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退職給付会計業務の整理~退職給付会計における内部統制 -2-

お客様と共にシステム開発やサービス提供を行ってきた経験から退職給付会計業務における内部統制のエッセンスをお伝えしたいと思います。今回は、理解不足を解消する為の手段として、業務整理の方法をお伝えします。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 八丁 宏志
著者プロフィール
掲載日:2014年3月19日

解説

まずは業務を整理してみる

前回のコラムでは、内部統制を大きく前進させるには不満の解消が必要であり、その不満は理解不足からくることを解説しました。

今回は、理解不足を解消する為の手段として、業務整理の方法をお伝えします。

さて、業務整理というと、先に現在行っている作業を細かくヒアリングしていくことがイメージされますが、これはあまりお勧めしません。

もちろん、個別のヒアリングは必要ですが、これを先にやってしまうと、他の業務プロセスとの連結意識が希薄になってしまったり、本来的に必要な業務プロセスが抜けてしまう可能性があります。

その為、まずは、退職給付会計業務がどういったプロセスで構成されているかを俯瞰的に捉え、次に詳細をヒアリングしていくことが重要です。

退職給付会計業務の4つのプロセス

退職給付会計業務は、「会計方針の確認及び決定」、「退職給付債務計算」、「会計処理」、「検証」の4つのプロセスに分解する事ができます。

会計方針の確認及び決定プロセス

退職給付会計業務を始めるにあたり、以下の方針を確認し決定します。

  • 適用する会計基準
  • 計算対象制度(規程・規約の変更確認を含む
  • 未認識債務の償却方法等の会計処理方針
  • 計算基礎率
  • 退職給付債務の計算方法(委託で計算するか、自社で計算するか等)
  • スケジュール

このプロセスは全てのプロセスの基となる重要なプロセスなので、会計、制度、計算と業務全般において高い知識と理解が求められます。

退職給付債務計算プロセス

前プロセスで決定された方針に基づき退職給付債務を計算します。

退職給付債務を委託する場合は委託先の計算機関に対し以下の指示を行います(自社で計算する場合は、上記の内容を計算ソフトにインプットします)。

  • 適用する会計基準
  • 計算対象制度(制度変更があった場合はその内容の説明と変更計算の指示)
  • 計算基礎率(割引率、退職率、昇給率、死亡率、一時金選択率、再評価率等)
  • 計算基準日(データ基準日)

退職率や昇給率など委託先で計算される基礎率もありますが、変更するか否かの指示は必要です。

また、計算の大本となる人員データの作成も行います。

このプロセスでは、計算機関とのコミュニケーションやソフトへのインプットを正確に行う必要があるので、制度(人員)と計算においての知識と理解が求められます。

会計処理プロセス

前プロセスで計算された退職給付債務や、年金資産、給付支払額等の会計諸数値から退職給付引当金、退職給付費用を計算します。

会計処理自体は簡単な四則演算だけですが、数理計算上の差異や過去勤務債務の償却といった他の会計にない特殊な処理もありますので、会計についての知識と理解が必要です。

検証プロセス

退職給付引当金及び退職給付費用が方針通り計算されているか検証します。

このプロセスは単に、退職給付引当金や退職給付費用の算式と結果を検証するだけではなく、全てのプロセス方針と結果の照合を行います。

細かな部分では、例えば、割引率は従業員の平均残存勤続年数と社債利回りを指標に決定する方針となっていれば、その通り割引率が決定されているかを検証するだけではなく、その割引率で退職給付債務が計算されていることも検証します。

この為、最終的な検証プロセスでは、会計、制度、計算と業務全般において高い知識と理解が求められます。

こうして整理をしてみると、結局のところ、退職給付会計業務においてはどこが主管ということではなく、経営、人事、経理といった全ての関係者の協力があって初めて推進されるものだというのがわかります。

こうした理解のもと、方針の決定は経営が、退職給付債務計算では人事が、会計処理では経理が主体となり運営していく体制が望まれます。

また、関係者が他の分野をなんとなく理解している事が、「実のある内部統制」=「正しい退職給付引当金を計上している」には必要不可欠です。

さて、次回は退職給付会計でどんな間違いがおこるのか、そのリスクと対応について解説したいと思います。


掲載日:2014年3月19日

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