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厚生年金基金制度見直しへの対応のポイント~厚生年金基金制度の抜本的見直しについて -7-

2013年6月に厚生年金基金制度を抜本的に見直す法律が成立し、2014年4月に施行されることとなりました。これに伴い、基金に加入する企業がとるべき対応や検討事項、留意点などを考察します。本シリーズ最終回として、各加入企業が厚生年金基金制度見直しへの対応を進めるにあたってのポイントをまとめます。解説を見る→

IICパートナーズ コンサルタント 向井 洋平
著者プロフィール
掲載日:2014年8月21日

解説

前回まで6回にわたって厚生年金基金制度が原則廃止となった経緯や基金・加入企業が今後取り得る選択肢について見てきました。今回は最終回として、各加入企業が厚生年金基金制度見直しへの対応を進めるにあたってのポイントをまとめます。

1) ウチの基金は今どうなっている?

第3回のコラムでは、今年3月の時点で534基金中195基金が解散や代行返上に向けてすでに手続きを進めていることを紹介しましたが、7月末の時点では296基金にまで増えており、4月の改正法施行を受けて制度の廃止に向けた動きが加速しています。

まずは、自社が加入している基金がどんな方針でいるのか、今後のスケジュールは、解散あるいはDBへ移行することとなったときの分配や追加負担はどうなるのかといった点について把握しておくことが重要です。不明な点があれば基金に確認しておくようにしましょう。

2) 退職金規程との関係―内枠か外枠か?

基金を自社の退職金の積立手段として位置付け、退職金規程において、基金からの上乗せ給付を控除した残りを会社から支払うこととしている(基金からの給付が退職金の内枠である)場合、仮に基金が解散したとすると、積立不足分については会社が追加で負担する必要があります。このため、その金額が合理的に見込まれる時点で追加の引当(費用計上)が必要となる可能性があります。

また、会社として受け皿となる制度を設けなかった場合は、退職金の一部が基金からの分配金として在職中の従業員に支払われることとなってしまいます。従業員にとってもそのまま一時金として受け取ってしまうと税制上不利な扱いになる可能性があるため、対応を考えておく必要があります。

一方、自社の退職金を基金からの上乗せ給付とは関係なく支給している(基金からの給付が退職金の外枠である)場合は、仮に基金が積立不足のまま解散したとしても、会社がその穴埋めをする義務があるとまでは言えません。但し外枠であっても基金からの上乗せ給付が労働条件としての重要性を持ち、従業員の期待が大きい場合には代替制度を設ける等の対応を検討する必要があるでしょう。

3) 基金がDB移行/新設の総合型DBを提示してきた―ついていくべき?

DB移行に関しては、積立水準が高く成熟度が低い(現役の加入者に対して年金の受給権者の割合が小さい)一部の基金を除けば、掛金負担の増加を招く可能性が高いと言えます。会社として給付の継続に対するニーズがあったとしても、基金からのDB移行の提案(同意の依頼)に対しては十分に検討したほうがよいでしょう。

一方で、一旦基金を解散して新規に総合型DBを設立する場合は受給権者の債務や解散前の積立不足を引き継ぐ必要がないため、(制度設計にもよりますが)特に単独で受け皿制度を設けるには負担や制約が大きい小規模の会社にとって、有力な選択肢になるかもしれません。しかし資本関係のない複数の企業により構成されるDB制度である以上、以下のような課題は残ります。

  • 個々の企業の経営状況等に応じた柔軟かつ機動的な対応が困難
  • 他の加入企業が倒産等により支払うべき掛金を払えなかった場合、残りの加入企業で穴埋めする必要がある
  • 各社とも基金の運営に対する当事者意識が薄れがちであり、統制が利きにくい

なお、総合型DBに関しては、2012年の適格年金制度廃止の受け皿として設立された「ぜんこくDB企業年金基金」「ベネフィット・ワン企業年金基金」のような、地域・業種を問わず加入できる基金もあります。これらの基金についての情報も収集し、上記のような課題への対応という観点から比較・検討してみるのもよいでしょう。

4) 独自に受け皿制度を設けることにしたが、どれがいい?

既に自社(もしくはグループ会社)で独自にDBやDCを実施している場合は、まずこれらの制度を利用することが考えられます。例えば、DCを実施しているのであれば、基金解散による分配金を既にあるDCの個人別口座に移し、従来基金に支払っていた掛金に見合う額を今後のDC掛金に上乗せするといった対応が可能です。基金とDC以外に企業年金を実施していなければ、基金解散によりDC掛金の上限が2倍に引き上がることになり、掛金の引き上げ余地が生まれます。

また、新たに受け皿制度を設けたい企業に対しては、中小企業向けの簡素なDB制度の提供を始めた生命保険会社や、1つの規約で複数企業の制度を運営する「総合型DC」を厚生年金基金の後継制度として提案している金融機関もあります。受け皿制度の選択肢としてはこれらのほかに中退共もありますので、各所より情報を集め、自社のニーズにマッチしたプランを選択するとよいでしょう。


今回、AIJ事件を発端に厚生年金基金制度の問題がクローズアップされ、実質的に制度が廃止されることとなり、基金の仕組みや問題点、基金への掛金や基金からの給付の内容について、認識を新たにした方も多いのではないでしょうか。退職金・企業年金制度が人事制度の一環として有効に機能するためには、会社側・従業員側の双方がその内容を正しく理解していることが大前提となります。本稿がその理解の助けとなり、各企業にとって最適な対応の検討に役立てていただければ幸いです。


掲載日:2014年8月21日

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