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厚生年金基金制度の実質廃止に至る経緯~厚生年金基金制度の抜本的見直しについて -2-

2013年6月に厚生年金基金制度を抜本的に見直す法律が成立し、2014年4月に施行されることとなりました。これに伴い、基金に加入する企業がとるべき対応や検討事項、留意点などを考察します。今回は、厚生年金基金制度が実質的に廃止されることとなった経緯について整理します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
著者プロフィール
掲載日:2014年3月12日

解説

前回のコラムでは厚生年金基金制度について概観しました。

企業年金の一種でありながら、国の厚生年金の一部を取り込んでいる(この部分を「代行部分」と呼びます)ことが最大の特徴であり、国に対する年金資産運用成績の勝ち負けにより財政状況が左右される仕組みになっていることを見ました。

また、基金に加入している企業の立場から見ると、厚生年金保険料の一部を国から借り入れ、基金に運用委託しているような状況にあるということでした。

今回は、その厚生年金基金制度が実質的に廃止されることとなった経緯について見ていきたいと思います。

「代行割れ」の基金の存在が常態化

公的年金では従来より国債を中心とした比較的ローリスク・ローリターンの運用を行ってきた一方で、厚生年金基金では全体的にリスクの高い運用を行ってきました。リスクを下げようとすると獲得できるリターンも限られてしまうため、その分は掛金の引き上げにより補う必要があります。

現存する基金のほとんどは多数の中小・零細企業により構成された「総合型」というタイプの基金であり、運用のリスクを抑えるために各加入企業の負担掛金を引き上げるという意思決定を行うことが難しかったものと思われます。

そのため、ITバブル崩壊やリーマン・ショックの際には株価急落の影響をもろに受けて積立金を大きく減らすと同時に公的年金の運用実績を下回ることになり[図1]、近年は上乗せ部分の原資を全て食いつぶして積立不足が代行部分にまで侵食するいわゆる「代行割れ」の基金の存在が常態化しています[図2]。

図1:国との運用成績の比較

図2:代行割れ基金数及び積立不足額の推移

代行割れとは、基金の加入者や受給者に対する上乗せ部分の年金・一時金支給を今後全てとりやめ、今積み立てられている年金資産の全てを国に返したとしてもなお不足がある状態であり、基金を解散して清算するためには各加入企業が分担してその不足を穴埋めする必要があるということです。

しかし加入企業にそれを負担する余裕がなく、身動きが取れなくなってしまった基金が続出することになりました。

このような事態を受け、解散時の不足の穴埋めを分割払いできるようにするなどの特例措置が設けられましたが、代行割れを解消し、また未然に防ぐための抜本的な対策はとられないままでした。

AIJ投資顧問の年金資産消失事件、そして法改正へ

そんな中、2012年2月にAIJ投資顧問の年金資産消失事件が発覚します。この事件の被害者の多くは総合型の厚生年金基金であり、中には年金資産の約半分を失ってしまった基金もあったようです。

この事件により、投資顧問業者に対する監督・規制や、企業年金の資産運用体制のあり方が問われることとなりましたが、より根源的な問題として、そのような運用に手を出してしまうことになった背景、すなわち多くの厚生年金基金が危機的な財政状況にあることが広く知られるようになりました。

仮に代行割れの基金が解散し、加入企業も倒産するなどして不足が穴埋めされないままになった場合には、最終的に厚生年金本体、つまり基金に加入していない企業や従業員が負担する形となります。(基金の加入者や受給者に対しては、上乗せ部分の支給はなくなりますが、もともと国から支給されることになっていた代行部分については保証されるので、この部分に対する不足については誰かが負担しなければなりません。)

この問題は国会でも大きく取り上げられることになり、政権交代などで紆余曲折もありましたが、2013年6月に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が成立しました。

これにより、ごく一部の健全な基金を除いては、今後5年のうちに基金を解散するか、代行部分を国に返して上乗せ部分だけの企業年金に移るかの選択をしなくてはならなくなりました。

次回は、この法改正を受けた基金の動向や今後とりうる選択肢について詳しく見ていきたいと思います。


掲載日:2014年3月12日

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