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DC運用商品の見直しを迫られる事業主と運営管理機関~厚生労働省より運営管理機関の評価基準案が公表される

DC実施企業における運営管理機関や運用商品の評価基準案がパブリックコメントにて公表されました。その内容からは、企業型DCにおける運用商品のラインナップの現状に対する行政側の強い問題意識が見てとれます。

これまで運営管理機関から提示された運用商品に対して、何ら検証を行うことなく受け入れてきた企業においては、今後対応の見直しを迫られることになるでしょう。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
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掲載日:2018年6月4日

解説

2016年の確定拠出年金法の改正に盛り込まれた確定拠出年金(DC)実施企業における運営管理機関の評価(施行日は2018年5月1日)について、2018年5月21日、下記のとおり関連省令等の改正案(パブリックコメント)が公表されました。

パブリックコメントの意見募集要領に記載のとおり、今回の改正案は、事業主による運用商品のモニタリング(運用状況のチェック)を含む運営管理機関の評価の実効性を確保するためのものとなっており、大きくは次の3つの内容で構成されています。

  1. 運営管理機関の評価にあたっての考え方
  2. 評価にあたっての具体的な評価項目の提示
  3. 運用商品の相対的な比較と評価を可能とするための情報開示

以下、それぞれについて具体的な内容を見ていきます。

1.運営管理機関の評価にあたっての考え方

DCを実施する事業主は、確定拠出年金法において「企業型年金加入者等(加入者及び運用指図者。以下同じ)のために忠実にその業務を遂行しなければならない」とされており、運営管理機関や運用商品の選定についてももっぱら加入者等の利益の観点から行うことが求められます。

また、運営管理機関の体制や運用商品が制度発足時点で望ましいものであったとしても、期間の経過により必ずしもそうでなくなることがありうることから、事業主はDCの実施主体として自身で点検・確認し、運営管理機関との対話等を通じて改善していくことが必要です。

このため、2016年の法改正では、少なくとも5年ごとに運営管理機関の評価を行い、検討を加え、必要があれば運営管理機関の変更その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされました。

なお、事業主は、運営管理機関からその業務の状況等について年1回以上定期的に報告を受けることとされており、これらの報告内容についても考慮したうえで評価を行うことが望ましいとされています。

運営管理機関の評価にあたり、点検すべき項目や手法については、その企業の規模や加入者等の構成、制度導入からの定着度、投資教育の充実度等により、それぞれの事業主において異なると考えらえるものの、少なくとも下記2の項目については報告を受け、評価を行い、当該報告内容及び評価の内容を加入者等に対して開示することが望ましいとされています。

2.評価にあたっての具体的な評価項目

(1) 提示された商品群の全て又は多くが1金融グループに属する商品提供機関又は運用会社のものであった場合、それらが加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。

(2) 同種の他の商品と比べて明らかに運用成績の劣る投資信託、他の金融機関が提供する元本確保型商品と比べて利回りや安全性が明らかに劣る元本確保型商品、同種の他の商品と比べて手数料や解約時の条件が良くない商品について、それが加入者等の利益のみを考慮したものであるといえるか。

(3) 商品ラインナップの商品の手数料について、詳細が開示されていない場合又は開示されているが加入者にとって一覧性がないもしくは詳細な内容の閲覧が分かりにくくなっている場合に、なぜそのような内容になっているか。

(4) 運営管理機関が事業主からの商品追加や除外の依頼を拒否する場合、それが加入者等の利益のみを考慮したものであるか。

(5) 運営管理機関による運用商品のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準を含む)、またその報告があったか。

(6) 加入者等への情報提供がわかりやすく行われているか(例えばコールセンターや加入者ウェブの運営状況)

上記のうち(1)~(4)については商品ラインナップに関する項目となっていますが、今回このような項目が盛り込まれたのは、実際にはこうした点において問題がある例が少なからずあることの裏返しだといえるでしょう。

また、DC制度を長期的・安定的に運営するには、運営管理業務を委託する運営管理機関自体の組織体制や事業継続性も重要となることから、運営管理業務の運営体制、運営管理機関の信用及び財産の状況等も評価項目とすることが考えられます。

なお、運営管理業務に付随して提供を受けているサービス(例えば投資教育を委託している場合の投資教育の内容や方法等)で点検すべき項目があれば、当該項目についても評価項目とすることが望ましいとされています。

3.運用商品についての情報開示

事業主による運営管理機関の評価の実効性を確保するには、運営管理機関からの情報提供や説明、運営管理機関自身の取り組みも重要となります。

この点、今回の改正案では、運営管理機関の忠実義務の内容として、事業主に対する説明責任を積極的に果たすとともに、事業主との意見交換等を踏まえつつ、上記2の評価項目等について、定期的に自己の運営管理業務の遂行状況を点検・確認し、必要に応じて見直しを行うことが盛り込まれました。

さらに、事業主による運用商品の相対評価が可能となるように、運営管理機関に対しては企業型DCにおいて選定した各運用商品についての情報(商品内容、過去の運用実績、手数料を含む)を一覧できるように取りまとめて記載したうえで、インターネットで公表することを求めています。
今までブラックボックスだった各運営管理機関における商品選定の実績や手数料を明らかにするものであり、画期的な内容だと言えます。

今回の改正案からは、企業型確定拠出年金における運用商品のラインナップの現状に対する行政側の強い問題意識が見てとれます。これまで、運営管理機関から提示された運用商品に対して、何ら検証を行うことなく受け入れてきた企業においては、今後対応の見直しを迫られることになるでしょう。

なお、これらの改正案のうち、運営管理機関による運用商品の公表については2019年7月から施行、それ以外についてはパブリックコメントの結果公示日に施行することとなっています。


掲載日:2018年6月4日

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