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確定給付企業年金の積立剰余の活用-1-会社負担の削減、給付増額

ここ数年の好調な資産運用実績を背景に、確定給付企業年金(DB)制度において剰余金が積み上がってきているケースが多くなっています。 みずほ信託銀行の資料によれば、2015年3月末の財政決算において、集計対象とした総幹事のDBのうち98%が積立剰余(純資産額が責任準備金を上回っている)の状態であり、平均的な積立比率(純資産額/責任準備金)は125%と前年度から8%増となっています。

今回は、この積立剰余の活用方法について、いくつかの選択肢を示しながら解説します。なお、ここでいう「積立剰余」は年金財政上の積立剰余、すなわちDB制度の積立金が責任準備金を上回っている部分を指しており、退職給付会計上の積立超過(年金資産が退職給付債務を上回る部分)とは別の概念であることに留意してください。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
著者プロフィール
掲載日:2016年2月29日

解説

積立剰余の活用方法には大きく分けて次の3つが考えられます。

  1. 会社の負担軽減
  2. 従業員に対する給付の増額
  3. 年金財政の安定化

以下、順に解説していきます。

1.会社の負担軽減

直近では積立剰余があったとしても、過去に発生した積立不足に対する特別掛金の支払いが残っている場合があります。これを、剰余金を活用することによって削減するのが負担軽減策の1つです。

但し、年金財政上の”余裕”がなくなるため、再び積立不足が発生する可能性が高くなる点に注意が必要です。

もう一つの負担軽減策として考えられるのは、退職金制度からDBへの移行割合を引き上げることです。これについては、先ほどの特別掛金の削減のように、すぐに目に見える効果が出るものでは必ずしもありませんので、負担軽減策というよりは、剰余金を退職金の支払いに回すための方法と言ったほうが正確かもしれません。

また、一旦DBへの移行割合を引き上げる形をとった後で確定拠出年金(DC)制度を導入(または拡充)し、引き上げた部分をDCへ移すという方法もあります。

当初の状態から見ると、DBの積立剰余を活用して退職金制度からDC制度への一部移行を実現できたことになります。企業にとっては、退職給付債務の削減効果があります。

2.従業員に対する給付の増額

積立剰余の範囲内での給付の増額であれば、新たな積立不足の発生による特別掛金の負担なしに実施することができます。

一方で、一度給付水準を引き上げてしまうと、将来的に財政状況が悪化しても給付を引き下げるのは簡単なことではないので、企業としては単純な水準の引き上げには慎重にならざるを得ないでしょう。ただ次のような形であれば、検討の余地はあるかもしれません。

ボーナス的な給付の増額

例えば、金利に応じて給付水準が変動するキャッシュバランスプランを導入している場合、当初想定していたよりもかなり低い水準で金利が推移していることから、設計当時の給付水準を下回っているケースがあると思います。この場合、過去の想定を下回っている部分について、一時的な補填(仮想個人勘定残高の増額)を実施することが考えられます。

DC制度の導入とセットでの実施

上記1.で積立剰余をDC制度への移行に活用する方法を紹介しましたが、これを従業員により有利な形で行うことが考えられます。例えば、DCの想定利回りをゼロとしたり、自己都合退職時の支給総額を増やしたりといったことです。企業にとってはトータルの費用負担が増える可能性はありますが、退職給付債務や資産運用のリスクを軽減することができます。

次回は「3.年金財政の安定化」について解説します。


掲載日:2016年2月29日

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