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退職金・年金情報【統計レポート】-2-退職給付費用の人件費に占める比率

日頃、お客様より、自社の退職金・年金に関する現状の把握や評価が難しいという声を頂戴することがあります。特に、自社の退職金・年金の立ち位置を知るうえで、同業他社との比較は重要でしょう。同業他社データを踏まえ、自社の退職金・年金が目指す理想の立ち位置を明確化し、これと現状とのギャップを把握すれば、今後の課題が見えてきます。

退職金・年金関係の開示を含め、決算開示データは、膨大な労力を費やして作成されていることはご存じの通りですが、投資家だけでなく、一事業会社としても開示データを有効活用することができるはずです。

本レポートでは、決算開示データを用い、上場企業全体だけでなく、業種別の数値を分析し、読者の皆様の会社と比較分析する上での参考となる情報や考え方をお伝えするとともに、投資家目線ではなく、企業サイドとしてどのようなアクションを行うべきかを考えるためのヒントをお伝えすることを意図しております。

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IICパートナーズ 代表 中村 淳一郎
著者プロフィール
掲載日:2018年2月5日

写真:中村淳一郎

分析項目解説のポイント

  1. 「従業員1人あたり退職給付費用」で1人当たりのコスト負担をチェック。全社平均は242千円。サービス・運輸・小売業で低くなっており、同時にこれらの業界で人手不足の傾向あり。

  2. 「退職給付費用の営業利益に対する比率」で、収益力に見合った水準かチェック。全社平均は12%。20%を超えると要注意。

  3. 「退職給付費用の人件費に占める比率」で、人件費のうち退職給付費用への配分をチェック。全社平均は4.2%。配分に関する従業員のニーズとマッチしているかがポイント。

  4. 「退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率」で、企業と従業員の運用リスクのシェア状況を確認。全社平均はDB型制度分が82%で、今なお企業負担が大きい。DC移行検討は、業界他社の比率も考慮した上で判断。

  5. 「退職給付債務の純資産に対する比率」で、負債サイドのリスクの大きさをチェック。全社平均は14%。但し、中長期的には金利上昇の可能性があり、負債サイドの下方リスクは限定的か。

  6. 「年金資産構成割合及びリスク量」で、資産サイドのリスクの大きさをチェック。リスク量の全社平均は21%。最もリスク量の小さい外食・飲食サービス業における一般勘定の比率は49%と突出。

解説

退職金・年金情報 統計レポート第二回目は、「退職給付費用の人件費に占める比率」についてです。

退職給付費用の営業利益に対する比率

出所:出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=2,669社)
補足:分母である営業利益額は、年度ごとの変動の影響を排除するため直近3年の平均値を使用)


人手不足感が強く、かつ、1人当たり退職給付費用が低いとしても、給付水準の引き上げにあたって、自社の収益力に見合った水準であるか否か検証が必要でしょう。自社の収益力に見合った水準でなければ、退職金・年金制度の持続的な運営は難しくなるからです。

この「退職給付費用が自社の収益力に見合った水準となっているかどうか」を判断する上では、営業利益に対する比率をみることが適切でしょう。

業種によってバラツキがあるものの、営業利益の10%程度が目安となるでしょう。例えば、5%未満であれば給付水準を引き上げる余地がありえますし、逆に20%を超える水準であれば、退職給付費用水準の適正化のため、給付水準の引き下げを含めた制度の見直しを検討することが考えられます。

但し、この際、人件費の配分という視点も重要です。退職給付費用だけで考えるとアンバランスになり全体最適とならない可能性がありますので、次の「退職給付費用の人件費に占める比率」も合わせて検討した方が望ましいでしょう。

退職給付費用の人件費に占める比率

出所:日経バリューサーチ財務データによる有価証券報告書開示数値を弊社加工(n=2,333社)
補足:「退職給付費用の人件費に占める比率」は「販売費および一般管理費」の内訳項目としての「退職給付費用」と「人件費(退職給付費用、給与、賞与、福利厚生費等)」の比率を概算値として使用


ご存じの通り、退職給付費用は人件費の一部です。退職金・年金は、人材戦略の一環として位置付けられますので、人件費をどのように配分するか、という視点での検討も重要です。

そして、その際、人件費の受け手である従業員サイドのニーズも考慮する必要があります。

以前であれば、「年金ではなく一時金で受け取るか、退職金前払制度により給与として早めに受け取って、住宅ローンの返済に回したい」というニーズがありました。しかし、マイナス金利政策の影響で、住宅ローン金利はかなり下がっていますので、繰り上げ返済によるメリットは以前よりも小さくなっています。また、2018年度の税制改正では、年収が一定額を超えたサラリーマンが増税になることが見込まれており、税金・社会保険料の面で負担感のある給与での受け取りニーズが減退する可能性もあります。

また、前述のとおり、老後不安への意識が高まる中で、老後資産形成という意味で退職金あるいは年金として受給するニーズが増加していく可能性があります。

特に、サービス・運輸・小売業など人材不足感が強い業界において、この「退職給付費用÷人件費」の比率が低くなっていますが、上記のような従業員ニーズの変化を社内アンケートなどで確認した上で、人件費のうち退職金・年金に充てる割合の上昇を通じて人材確保へつなげることを検討する余地があるのではないでしょうか。

なお、全社平均の「退職給付費用÷人件費」の比率の推移をみると、4.2%(2014年度)→ 4.0%(2015年度)→4.2%(2016年度)と、近年続いた減少傾向から下げ止まった様子が伺えます。


次回は、「退職給付費用のDB型制度分とDC型制度分の比率と純資産に対する比率」について解説します。


掲載日:2018年2月5日

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