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退職金・年金情報【統計レポート】-3-退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分と純資産に対する比率

日頃、お客様より、自社の退職金・年金に関する現状の把握や評価が難しいという声を頂戴することがあります。特に、自社の退職金・年金の立ち位置を知るうえで、同業他社との比較は重要でしょう。同業他社データを踏まえ、自社の退職金・年金が目指す理想の立ち位置を明確化し、これと現状とのギャップを把握すれば、今後の課題が見えてきます。

退職金・年金関係の開示を含め、決算開示データは、膨大な労力を費やして作成されていることはご存じの通りですが、投資家だけでなく、一事業会社としても開示データを有効活用することができるはずです。

本レポートでは、決算開示データを用い、上場企業全体だけでなく、業種別の数値を分析し、読者の皆様の会社と比較分析する上での参考となる情報や考え方をお伝えするとともに、投資家目線ではなく、企業サイドとしてどのようなアクションを行うべきかを考えるためのヒントをお伝えすることを意図しております。

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IICパートナーズ 代表 中村 淳一郎
著者プロフィール
掲載日:2018年2月13日

写真:中村淳一郎

分析項目解説のポイント

  1. 「従業員1人あたり退職給付費用」で1人当たりのコスト負担をチェック。全社平均は242千円。サービス・運輸・小売業で低くなっており、同時にこれらの業界で人手不足の傾向あり。

  2. 「退職給付費用の営業利益に対する比率」で、収益力に見合った水準かチェック。全社平均は12%。20%を超えると要注意。

  3. 「退職給付費用の人件費に占める比率」で、人件費のうち退職給付費用への配分をチェック。全社平均は4.2%。配分に関する従業員のニーズとマッチしているかがポイント。

  4. 「退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率」で、企業と従業員の運用リスクのシェア状況を確認。全社平均はDB型制度分が82%で、今なお企業負担が大きい。DC移行検討は、業界他社の比率も考慮した上で判断。

  5. 「退職給付債務の純資産に対する比率」で、負債サイドのリスクの大きさをチェック。全社平均は14%。但し、中長期的には金利上昇の可能性があり、負債サイドの下方リスクは限定的か。

  6. 「年金資産構成割合及びリスク量」で、資産サイドのリスクの大きさをチェック。リスク量の全社平均は21%。最もリスク量の小さい外食・飲食サービス業における一般勘定の比率は49%と突出。

解説

退職金・年金情報 統計レポート第三回目は、「退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率と純資産に対する比率」についてです。

退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率

出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=2,674社)
補足:DB型制度分には、退職一時金制度、確定給付企業年金制度、厚生年金基金制度の退職給付費用、DC型制度分には、確定拠出年金制度、中退共等のDC型制度の退職給付費用を含む


退職金・年金については様々なリスクがありますが、中でも運用リスクを基本的に企業サイドが負担するDB型制度と、従業員サイドが負担するDC型制度に大別されます。

近年、このリスクを労使でシェアする考え方が浸透し、DB型制度からその一部をDC型制度へ移行する傾向があります。しかし、それでも退職給付費用ベースでみると、上図のとおり全社平均で82%がDB型制度(一時金制度を含む)という状況です。

昨年、改正DC法が成立し、今後さらにDC制度への移行が進むことが予想されます。その際、自社がリスク負担できない部分を従業員とシェアするとしても、従業員の特性を十分踏まえる必要があります。仮にDCへ移行する場合、投資教育を行うことは当然ですが、その内容を実際に従業員が理解し、自己責任のもとで適切な運用をできるかどうか、従業員が運用に対してどのような印象や抵抗感を持っているかを把握した上で、丁寧に説明を行う必要があります。適宜、社内アンケートなどにより従業員サイドの意識やニーズを把握しながら進める必要があるでしょう。

その際、自社の属する業界のイメージを持っておく必要があると思います。例えば上図においてDB型制度の割合が86%と高い(DC型制度の割合は14%と低い)、建設・不動産業、物流・運輸業及び外食・飲食サービス業では、DC制度の下で運用リスクを負担することに対して抵抗感を持つ従業員が多いことが推測できます。

また、同業他社がDC型制度への移行を進めていない状況では「同業他社も既に採用しました」という説得のためのフレーズを使うことは困難です。このような業種別のイメージを持った上で、制度の見直しを進めていく必要があるでしょう。

出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=2,069社)
補足:分母である純資産額は、年度ごとの変動の影響を排除するため直近3年の平均値を使用


続いて、退職金・年金のリスクのうち負債サイドに焦点を当ててみましょう。

負債サイドのリスク量の大きさは、概ね「退職給付債務÷純資産」で把握することができます。上図のとおり、全社平均では14%となっています。業種によって、バラツキがあるものの、日銀がマイナス金利政策からイールドカーブコントロールに切り替え、今後、金利引き下げの可能性が小さい状況ですので、割引率の引き下げによる退職給付債務増加リスクは小さく、この指標が20%程度でも重大なリスクとは言えないかもしれません。

むしろ、中長期的には長期金利が上昇局面に入る可能性がありますので、金利上昇に伴う退職給付債務の減少という恩恵を享受できるフェーズが待っている、とも考えられます。

一方、退職給付債務の変動リスク要因は、金利だけでなく、退職率や昇給率などもあります。この退職給付債務の水準或いはリスクを減少させるための方法としては、CBプランへの移行、DC制度への移行、2017年1月から導入可能となったリスク分担型企業年金への移行などが考えられます。


次回は、「年金資産構成割合およびリスク量」について解説します。


掲載日:2018年2月13日

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