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法人税率の引き下げを踏まえた対応-2-確定給付企業年金制度(DB)における掛金の決定方法

第1回では、法人税率が引き下げられていく過程においては、企業年金制度への掛金拠出によって退職給付制度に係る費用の損金算入を早めたほうが、税制上のメリットが大きくなることを紹介しました。 今回は、損金算入額を拡大するという観点で、確定給付企業年金制度(DB)における掛金の決定方法について解説します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
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掲載日:2016年1月12日

解説

退職金から企業年金制度への移行割合が100%でない場合、移行割合を高める制度改定を行えば、もちろん掛金額(損金算入額)を拡大させることは可能ですが、DBの場合、制度内容を変えなくても掛金額を増やす方法がいくつか考えられます。

積立不足の解消

継続基準や非継続基準に抵触している場合、つまり年金財政上の積立不足がある場合は、これを解消するための掛金の再計算を行うことにより、特別掛金や特例掛金を追加できる可能性があります。ただ、ここ数年は資産運用が全般に好調だったことから、積立不足を抱えているDBはかなり少なくなっています。

予定利率の引き下げ

DBの掛金は、将来支払うことになる給付の見込額を予定利率で割り引くことによって算出されます。従って、予定利率を引き下げれば、掛金は増えることになります。

予定利率の下限は、「直近5年間に発行された10年国債の応募者利回りの平均と直近1年間に発行された10年国債の応募者利回り平均のいずれか低い率」とされており、2015年度は0.5%となっています。

過去勤務債務の償却

以前に運用損失などにより発生した過去勤務債務が残っている場合や、予定利率の引下げにより新たに過去勤務債務が発生した場合には、特別掛金の拠出により償却していくことになりますが、この償却方法にはいくつかの方法が認められています。その中で最も早期に償却できる(掛金を最大化できる)のは、定率償却を採用し、償却割合を50%とする方法です。

この方法をとった場合、初年度に過去勤務債務の50%、翌年度以降は前年度末の残高の50%を償却していくこととなります。また、過去勤務債務の額がその年度の標準掛金額以下になった場合は、全額を特別掛金として償却することが可能です。

リスク対応掛金

これについては現在検討中の方法であり、詳細については「確定給付企業年金の弾力的な運営 -1- DBの拠出弾力化とは」で紹介しています。現在は認められていない将来の財政悪化に備えたプラスアルファの掛金であり、早ければ2016年度より導入されることとなりそうです。

以上のように、DBの掛金については一定の範囲で増減させることが可能なしくみになっているため、これを利用することで損金算入額を拡大できる可能性があります。ただもちろん企業にとって掛金額を増やすことが常にベターな選択となるわけではなく、資金需要や資金調達のコスト、今後の課税所得の見込みも踏まえたうえで、検討する必要があります。

また、企業会計上の観点からいうと、IFRSを適用し積立超過となっている場合は、アセットシーリングの規定により掛金を増やしても確定給付資産が増加せず、純資産を毀損する可能性がある点に留意が必要です。

こうした観点も踏まえたうえで、今回の法人税率引き下げを機に、企業年金制度の活用や掛金の設定方法について、改めて考えみてはいかがでしょうか。

掲載日:2016年1月12日

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