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確定給付企業年金の弾力的な運営 -2- リスク分担型DBの提案

9月11日に開催された社会保障審議会企業年金部会において、確定給付企業年金制度(以下、「DB制度」)の弾力的な運営について提案されました。提案内容については大筋で合意が見られ、来年の施行に向けた政省令等の整備や、各関係機関との調整が進められています。今回は、柔軟で弾力的な給付設計の実現を可能とする「リスク分担型DB(仮称)」について解説します。解説を見る→

IICパートナーズ Pmas編集部
掲載日:2015年12月10日

解説

柔軟で弾力的な給付設計の実現に向けて~リスク分担型DB(仮称)とは

(1)経緯

キャッシュバランスプラン(以下、「CB」)を除くDB制度では、運用リスクが事業主に偏る一方、確定拠出年金制度(以下、「DC制度」)では従業員に偏ることとなり、DB・DCの二者択一では、労使のどちらかにリスクが偏る構造にあります。こうしたリスクの偏りをなくし、労使でリスクを柔軟に分け合うことを可能とするために、DB・DCの中間的な仕組みである「リスク分担型DB(仮称)」が提案されました。

このように、DB・DCの中間的な仕組みをもつ年金制度はハイブリッド型と言われ、日本の企業年金制度では、CBが既に存在します。CB以外にさらに給付設計の選択肢の幅を広げる目的で、リスク分担型DBが提案されました。

(2)リスク分担型DBの仕組み

前回のコラム「確定給付企業年金の弾力的な運営 -1- DBの拠出弾力化とは」で説明したDBの拠出弾力化の仕組みで、財政均衡の範囲を逸脱した場合を考えてみます。ひとつは

積立金+掛金収入現価(リスク対応掛金含む)< 給付現価

となった場合ですが、この場合でも約定の給付を堅持しようとすると、プランスポンサーはさらに高い掛金を受け入れなければなりません。このような場合には、掛金を変えるのではなくこの部分について「労使合意」により給付を減額し、また逆に

積立金+掛金収入現価(リスク対応掛金含む) > 給付現価+想定積立不足

の場合には給付を増額する仕組みが今回提案されました。

すなわち、今回の提案では、DBの拠出弾力化の仕組みを活用し、将来のリスクに相当する想定積立不足を、「労使合意」により労使間でリスク分担する仕組みとなります。想定積立不足のうち、事業主の負担部分については、「固定された」リスク対応掛金の拠出により対応します。更に、通常の掛金である標準掛金も固定され、事業主が拠出する掛金が全体的に固定されます。

一方で、積立金+掛金収入現価(リスク対応掛金含む)が給付現価を下回る場合は、従業員および受給権者のリスク負担分として、給付の減額が生じます。逆に、積立剰余が発生した場合は、給付増額となります。

上記のような給付額の調整は給付額を算定するための式(給付算定式)に組み込まれ、リスク分担型DBの給付算定式は、以下のように従来のDBにおける給付算定式に当該年度の調整率が乗じられたものとなります。

リスク分担型DBの給付算定式=従来のDBにおける給付算定式×当該年度の調整率

調整率は、財政均衡の場合は1.0、積立不足の場合はそれを下回り、積立剰余の場合は上回ります。調整率は、単年度ごとの変動を抑制するために、複数年度で平滑化も可能とされています。

リスク分担型DBはDB制度であるため、少なくとも5年ごとに実施する財政再計算により、給付現価、掛金収入現価、想定積立不足を計算し直す必要があります。それに伴い、拠出額が固定されるのは一定期間となります。

(3)企業会計上の取り扱い

企業会計上、確定給付型として債務を認識する必要があるか、確定拠出型として掛金拠出を費用処理として扱われるかは、リスク分担型DB導入を検討する上での重要なポイントとなります。

本取り扱いについては、11月12日に、財務会計基準機構(FASF)の基準諮問会議が開催され、企業会計基準委員会(ASBJ)において年内に審議が開始されることが了承されました。事業主の拠出する掛金額は一定期間固定されますが、その「一定期間」が確定拠出型としての取り扱いと見なせるかが、重要な論点となりそうです。

(4)リスク分担型DBにおける意思決定のあり方

リスク分担型DBは、運用結果により、加入者、受給権者(以下、「加入者等」)の給付水準が調整される可能性のある仕組みであるため、制度開始時の意志決定に加え、制度実施後も加入者等が運用の意志決定に参画できる仕組みが必要となります。今回は、加入者等が参画すべき事項として、以下のような事項が挙げられています。

(5)リスク分担型DBへの移行手続きについて

現行のDB制度からリスク分担型DBに移行する場合、想定積立不足の2分の1の水準を下回る場合に給付減額に該当することが提案されています。

ただし、給付減額に該当しない場合であっても、受給者の既裁定給付を変更するものであるため、全受給者に対する事前の十分な説明や、希望者には、年金給付に代えて移行前の給付を一時金で支給、を課すことが提案されています。

掲載日:2015年12月10日

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