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退職給付会計基準の改正に伴う割引率にまつわる実務上の3つの注意点

退職給付会計基準の改正により、割引率の設定方法が複雑になりました。以前の基準では、「平均残存勤務期間に対応する債券の利回りをみる」というシンプルな方法が大勢を占めていましたが、新しい基準では割引率の設定方法にいくつもの選択肢があり、しかも「イールドカーブ」や「デュレーション」などといった馴染みのない単語も出てきます。

これらの内容の解説については他のコラムに詳述してあるのでそちらを参照していただくこととして、今回は実務面でお客様がよく疑問に思われることや新基準での初回決算で注意するべきことについて書かせていただきます。解説を見る→

IICパートナーズ Pmas編集部

解説

割引率の決定時期が従前より遅くなる

新しい基準では割引率の設定方法にいくつかの選択肢がありますが、どれもに共通するのは「イールドカーブ」を用いるということです。イールドカーブというのは単純に言うと債権の利回りを残存年数別に並べたものです。イールドカーブは市場のデータを使用して各計算機関が作成します。弊社も毎月末のデータを使用して作成したイールドカーブを翌月の第3営業日を目途にWebに公開しています(お客さま専用コンテンツ内)。

ここで注意していただきたいのは、例えば3月末決算のお客様の場合、割引率が決まるのがどうしても4月の第3営業日以降になってしまうということです。もし従前は国債の応募者利回りを参照していたとすると3月中には割引率がわかっていたのですが、それが4月の第3営業日までずれ込んでしまいます。

決算スケジュールに余裕がある場合は問題ないのですが、決算スケジュールがタイトな場合は計算スケジュールの見直しが必要かもしれません。

私の担当したお客様の場合、計算時期を前倒しにして、ある程度幅を持った2つの割引率で事前に退職給付債務を計算しておき、期末を迎えてから、弊社がご提供するツールを使って割引率の補正をお客様で行っていただき、割引率が判明し次第すぐに必要な数値が手に入るように計算のタイミングを修正されたというケースがありました。

重要性基準は適用できる

新しい基準での割引率の設定方法をご説明していると、お客様によっては「イールドカーブ等価アプローチ」による割引率や「デュレーションアプローチ」による割引率を必ず採用しなければいけない、と思われる場合があります。

しかし「イールドカーブ等価アプローチ」による割引率や「デュレーションアプローチ」による割引率が前期末に採用した割引率からあまり乖離していなければ、重要性基準を適用することにより前期末の割引率を引き続き適用することが可能です。

なお、基準改正のタイミングについてのみ重要性基準を適用しないという取り扱いも認められていますので、従前は重要性基準を適用していたが基準改正時に重要性基準を適用しなかった、という場合でも次回からは重要性基準を適用できると思われます。具体的な取扱いは会計士の方にご相談ください。

イールドカーブ直接アプローチと重要性基準

割引率の設定方法としてイールドカーブ直接アプローチを採用した場合、重要性基準を適用するのは難しいと考えられます。

その理由としてまずは「どうやって重要性を判断するのか」ということが挙げられます。単一割引率の場合は一覧表があるので実際に計算せずとも重要性基準が適用できるかどうかがわかるのですが、イールドカーブ直接アプローチの場合は実際に債務を計算してみないと10%以上債務が変動しているかどうかがわかりません。

2つ目の理由としては「重要性がないと判断されたとして、今回の計算にどのイールドカーブを使うのか」ということが挙げられます。

理屈としては前期末の計算に使用したイールドカーブということになるのでしょうが、単一割引率の場合より説得力がないように思います。そもそもイールドカーブ直接アプローチはできるだけ厳密に債務を評価したいという方法なのに対し、重要性基準は簡便性を重視した基準となっていて、相性が悪いという面もあります。

新しい基準で初の決算を迎えるお客様も、これから基準改正に対応されるお客さまも、以上のような点にご留意いただくとスムーズにご対応いただけるのではないかと思います。

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