだ人は2割にも満たないという点。おなじ「老後」というキーワードが出てくるのに、回答数はまったく異なっています。

この差って、一体何なのでしょうか?

「もらえたらいい」ではなく「もらわないと困る」!?

「必要資金」と「ボーナス」の間に横たわる大きな壁。その正体を暴くべく、「老後の生活」という点にフォーカスして、さらに考えてみましょう。老後の生活において退職金・企業年金が果たす役割について、もっとも当てはまるものをひとつ選ぶとしたら?

この質問において、過半数を超える回答を集めたのが、「公的年金の補完(生活費の上乗せ)」。以下、「万が一の備え(貯蓄)」がつづきます。ここまでを「必要資金」と定義するならやはり8割を超えることに。一方、「ゆとりをもたらすボーナス(遊興費)」とした人は1割にも満たない結果になりました。

公的年金が縮小されていく見通しの中、退職金・企業年金は、「もらえたらいいもの」ではなく、老後の生活のために欠かせない「もらわないと困るもの」というイメージを持たれている様子がうかがえます。

企業がおさえておきたい、働く人々の意識とは。

冒頭でも触れたように、近年、経営環境の変化などに伴い、退職金・企業年金制度は設置率・給付額とも減少傾向にあります。

しかし一方で、受け取る側の従業員には、退職金・企業年金が「老後の生活にとって必要なもの」として意識されており、公的年金に対する不安感が広がる中、それを補完する役割が期待されているようです。

企業はこうした点を踏まえ、自社の退職金・企業年金のあり方や立ち位置について、慎重に検討したうえで、適切な選択を行う必要があるでしょう。

退職金・企業年金のように、これまであまり重要視されていなかった分野こそ、今後の企業の従業員に対する姿勢、少子高齢化社会においてどのような役割・責任を果たすのかを現す一面となるにちがいありません。

老後に向けて、働く人々が企業に期待している事とは?

老後に向けて、企業に期待されていることとは?

まず求められているのが「退職金・企業年金の充実」、という事実。

従業員が自分の老後を考えるうえで企業に望んでいることとしてもっとも多く選ばれたのが「退職金・企業年金の充実」。退職金・企業年金を「老後の必要資金」と捉える人が多い現状、できるかぎり制度を充実して欲しいというのは自然な流れかもしれません。

逆にいえば、近年よく見られている制度の縮小や廃止はこのような従業員の期待とは逆行する流れの動きとなるため、こうしたデータを踏まえたうえで、慎重な対応が求められることを覚えておく必要があります。

また、アンケート結果では、2位となった「老後も働けるしくみづくり」も半数を超えた一方、「自助努力の補助となるしくみ」や「教育・情報提供」といった間接的に従業員個人の取り組みをサポートする点については比較的期待する割合が低い結果となりました。

定年後・老後の生活に関して大きな不安要素のひとつである生活資金。そうした不安の解消あるいは軽減に直結する取り組みとその強化が期待されているといえるのではないでしょうか。

「制度がない企業も増えているから、そのままでいい」?

もうひとつ、ちがった切り口として、「勤務先に制度がない」と答えた人を対象に、「今後なんらかの対応をして欲しいと思うか」質問しました。

「制度を設けて欲しい」という人がもっとも多く、7割近くを占めています。この背景にも、退職金・企業年金に対する「もらわないと困るもの」というイメージがあるのかもしれません。

これまで制度を設けていなかった企業は、「そのままで大丈夫」と考えるより、まずは一度、なんらかの制度を準備した方が良いのかどうか、自社の状況を整理したうえで検討すると良いかもしれません。

退職金・企業年金をどうするか。決める前に知っておきたい現実。

今後、退職金・企業年金制度をどのように運営するのか、より充実させるのか、それとも縮小あるいは廃止してしまうのかはいうまでもなく企業それぞれの判断によるところです。

しかし、今後どうするにせよ、一般的には退職金・企業年金制度の充実を求める声が多いこと、また制度がない場合においては、制度を設けて欲しいという考えの人が多いこと。

こうした事実を知ったうえで判断することは、どのような判断をするにせよ重要なことではないでしょうか。一見すると、あまり役に立っていない、「死に金」だと思われている制度が、実は従業員には意識されており、勤務先に対する安心感や満足度に予想より大きな影響を与えている……ということも、あるかもしれません。

「死に金」って本当?時代の変化が及ぼす影響とは。

少子高齢化の進行に伴い、老後への不安は高まっており、老後破産や下流老人といったワードも注目されています。そうしたなか、会社員として働く人々の多くが「老後の必要資金」と考え、さらなる充実を期待している退職金・企業年金。時代の変化とともに、以前と異なる重要性を帯びるようになり、その価値があらためて認識されるのかもしれません。

このような企業を取り巻く社会情勢の変化とそれに伴う人々の意識の変化を考えると、今あらためて、退職金・企業年金は本当に「なくていい」「コスト削減のために縮小してしまえばいい」存在なのか。それとも「コストをかけている以上、もっと経営にして欲しい」存在なのか。自社にとってどのような存在なのか、そのあり方について考えてみるのはいかがでしょうか。

ともすれば見過ごされがちな退職金・企業年金のあり方。そのあり方を正しく描き実現していくことは、従業員の不安を取り除き、会社への満足度を上げるうえでも、そして公的年金が減少し、老後不安が高まる社会と向き合う企業の姿勢を示すうえでも、今後重要なポイントのひとつとなることでしょう。

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