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退職金・年金情報【統計レポート】-4-年金資産構成割合およびリスク量について

日頃、お客様より、自社の退職金・年金に関する現状の把握や評価が難しいという声を頂戴することがあります。特に、自社の退職金・年金の立ち位置を知るうえで、同業他社との比較は重要でしょう。同業他社データを踏まえ、自社の退職金・年金が目指す理想の立ち位置を明確化し、これと現状とのギャップを把握すれば、今後の課題が見えてきます。

退職金・年金関係の開示を含め、決算開示データは、膨大な労力を費やして作成されていることはご存じの通りですが、投資家だけでなく、一事業会社としても開示データを有効活用することができるはずです。

本レポートでは、決算開示データを用い、上場企業全体だけでなく、業種別の数値を分析し、読者の皆様の会社と比較分析する上での参考となる情報や考え方をお伝えするとともに、投資家目線ではなく、企業サイドとしてどのようなアクションを行うべきかを考えるためのヒントをお伝えすることを意図しております。

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IICパートナーズ 代表 中村 淳一郎
著者プロフィール
掲載日:2018年2月19日

写真:中村淳一郎

分析項目解説のポイント

  1. 「従業員1人あたり退職給付費用」で1人当たりのコスト負担をチェック。全社平均は242千円。サービス・運輸・小売業で低くなっており、同時にこれらの業界で人手不足の傾向あり。

  2. 「退職給付費用の営業利益に対する比率」で、収益力に見合った水準かチェック。全社平均は12%。20%を超えると要注意。

  3. 「退職給付費用の人件費に占める比率」で、人件費のうち退職給付費用への配分をチェック。全社平均は4.2%。配分に関する従業員のニーズとマッチしているかがポイント。

  4. 「退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率」で、企業と従業員の運用リスクのシェア状況を確認。全社平均はDB型制度分が82%で、今なお企業負担が大きい。DC移行検討は、業界他社の比率も考慮した上で判断。

  5. 「退職給付債務の純資産に対する比率」で、負債サイドのリスクの大きさをチェック。全社平均は14%。但し、中長期的には金利上昇の可能性があり、負債サイドの下方リスクは限定的か。

  6. 「年金資産構成割合及びリスク量」で、資産サイドのリスクの大きさをチェック。リスク量の全社平均は21%。最もリスク量の小さい外食・飲食サービス業における一般勘定の比率は49%と突出。

解説

退職金・年金情報 統計レポート第四回目は、「年金資産構成割合およびリスク量」についてと本レポートのまとめです。

年金資産構成割合およびリスク量

出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=1,621社)
補足:年金資産のリスク量は、過去20年程度の各資産のインデックスから期待収益率と標準偏差を計算し、正規分布の片側5%TVaR(Tail Value at Risk)として算定する方法により弊社算定
(例:年金資産におけるリスク量の割合20%・・・1年の間に、年金資産が20%程度減少する確率がおよそ5%)


負債サイドのリスクに続き、資産サイドのリスクについて見ていきましょう。
上図は、有価証券報告書に開示されている年金資産の内訳比率をもとに、リスク量を推定計算した結果です。

他の分析項目ほど業種間でのバラツキはなく、全社平均21%の近傍に分布していますが、それでも最大の輸送機器業の25%から最小の外食・飲食サービス業の13%まで約2倍の開きがあります。

このリスク量の開きの原因は、資産構成割合にありますのでこれを下図で確認してみましょう。

出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=1,621社)


最もリスク量の小さい外食・飲食サービス業における一般勘定の比率が49%となっており、突出しています。一方で、最もリスク量の大きい輸送機器業あるいは物流・運輸業ではリスク資産である株式のウェートが3割を超えています。

どれだけリスクを取り、リターンを追求するか、そしてどのような資産構成割合とするかは、財務体質や人員構成・成熟度を踏まえた各企業のリスク志向やリスク許容度に基づき決定する必要があります。

他社の動向も参考にしつつ、運用リスクをマネジメントするガバナンスを整備・運用すること、すなわち運用の基本方針を定め、目標収益率とリスク許容度を踏まえた上での政策アセットミックスの策定をすること、さらには、運用機関や商品の構成についても定期的に検証・評価することが望まれます。

まとめ

本レポートでは、決算開示データを用い、上場企業全体だけでなく、業種別の数値を分析し、読者の皆様の会社と比較分析する上での参考となる情報や考え方をお伝えするとともに、企業サイドとしてどのようなアクションを行うべきかを考えるためのヒントをお伝えしました。

本レポートの内容と自社のデータを照らし合わせることにより、ある程度、自社の退職給付制度の状況の把握が可能となるかと思います。

ただ、より幅広い項目について、より深く、より詳細な業種区分との比較や期間推移分析を行いたい方、あるいは専門的な見解を必要とする方もいらっしゃるかと思います。その際には、企業ごとの退職給付の状況についてより幅広く、詳細かつ体系的に分析及び診断した「退職金・年金分析診断サービス」もございます。

また、本レポートでは、主に退職金・年金のコストとリスクを中心とした分析を行っておりますが、企業として退職金・年金制度に関するコストとリスクを負担するのは、制度を設ける目的あるいは意図があるからでしょう。この制度を設けている意図が達成できているのか、或いは制度の内容が充実しており機能しているのか、という視点も重要かと思います。「退職金・年金分析診断サービス」ではこの視点も含め、コスト・リスク・制度(パフォーマンス)という3つの視点での立体的な分析と診断が可能です。ご興味ございましたら、お気軽に弊社へお声がけください。皆様の会社の退職給付制度の理想像実現に向けて何をすべきなのか、皆様と共有することができれば幸いです。


掲載日:2018年2月19日

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