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リスク分担型企業年金に関する会計上の取扱い(案)のポイント

2016年6月2日、ASBJから公表されたリスク分担型企業年金の会計上の取扱いをまとめた「実務対応報告公開草案第47号『リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)』」が公表されました。
関連する改正案と併せ、本コラムにてポイントを解説します。解説を見る→

IICパートナーズ 代表 中村 淳一郎
著者プロフィール
掲載日:2016年6月10日

写真:中村淳一郎

5つのポイント

  1. 《会計上の分類》
    ・・・リスク分担型企業年金は、一部のケースを除き、会計上、確定拠出制度(DC制度)として扱う
  2. 《会計処理》
    ・・・退職給付債務(DBO)の算定は不要であり、各期に拠出すべき掛金を費用処理すれば良い
  3. 《注記開示》
    ・・・リスク分担型企業年金の概要や翌期以降のリスク対応掛金相当額など、追加の注記が必要
  4. 《移行時の処理》
    ・・・DBからリスク分担型企業年金へ移行する際の処理も、DCへ移行する際と同様(但し、導入時に設定した特別掛金の総額を未払金計上し、移行時損益に反映)
  5. 《適用時期》
    ・・・公表日以後、即時適用

解説

2016年6月2日、ASBJから、リスク分担型企業年金の会計上の取扱いをまとめた実務対応報告(案)(*)が公表されました。

また、この実務対応報告案に合わせ、「退職給付会計基準」と「適用指針第1号退職給付制度間の移行等に関する会計処理」についても改正案が公表されています。

(*):正式名称は、「実務対応報告公開草案第47号『リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)』」

リスク分担型企業年金のエッセンス

「リスク分担型DB」改め「リスク分担型企業年金」は、法令及び枠組みとしてはDB制度なのですが、運用リスクを基本的に企業が負担するDBと従業員が負担するDCの中間的性格を有するものとして、「第3企業年金」とも報道されています。

厳密には少し複雑な仕組みなのですが、ざっくり申し上げるならリスク分担型企業年金とは、以下のような制度です。

『将来の財政悪化リスクに相当する部分について、その一部を、固定された掛金(=リスク対応掛金)として企業が上乗せして負担し、残りの部分を、従業員等が給付額の調整という形で負担する制度』

あるいは、経理・財務の方には、以下のように表現した方がイメージしやすいかもしれません。

「変動金利を固定金利に交換する代わりに固定的なコストを上乗せ負担する金利スワップ」を付けた借入契約の企業年金版』

また、この「リスク分担型企業年金」は、2016年5月27日から厚生労働省が意見募集(パブリックコメント)を実施しているところですので、最終的な制度が確定していないことにご注意下さい。
※Pmasコラム:『リスク分担型DB等の導入に関するパブリックコメント』をご参照ください。

5つのポイントの解説

ポイント1:会計上の分類

リスク分担型企業年金は、一部のケースを除き、会計上、確定拠出制度(DC制度)として扱う

上述の通り、リスク分担型企業年金は、『将来の財政悪化リスクに相当する部分について、その一部を固定された掛金(=リスク対応掛金)として企業が上乗せして負担し、残りの部分を従業員等が給付額の調整という形で負担する制度』ですので、リスク対応掛金を含めた掛金を拠出してしまえば、基本的に、将来において財政が悪化したとしても追加の拠出義務は企業側にないということになります。
従って、会計上は、実質的な追加拠出義務がない制度ということで、基本的にDC制度として扱えば良い、とされています。

但し、リスク分担型企業年金であれば自動的にDC制度扱いになるわけではありません。
『リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、制度の導入時の規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないもの』を会計上DC制度として取扱い、これに該当しないリスク分担型企業年金は会計上DB制度として取扱うこととしています(実務対応報告案第3項、第4項)。

あえて、このようなDB制度扱いにするケースを定めたのは、導入にあたって企業年金規約以外のところで「給付の調整(減額)が行われた場合は掛金の見直しを行う」といった取り決めが労使の間でなされた場合には、企業は実質的に追加の拠出義務を負うことになるためDC制度に分類すべきではない、という主張によるものと考えられます。
また、制度導入後、新たな労使合意に基づく規約の改訂の都度、会計上の制度の分類について再度判定することとされていますので、労使合意の際には、この点について注意が必要です(実務対応報告案第5項)。

ポイント2:会計処理

退職給付債務(DBO)の算定は不要であり、各期に拠出すべき掛金を費用処理すれば良い

ポイント1の通り、リスク分担型企業年金は、基本的に、DC制度扱いとなりますので、会計処理としては、各期に拠出すべき掛金を費用処理すれば良いこととされています(実務対応報告案第6項)。
掛金のうち、リスク対応掛金については、各期への費用配分の適正性や、拠出義務に基づく負債計上の必要性について問題が提起されましたが、実務上の困難性や情報の有用性等の観点から、他の掛金と同様に、各期に拠出すべき掛金を費用処理することとされています(実務対応報告案第22項~第24項)。

ポイント3:注記開示

リスク分担型企業年金の概要や翌期以降のリスク対応掛金相当額など、追加の注記が必要

DC制度として扱われるリスク分担型企業年金については、他のDC制度と異なる特徴があることや、将来キャッシュ・フローの金額及び発生時期を財務諸表利用者に伝えるため、以下(1)~(3)の項目の注記が必要とされています(実務対応報告案第12項、第29項~第31項)。

(1)企業が採用するリスク分担型企業年金の概要
(2)リスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額
(3)翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額、及び、当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数

ポイント4:移行時の処理

DBからリスク分担型企業年金へ移行する際の処理も、DCへ移行する際と同様(但し、導入時に設定した特別掛金の総額を未払金計上し、移行時損益に反映)

DBから、(DC制度として扱われる)リスク分担型企業年金へ移行する際の会計処理も、基本的に、DCへ移行する際の会計処理と同じく、制度終了の会計処理となります。すなわち、(1)と(2)の合計額を、移行時の損益として、原則として特別損益に計上します。

(1)移行時点における「移行した部分のDBO」と「移行した資産の額」の差額
(2)移行時点における「移行した部分に係る未認識項目(*)」
     (*)移行した部分に係る未認識項目の額は、移行時点のDBOの比率その他の合理的な方法で算定

但し、移行時点で規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合、当該特別掛金相当額は過去に発生した積立不足に対応するものであるため、その総額を未払金等として計上すると同時に上記(1)の金額(移行時損益)に反映させることとされています。(実務対応報告案第9項、第10項、第27項)

ポイント5:適用時期

公表日以後、即時適用

リスク分担型企業年金は、今後新たに設けられる予定の企業年金制度であり、本実務対応報告はその会計上の取扱いを明確にするためのものであるため、周知期間は必要なく、本実務対応報告の公表日以後即時適用することとされています(実務対応報告案第13項、第32項)。

掲載日:2016年6月10日

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