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確定給付企業年金(DB)の基準死亡率と確定拠出年金(DC)の運用について―2014年11月のトピック

 2014年11月のトピックとして、
  1. 確定給付企業年金の基準死亡率の改正
  2. 第12回企業年金部会の開催(確定拠出年金における運用について)

について解説します。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
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掲載日:2014年12月10日

解説

確定給付企業年金の基準死亡率の改正

11月10日、確定給付企業年金の基準死亡率の改正案がパブリックコメントにより公表されました。

パブリックコメントはこちら(外部リンク)

国の厚生年金の財政検証が5年に1回実施されるのに合わせ、企業年金の債務計算等に使用される死亡率も5年に1回のサイクルで見直されています。

今回公表された改正後の死亡率は第21回国民生命表をもとに作成された率であり、現時点(原稿執筆時点)では「案」の状態ですが、この内容でほぼ確定と考えて問題ないでしょう。

改正後の死亡率に基づく60歳からの残存率(現時点で60歳の人がある年齢まで生存する確率)を改正前の死亡率と比較したのが図表1及び2です。

 

これを見ると、特に男子について残存率が上昇(死亡率が低下)していることがわかります。この結果、60歳時点の平均余命は、以下のように男女とも伸びる結果となっています。

[男子] 改正前23.32年 ⇒ 改正後23.63年(+0.31年)
[女子] 改正前29.29年 ⇒ 改正後29.30年(+0.01年)

これは、企業年金で終身年金を設けている会社にとって、今回の死亡率の改正により債務の評価額が大きくなることを意味します。

例えば、60歳開始20年保証期間付終身年金の場合、支給開始時点の債務の額は、男子で0.65%、女子で0.20%増加する計算になります(割引率は1.5%として計算)。

また、国立社会保障・人口問題研究所から公表されている将来推計によると、2010年を起点として20年後には60歳時点の平均余命は男子で1.85年、女子で1.96年伸びると予想されており、終身年金の負担は今後ますます重くなることが予想されます。(ちなみにIFRSでは将来の死亡率の改善を見込んで債務を計算することが求められています。)

国の年金の支給開始は段階的に65歳へ引き上げられていますが、企業年金に関してはまだ60歳支給開始のケースが大半です。

しかし、終身年金を設けている会社では、高齢者雇用の見直し(定年年齢の引き上げ等)とあわせて年金の支給開始年齢の引き上げを実施または検討するケースが増えてきているというのが実感です。

60歳開始20年保証期間付終身年金の場合、支給開始年齢を65歳に引き上げることで、年金額が同じであれば60歳時点の債務の額は15%以上減少する計算となります(割引率は1.5%として計算)。

終身年金は従業員にとっては非常にありがたい制度ですが、それを維持していくためには国の年金と同様に、平均余命の伸びに合わせた設計の見直しを検討する必要があるかもしれません。

第12回企業年金部会の開催(確定拠出年金における運用について)

11月18日、第12回企業年金部会が開催されました。企業年金部会は、公的年金制度の在り方の議論を踏まえつつ、今後の企業年金制度全般の在り方等についてより専門的な見地から議論を進めるために、昨年厚生労働省の社会保障審議会に設置されたものです。

※ これまでに議論された主な内容については「確定拠出年金(DC)制度・確定給付企業年金(DB)制度見直しの最新動向―2015年1月」をご参照ください。

第12回の会合では確定拠出年金(DC)における運用についての議論が行われ、以下のような課題と対応案が示されました。

論点1:運用商品を選択しやすい環境の整備

<課題>
  • 加入者の投資知識等が乏しく適切な商品の選択ができない
  • DCの資産運用に対する加入者の意識が低い
  • 運用商品の選択肢が多すぎて選択が難しい

<対応案>

  • 加入者に対する継続投資教育を事業主の「努力義務」に格上げ
  • 継続投資教育の基準を通知等で明確化
  • 運用商品の提供数に上限を設定(10本以内)
  • 労使合意により既存の運用商品を除外できるようにする

 

論点2:長期の年金運用として適切な運用方法の促進

(1)自ら運用商品を選択する加入者への対応という観点

<課題>

  • 現状は単に「3つ以上の運用商品を提供すること」とあるだけで、どのような商品を提供すべきかという規定はない。

<対応案>

  • 「リスク・リターン特性の異なる3つ以上の運用商品を提供すること」に見直す。

 

(2)運用商品の選択をしない加入者への対応という観点

<課題>

  • デフォルト商品の設定について、法律上の位置づけや事業主の責務が法律上明文化されていない。
  • デフォルト商品の設定は現状そのほとんどが元本確保型商品であるが、長期の運用においては分散投資が基本。

<対応案>

  • 事業主に対する努力義務として、デフォルト商品を設定する場合は分散投資効果が見込まれる商品とすることを法令に定める。

私個人の意見としては、DCの資産運用に関してはもちろんのこと、退職金制度自体に対する従業員の関心や理解も一般には低いのが現状だと思います。まずは各社の人事制度における退職金制度やDCの位置づけについて従業員の理解を深めていくことが重要であり、その位置づけや理解度に応じたDCの運用が実現できるような仕組みが求められるのではないでしょうか。

掲載日:2014年12月10日

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