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法改正を受けた各基金の動向と選択肢~厚生年金基金制度の抜本的見直しについて -3-

2013年6月に厚生年金基金制度を抜本的に見直す法律が成立し、2014年4月に施行されることとなりました。これに伴い、基金に加入する企業がとるべき対応や検討事項、留意点などを考察します。今回は、法改正を受けた各基金の動向と今後とりうる選択肢について整理します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
著者プロフィール
掲載日:2014年4月16日

解説

制度の廃止に向けた各基金の動き

前回のコラムで書いたとおり、厚生年金基金制度は国の厚生年金本体にも悪影響を及ぼしかねないほどに財政状況が悪化し、ついには法改正が行われ、5年の猶予期間をおいた上で原則廃止されることとなりました。

この法律は今年4月に施行されたばかりですが、制度の廃止に向けた各基金の動きはすでに始まっています。

新聞等でも報道されているとおり、3月18日に開催された厚生労働省の企業年金部会の第3回会合では、この半年で解散や代行返上に向けて進み始めた基金が大きく増加していることが明らかになりました。

昨年10月21日時点では全体の2割弱でしたが、今年3月13日時点では4割近くに達しています。

図表1

【図表1拡大図】

特にAIJ事件の被害が大きかった石油業に関しては18基金中16基金が解散内諾済みとなっています。

また、設立の古い基金が多い近畿では人員構成の高齢化により財政状況がより厳しくなっているところが多く、全国よりも速いペースで解散向けた動きが進んでいるようです。

解散とDB移行

では厚生年金基金としての存続の道を断たれた基金には具体的にどんな選択肢があるのでしょうか。共通しているのはこれまで国に代わって運用していた資産を国に返す点です。これを代行返上といいます。

代行返上を完了するには、国に代わって厚生年金保険料の一部を掛金として集め、運用していたことによる国への「借金」を全て返す必要があります。なお、代行返上後は基金からの代行部分の支給はなくなり、厚生年金の全部が国から支払われることとなります。

そして代行返上後に残った資産が、各基金が独自に設けた上乗せ給付を行うための原資ということになるわけですが、この部分の取扱いについては大きく分けて2つの選択肢があります。

1つは残った資産を全て基金の受給者と加入員に分配し、完全に清算してしまうという選択肢です。単に「解散」という場合には一般的にこれを指します。この場合、もともと予定されていた上乗せ給付に対して積立不足があったとしても、その穴埋めは求められません。(但し代行返上に足りない部分の穴埋めは必ず必要です。)

もう1つは残った資産を原資として、上乗せ給付だけの純粋な企業年金(確定給付企業年金)に衣替えするという選択肢です。一般的に「代行返上」といった場合には、この確定給付企業年金への移行までを含めていうケースも多いですが、単に「代行部分を国に返す」という意味での代行返上と区別するため、ここでは「確定給付企業年金への移行」あるいは「DB移行」と略記することにします。

DB移行の場合には、原則として従来の上乗せ給付を引き継ぐこととなるため、積立不足がある場合にはそれも引き継ぐこととなります。

※DB:Defined Benefit Plan(確定給付型年金)

図表2

以上をまとめると図表2のようになりますが、DB移行にはいくつかのハードルがあります。

多くの基金では年金資産の積立が不十分であり、そのような基金では代行部分を国に返してしまうとわずかな資産しか残らないため、これを回復させるためには更なる掛金の積み上げが必要となることが予想されます。(給付のほうを削減するという方法もありますが、もともと上乗せ部分だけの給付はそれほど厚みがないケースも多く、さらに削減してしまうとそもそも企業年金制度としての意義が問われることになってしまいます。)

代行割れ基金、すなわち代行返上するにも年金資産が足りていない基金にとっては国への返済資金を確保するだけで精一杯であり、DB移行を目指すのは現実的には困難でしょう。

また、財政的には何とかDB移行ができそうな基金であっても、実際に移行するには事業主や加入員の同意を得る必要があります。現存する基金のほとんどは多数の事業所が集まって運営されている「総合型」というタイプであり、更なる掛金の引き上げを伴うDB移行について全事業所の理解を得るのは容易ではないでしょう。(解散及びDB移行に関する同意取得の要件については図表3を参照。)

図表3

一方で、受給者や加入員に対する上乗せの給付継続するために、何とか制度を維持したいと考える基金や事業主がいることも事実です。このため、各基金・事業所の状況にあわせた対応ができるような方策も打ち出されています。次回はこの内容について見ていきたいと思います。


掲載日:2014年4月16日

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