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最低責任準備金の「期ズレあり」と「期ズレなし」の違い

昨今、厚生年金基金の代行返上や解散が急速に進んでいます。加入事業所の事業主や加入員にとっての大きな関心事の1つは、残余財産(国に最低責任準備金を返還した後の資産残高)がどのくらいになるのかということではないでしょうか?
ところで、最低責任準備金は知っているという方でも、最低責任準備金に「期ズレあり」と「期ズレなし」の2種類が存在することは意外と知られていないように思います。
実はここ2~3年の資産運用好調の裏で、多くの基金において、この2種類の最低責任準備金の差額が拡大しています。そしてその違いを理解していないと大きな誤解を生む可能性が潜んでいます。 本コラムにて、両者の違いを解説します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 瀧 厚史
著者プロフィール
掲載日:2016年2月24日

解説

最低責任準備金の算定方法

最低責任準備金は、1999年10月以降、「これまでの加入員期間に応じた代行年金を将来にわたり支払うために必要な額」という本来の定義を放棄して、厚生年金保険本体との中立性を重視した下記の算式(ころがし方式)に変更されました。

  1. 1999年9月末で一旦本来の定義に基づく額を確定
  2. 当月末の最低責任準備金
    = 前月末の最低責任準備金
    + 当月の代行保険料収入額
    - 当月の代行年金支出額
    + 前月末残高に対する運用利息相当額(厚生年金保険本体の運用実績を使用)

「期ズレあり」と「期ズレなし」の違い

両者の違いは、「厚生年金保険本体の運用実績」を適用するタイミングの違いです(表1参照)。

「期ズレあり」の場合、x年度(x年4月からx+1年3月)の厚生年金保険本体の運用実績は、1年9ヶ月遅れのx+2年1月から12月までのころがし計算に使用されます。適用時期が遅れてしまう理由は、x年度の厚生年金保険本体の運用実績が、x+1年8月にならないと判明しなかったためです。

一方で「期ズレなし」の場合、x年度(x年4月からx+1年3月)の厚生年金保険本体の運用実績は、タイムラグなしでx年4月からx+1年3月までのころがし計算に使用されます。理論的にはこの方法がベストなのですが、前述した通りの実務上の問題がありました。

運用環境の変化に伴い「期ズレあり」の問題点が顕在化

厚生年金保険本体の運用実績は2006年頃までは比較的安定していましたが、2007年頃から変動幅が大きくなるようになりました。長期的な視点に立てば、「期ズレあり」と「期ズレなし」の差については解消され問題になりません。

一方で財政検証は毎年3月末時点の状態により実施され、その時点の年金財政状況が悪ければ掛金の引上げ等の措置が必要になり、基金の運営に支障をきたすことになります。また実際の代行返上(解散)の場合、そのタイミングにより大きな損得が発生することが問題視されていました。

「期ズレあり」から「期ズレなし」へ

第1弾として、2009年制度改正で実務上の影響が少ない継続基準の財政検証について「期ズレなし」に移行しました。

第2弾として、2014年制度改正で全面的に「期ズレなし」に移行しました。

実務上の課題は、四半期毎に集計されている厚生年金保険本体の運用実績を利用することにより解決しました。なお、代行返上(解散)時については、2019年3月末までの経過措置として「期ズレあり」又は「期ズレなし」のいずれか基金が有利な方法を選択することが可能になりました。

2015年3月末の状況

厚生年金保険本体の2014年度(2013年度)の運用利回りは、11.61%(8.22%)と非常に高い実績となっています。「期ズレあり」では2014年度の全部及び2013年の一部が反映されていません。

その結果、基金の設立時期や年金資産の運用状況により異なりますが、多くの基金において「期ズレあり」が「期ズレなし」より10%程度小さくなっています。よって「期ズレあり」を選択することにより最低責任準備金の10%程度、残余財産が増加することになります。

まとめ

前述の通り現在、最低責任準備金については「期ズレあり」と「期ズレなし」の2つの数値が混在している状況です。基金等から情報提供される最低責任準備金の額を確認する際には、「期ズレあり」又は「期ズレなし」のいずれなのか意識する必要があります。


掲載日:2016年2月24日

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