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法人税率の引き下げを踏まえた対応-1-法人税率が退職金・企業年金制度に及ぼす影響

法人税の実効税率は2015年度より引き下げられ32.11%となっていますが、政府・与党は2016年度以降も法人税率を段階的に引き下げて行く方針です。このコラムでは、法人税率の引き下げと、退職金・企業年金制度に係る損金算入の額との関係について整理し、法人税率の引き下げを踏まえた対応について解説します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
著者プロフィール
掲載日:2015年12月17日

解説

企業会計上の費用と税務上の損金の関係

退職金・企業年金の支払いにかかる費用に対しては、確定給付型の制度であっても、会社がその年度にキャッシュアウトした金額を損金とするのが税務上の考え方です。一方、企業会計上の費用は、確定給付型の制度であれば、キャッシュアウトとは直接関係なく、退職給付会計基準に従って計算された勤務費用や利息費用などにより算出されることになります。

例えば、退職一時金制度を実施していて、5年後の退職時に100の退職金を支払うとした場合、企業会計上は毎年20ずつ費用を計上していきますが、税務上は退職した年にまとめて100を損金とすることになります。この差額が退職給付引当金(注)として、貸借対照表の負債に累積されていくこととなります。

注:連結財務諸表では「退職給付に係る負債」となりますが、以下個別財務諸表を前提として「退職給付引当金」と表記することとします。

退職給付引当金は、キャッシュアウト(税務上の損金)より前倒しで費用計上している額の累計と見ることができます。

一方で、企業年金制度により外部積立を行っている場合は、将来の退職金・年金の支払いに備えて毎期掛金を拠出していきます。仮に、退職金の100%を企業年金で積み立てており、掛金拠出額と会計上の費用が同額である場合は、上の表は次のようになります。

但し、確定給付型の企業年金の場合、仮に退職金の100%を移行していたとしても、掛金の計算方法と、会計上の費用の計算方法は異なる基準で定められているため、実際に両者がぴったり一致することはありません。

確定拠出型の企業年金の場合は「会計上の費用=掛金拠出額」とされていますので両者は一致し、退職給付引当金を計上する必要はなくなります。

法人税率の引き下げが税負担額に与える影響

法人税率が一定の場合

仮に法人税率が今後も一定であるとした場合、外部積立を行っている場合は前倒しで税負担額を減らすことができますが、トータルで見れば基本的には変わらないことになります。

以下は、退職金・企業年金に係る損金を控除する前の課税所得を100、法人税の実効税率を32%で一定として、上記1の2つの例(企業年金なし/あり)を当てはめた場合の税負担額を計算したものです。

企業年金なし

企業年金あり

法人税率が引き下げられていく場合

一方で、法人税率が引き下げられていく場合には、早い段階で損金算入させたほうが、トータルの税負担額は小さくなります。

以下は、法人税の実効税率が32%から毎年1%ずつ引き下げられていくものとして、上記と同様の計算を行ったものです。

企業年金なし

企業年金あり

従って、税制上の観点から見れば、法人税率が引き下げられていく過程においては損金算入を早めたほうがトータルで見ても有利であり、事前積立を行う企業年金制度のメリットがより大きくなると言えます。

さらに、確定給付企業年金においては、一定の範囲内で、企業の判断によって掛金を増やすことも可能です。これについては次回解説します。

掲載日:2015年12月17日

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