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コントロールを適切に機能させるためのポイント~退職給付会計における内部統制 -5-

お客様と共にシステム開発やサービス提供を行ってきた経験から退職給付会計業務における内部統制のエッセンスをお伝えしたいと思います。リスクとコントロールを整理するだけでは、十分ではありません。陥りがちな落とし穴を見破るためのポイントを整理します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 八丁 宏志
著者プロフィール
掲載日:2014年6月18日

解説

これまでの手順で、退職給付会計業務におけるリスクとそれに対応するコントロールが整理できました。ゴールはもう目の前ですが、ゴール手前には落とし穴が待っているので注意が必要です。落とし穴を見破る為に、書き出したコントロールに対し「実行可能か?」と問いかけをしてみて下さい。

実行可能なコントロールが本当のコントロール

どんなに立派なコントロールを配置したところでも、その措置が機能しなければ意味を持ちません。先の例では、計算対象者を間違えるリスクに対応するものとして、上長が従業員データと社員名簿を照合し、照合確認した事の証として従業員データ作成書に押印するというコントロールを書きだしました。

これは、上長が照合作業を行ってはじめてリスクを制御できる事を意味しています。では、上長が照合作業を行わなければどうでしょうか?実際には押印がなければ次のステップに進まないとするのだと思いますが、極端な事を言えば照合しなくても判子は押せますので、最悪の場合作業担当者の誤りに気付かずにデータが送られてしまう事になります。その為、上長が従業員データと社員名簿を照合する時間があるか、或いはシステムを使える能力を有しているのかという事をしっかりと確認する必要があります。

もし、ここで無理があれば、上長を検証担当者に変えたり、或いはコントロール自体を見直すようにします。このように、コントロールが十分に機能する仕組み或いは環境の事を「統制環境」といいます。適切な統制環境の基に適切な統制活動(コントロール)があって初めて内部統制が機能します。

見落としがちな統制環境

通常、委託型の計算の場合、人事データや計算前提の指示を行った後、委託先の計算機関に業務が引き継がれます。その後、計算機関において人事データや計算前提が退職給付債務(報告書)に変わり、皆さんの手元に返ってきます。


 

勿論、計算機関においては幾つもの検証工程があり、統制環境も十分に整備していますので、誤りがおこる可能性は低いと思います。しかしながら、それでも可能性は捨てきれません。その為、少なくとも受領した退職給付債務の報告書に記載されている計算前提が指示内容とあっているか、計算人数や給与合計が渡したデータと違わないか確認します。

 

 

 

皆さんの会社でも、よく見られるコントロールだと思います。リスクとコントロールの対応表の記載はこれで十分です。

これぐらいであれば、先の「実現可能か?」という問いにも対応できます。しかし、問題となるのは誤りを見つけた後の行動です。誤りを見つけたのだから再計算させるのが当たり前だと思いますよね。私もその通りだと思います。
 
でも、皆さんは、自社の退職給付債務の計算にどれぐらい時間がかかっているかご存知ですか?実はこの計算時間こそが退職給付会計業務でよく見落とされる統制環境なのです。誤りを見つけても再計算が行えない時期であればどうでしょうか。結果としてその数値を使わざるを得ない状況に追い込まれます。影響額が軽微であったり、社内で対応を協議して適切な処理が行えれば問題はないかもしれませんが、やはり実現可能なコントロールとは言えないので、計算スケジュールに無理がないか、きちんと確認しておく必要があります。

こうした実現の可能性等を繰り返しチェックしすることで、設置したコントロールが適切に機能するようになります。


掲載日:2014年6月18日

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