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今後急増するシニア社員に企業はどう対応していくか~今から考えておくべき3つの方向性

2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法により、希望者全員に対する60歳以降の継続雇用の義務が段階的に引き上げられ、2025年度以降は65歳までの継続雇用が企業に義務付けられることとなりました。

今後急増するシニア社員に企業はどう対応していくか…今から考えておくべき3つの方向性を解説します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
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掲載日:2018年3月19日

解説

2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法により、希望者全員に対する60歳以降の継続雇用の義務が段階的に引き上げられ、2025年度以降は65歳までの継続雇用が企業に義務付けられることとなりました。

その一方で、バブル世代と呼ばれる大量採用の世代が2025年以降、次々と60歳を迎えていくこととなります。

しかし、「とりあえず法律で定められた最低限の対応を行っている」というのが多くの企業の現状であり、今後、対応の方向性を定めたうえで具体的な取り組みを進めていくことが求められます。

シニア社員の急増に対応する3つの方向性

シニア社員(ここでは主に60歳以上の社員を指します)の雇用を巡る状況は企業によって様々ですが、60歳で一旦定年退職した後、再雇用により一律に処遇が引き下げられ、意欲が低下したり能力を発揮できない社員ばかりになってしまうのは避けなければなりません。

ではどのような姿を目指していくべきか?大まかな方向性は各企業の置かれている状況によって次の3つに分けることができます。

  1. 積極活用型:年齢にかかわらず人材を確保し、最大限に活用する
  2. メリハリ活用型:本人の意欲や能力に応じ、メリハリをつけて活用する
  3. 転身支援型:独立や外部への再就職を促進し、シニア社員の雇用を最小限に抑える

以下、それぞれのタイプについて、当てはまる企業像や取るべき人事施策をまとめていきます。

タイプ1:積極活用型

年齢にかかわらず経験が生かせる仕事が多い場合や、若い世代への技術の継承が必要な場合のほか、業容拡大や採用難により人手不足が課題となっている企業においては、シニア人材の活用を積極的に進めていくことが求められます。

こうした企業では、定年年齢を65歳以上に引き上げ(または廃止し)、60歳を過ぎてもそれまでと同じような働き方、処遇の維持を可能とすることで、シニア社員の仕事に対する意欲を向上させることが考えられます。

一方で、年功的な要素が残った報酬制度のままでは、シニア社員を含めた全社員を統一した人事制度のもとで処遇するのは困難です。したがって、場合によっては60歳未満の社員に対する既存の人事制度の見直しも合わせて行う必要があるでしょう。

また、シニア社員の全員がそれまでと同じ仕事、同じ働き方を希望する(できる)わけではありませんから、本人の希望に沿ったポジション・働き方と、それに見合った処遇を行うための仕組みも用意しておくことが重要と考えられます。

なお、定年を延長(または廃止)した場合には退職給付の取り扱いについても検討しておく必要があります。シニア社員の働き方やニーズの多様化を考えると、60歳以降の報酬の受け取り方(賃金or退職給付の積み上げ)や、退職給付の受け取り方(時期及び年金or一時金)には柔軟性を持たせることが望ましいと言えます。

タイプ2:メリハリ活用型

積極活用型の企業のように、シニア社員を60歳未満の社員と同等に処遇するまでの必要性(あるいは財務的な余裕)はないにしても、意欲や能力の高い人材については引き続き高い貢献を期待するという企業においては、人材に応じたメリハリをつけた活用が求められます。

定年については一律65歳に引き上げるのではなく、選択定年という形で60~65歳の間で本人と会社との面談等により個別に設定したり、定年は60歳のままとしつつも、それまでと同等の役割・処遇を維持するコースから職務や勤務時間を限定したコースまで、再雇用後のコースを複数設定することなどが考えられます。

積極活用型との違いは、本人の希望を尊重して人材を囲い込むのではなく、会社側が必要とする人材を選抜して処遇する点にあります。したがって、会社側がどのような人材を必要としているのか、60歳以降にどのようなコース(選択肢)があるのかを明確にし、あらかじめ社員にそれを伝え、自分自身のセカンドキャリアについて考えてもらう期間を設けることが重要になるでしょう。

退職給付に関しては、積極活用型の場合と同様に柔軟性を持たせ、60歳以降のコースに応じた受け取り方ができるようにしておくことが望ましいと考えられます。

タイプ3:転身支援型

シニア社員の活用の余地が非常に限られている企業においては、法律で定められた最低限の雇用機会は確保しつつ、独立や外部への再就職を促すことで、シニア社員の雇用を抑制する対応が必要となるでしょう。

早ければ40代頃から自立したキャリアを築くための研修や再就職支援の機会を設けたり、副業・兼業を積極的に推奨することで、社員の転身を促すことが考えられます。自社で仕事を続ける場合でも、雇用契約ではなく(本人との合意を前提に)業務委託契約に切り替えることも考えられますし、転職や独立を後押しするために、あえて「出戻り」を一定期間保証することも効果的かもしれません。

現状ではシニア社員の活用の余地が限られていたとしても、独立したり他社でも通用するスキルやマインドを身につけた人材が増えてくれば、将来的には自社で活用する道も開けてくるのではないでしょうか。

退職給付に関しては早期退職支援としての位置づけを強め、節目の年齢ごとに退職金の加算を設けるなどの対応が考えられます。

上記のいずれの対応をとるにしても、人事制度や研修等の支援体制を構築し、社員にその仕組みを浸透させていくには数年単位の期間が必要になると考えられます。バブル時代の大量採用世代が50代になりつつある今、将来のシニア社員の活用スタンスをどう定め、具体的にどう対応していくのか、検討を急ぐ必要があるのではないでしょうか。


掲載日:2018年3月19日

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